中井亜美の“感動ハグ”はありえなかった!? 坂本花織も「ロシア勢のミスを待つような気持ちだった」と明かしたフィギュア界の生々しい過去と変化【冬季五輪】

リウと喜びを分かち合い、ハグをする中井(C)Getty Images
ライバルでありながら互いを想い合い、敬意を示し合う姿が目に付いた大会だった。現地時間2月19日に女子フリーが終わったミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート種目だ。
【写真】なんて美しい瞬間!世界に配信されたアリサ・リウと中井の抱擁シーン
ショートプログラム3位からの逆転で、アリサ・リウ(米国)が金メダルを掴んだ女子シングルスにあって頻繁に目撃されたのは、選手同士が互いを気遣い合い、時に励まし、時に喜びを分かち合う姿だった。最終順位確定直後にリウと3位となって銅メダルを手にした中井亜美(日本)が涙ながらにハグをする姿は、世界的な反響も生んだ。
ここまでの変化は、ライバル同士が殺伐としていた往年のフィギュア界を想えば、激変と言っても過言ではないかもしれない。「フィギュアスケートはいかにして熾烈なライバル関係の時代を終わらせたのか」と銘打った記事を掲載した米紙『Washington Post』は、「優勝を確信したアリサ・リウと最終的に銅メダルを獲得したアミ・ナカイの間には、確執など全くなかった」と伝えた上で、かつてのフィギュア界が抱えていた競争社会の生々しい一面を明かしている。
「かつてファンをこのスポーツに惹きつけた激しいライバル関係は、選手の間でも徐々に冷め始めている。過去数十年にわたって、フィギュアスケートという業界は、心理戦の暗黒街のようだった。とくにトップの座を争うエリートスケーターたちは、練習の段階からジャンプの難度で競い合い、互いの振り付けを真似し、時には威嚇的な冷笑を浴びせかけ、肘打ちを見舞う出来事もあった」
ロシア勢の台頭が光り、競争相手との激しいマッチアップが展開された中で、一部の選手たちは精神をすり減らしてでも、あらゆる手段を講じて応戦する。そんなフィギュア界の抱えていた問題点については、他でもない今大会で銀メダルを手にした坂本花織も次のように『Washington Post』に語っていたという。
「今になって考えれば辛いんですけど、私はロシアのスケーターが転倒したり、ミスをしたりするのを待っているような気分で滑っていました」
いまや誰かの失敗を願うことも、隠れて“肘鉄”を見舞うようなこともなくなった。むしろそこには、同じ時代を氷上で生きる者たちとの絆だ。同紙は、こうも論じている。
「かつてファンをこのスポーツに惹きつけた激しいライバル関係は、徐々に冷め始めている。新たな時代、『友情の時代』にようこそ」
リウや中井と言った次世代のヒロインたちの登場によってフィギュア界は変わった。その影響がどこまで続くのかを興味深く見守りたい。
