高知工科大学と公立千歳科学技術大学の研究者らは、インターステラテクノロジズ株式会社の観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」(以下「MOMO3号機」)に搭載したセンサーによって、地上に由来する音を大気が希薄な高度100km以上の領域で直接検出することに世界で初めて成功したとする研究成果を発表しました。研究成果をまとめた論文は学術誌「Journal of Geophysical Research: Atmospheres」に掲載されています。


【▲ インターステラテクノロジズ株式会社の観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」(Credit: インターステラテクノロジズ)】

防災に役立つ「インフラサウンド」の観測課題

今回観測されたのは「インフラサウンド(超低周波音)」と呼ばれる、人の耳では聞こえにくい20Hz未満の音波です。インフラサウンドは火山噴火や津波、隕石の爆発、ロケットの打ち上げなどに伴って発生し、遠くまで伝わる性質があるため、防災や環境監視のための重要な観測対象となっています。


インフラサウンドの観測は、これまで地上の観測網を中心に行われてきましたが、音波の伝わり方には気温や風の影響を受けやすい特徴があります。また、中間圏(高度約50〜76km)から熱圏下部(高度約106〜109km)にかけての高高度は大気が希薄であり、航空機や気球が到達しにくいことから、この高度まで伝わる音波をその場で直接測定することは非常に困難だったといいます。


MOMO3号機に搭載したセンサーで花火の音をキャッチ

こうした課題に対し、高知工科大学の山本真行教授らは、2019年5月に北海道大樹町で打ち上げられたMOMO3号機に広帯域差圧センサを搭載する実験を実施。雷などの自然現象と区別できるインフラサウンドの音源として、時刻と位置が明確な打ち上げ花火を使用し、取得したデータは公立千歳科学技術大学の齊藤大晶専任講師(高知工科大学客員講師兼務)が中心となって解析しました。


研究チームによると、複数の大気モデルを用いて音波の経路を計算・評価したところ、上昇中の高度50〜76kmで花火に由来する明瞭な圧力変動が4つ検出されていました。また、MOMO3号機が最高高度約113kmに到達して降下に移った後の高度約106〜109kmでも、弱い信号が捉えられていたといいます。


このことから研究チームは、地上付近の爆発に由来する0.1〜2Hzの超低周波音が、高度100km以上にまで伝播し得ることが確認されたとしています。


【▲ MOMO3号機に搭載されたインフラサウンド計測器。左から:メインマイク、サブマイク、ブザー(Credit: 高知工科大学)】
【▲ 地上で打ち上げた花火の超低周波音が大気中を伝わり、ロケット(MOMO3号機)の飛行経路と交わる様子を計算した図。黒線はロケットの軌道、色線は音の伝わる経路、赤点はロケットで信号を捉え得る位置を示す(Credit: 高知工科大学, 公立千歳科学技術大学)】

災害監視の高度化や惑星探査への期待

今回の成果は、地上で発生した超低周波音が空気の極めて薄い宇宙空間との境界付近(※)まで伝わることを実証するとともに、中層・上層大気における直接的な音響測定のプラットフォームとして、ロケットに搭載したセンサーが有効であることを示した初めての事例となります。


※…FAI(国際航空連盟)によって定められた宇宙空間と地球大気圏の境界は海抜高度100kmで、カーマン・ラインと呼ばれています。


両大学によれば、この研究は大規模災害に伴う超低周波音が高高度をどのように伝わるかを理解する上で基礎となるものです。将来的には、観測システムや大気場推定の高精度化を進めることで、地球上の災害監視システムの高度化だけでなく、他の惑星における大気観測や探査にも応用できると期待されています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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Saito et al. - First Detection of Firework‐Generated Infrasound in the Upper Mesosphere-Lower Thermosphere With a Rocket‐Borne Sensor: Results From the MOMO3 Sounding Rocket Experiment (Journal of Geophysical Research: Atmospheres)