OBS

写真拡大

2021年2月の深夜、大分市の交差点で発生した死亡事故。時速194キロで走行していた車が右折車と衝突し、小柳憲さん(当時50)が亡くなった。この事故の控訴審が9月29日に福岡高裁で開かれる。小柳さんの姉・長文恵さんは事故現場を訪れ、改めて事故の悲惨さと裁判への思いを語った。

【画像を見る】事故直後の現場、大破した双方の車 安全対策進む現場と花を手向ける遺族

安全対策進む事故現場

長さん:
「弟の車はこの場所に止まっていて、花を手向けていたんですけど、実際は本人が対向車線まで飛ばされて…。当時、そのことを母にそう伝えたら、もう言葉を失っていました」

現場を訪れた長さんは、改めて事故の経緯を振り返る。2021年2月9日午後11時ごろ、大分市大在の通称「40メートル道路」の交差点で事故が発生。小柳さんは事故の衝撃で車外に投げ出され、反対車線まで飛ばされて命を落とした。

現場は現在、再発防止のための安全対策が進められている。路面のラインが新たに引き直され、夜間はライトで明るく照らされるようになった。さらにパトカー型の看板も設置され、ドライバーに注意を促している。

長さん:
「本物のパトカーじゃなくて看板だと気づいたとしても『この交差点で事故があったんだな』と思って徐行してもらえる、そんな交差点になったんじゃないかな」

「加速する感覚を楽しんでいた」

事故から3年後の2024年11月、裁判が始まった。当時19歳だった被告は公判でこう述べた。

「道路上で車がほかに走っておらず、前にもいないのでスピードを出そうと思った。車のアクセルを踏むとマフラーとエンジン音がきこえて、加速する感覚を楽しんでいた」

判決で大分地裁は危険運転致死罪を認定。検察が懲役12年を求刑したのに対し、被告に懲役8年を言い渡した。その後、被告側と検察側の双方が控訴し、9月29日に福岡高裁で控訴審が開かれる。

長さん:
「頭が真っ白になるってこういうことなのかな、というぐらいに何が起きたのか分からず、懲役8年というのを聞いた気がします。その『8』という数字が頭の中をぐるぐるして、その後の裁判長の話を本当に聞けなくて…。もちろん納得のいく形でもなく、せめて求刑通りの判断をという思いです」

長さんは今春、県外から大分市に戻ってきた。定年までまだ時間があったが、高齢の両親のもとで暮らすことを選んだ。

長さん:
「弟に最後にかけた言葉は『家族を頼むね』でした。そう言って家を出たんです。その分、今度は自分が家族を守るという気持ちで春に帰ってきました」

お盆には毎年、弟の友人が訪ねてきて思い出を語り合う。「懐かしい話をしてくれて、弟を思い出せる唯一の楽しい時間です」と長さんは話す。

法改正への期待と突きつける問い

一方で、危険運転致死傷罪のあり方についても議論が進んでいる。「基準が曖昧でハードルが高い」との声が上がり、法制審議会で見直しに向けての協議が続いている。数値基準の導入には賛否両論あるが、長さんは今後の抑止力になることを期待している。

長さん:
「弟は50年生きてきて、命の最期をあの交差点に向けて今まで50年生きてきたのかと思ったら本当に悔しい」

「そんな事故が当初、過失で済まされようとしていたということ、それがまず最大の問題です。『仕方ないね』で終わる遺族は決していません」

「きちんとした判断がなければ事故は繰り返してしまうと思います。裁判の行方ももそうですが、この事故のことを多くの人に知ってもらい、考えてもらいたい」

長さんの静かな怒りと深い悲しみの声は、今も交差点に響いている。