記事のポイント
新興ブランドはレジカウンターを廃止し、モバイルPOSで店舗空間を再設計している。
店員が店舗を回遊し接客する方式により、顧客体験と売上の向上を実現している。
ブランドは入口や什器の演出を通じて、世界観や顧客との関係性を強調している。


品物の代金を支払うためチェックアウトに向かうのは、過去の話となりつつある。

グロッシアー(Glossier)やメジュリ(Mejuri)などの新興ブランドが全国規模に拡大するにつれ、いわゆる「キャッシュラップ(レジカウンター)」を廃止し、ディスプレイや商品のテスト、あるいは座って集まれる場所のために空間を活用するようになった。

グロッシアーで小売担当ジェネラルマネージャーを務めるエミリー・ルイス氏は、集中チェックアウトや従来型のビューティーカウンターに頼らない円形となるよう、意図的に店舗をデザインしていると語る。代わりに店員はモバイルのポイントオブセールシステムを使い、それによって顧客はいつでもどこでもチェックアウトできる。そして、商品は棚に陳列されるのではなくすべてテーブルに置かれ、手に取って試すことができる。

「店舗は、どのようなときも流れがあるように設計した。比較のため、Appleのデザインを考えてみれば、テーブルが並べられた大きな、事前に決められた場所があり、店舗でのコミュニティー感覚、遊び心、主体的な行動を促進している」と、ルイス氏は述べている。

消えるレジカウンター



買い物客が自由に使える収入がますます貴重になっていく現在、ルイス氏のような小売のリーダーは店舗の体験を改善する方法について真剣に考えている。セルフチェックアウトやモバイルPOSシステムがより主流になりつつあることから、大きな固定のチェックアウトカウンターを置くスタイルとは異なる形で店舗のフットプリントを使用できる。現在、ブランドは、これまでなら物理的なチェックアウトカウンターに使われていた空間をどうすれば最善の形で活用できるか再考している。

小売体験は、カウンターサービスと、きれいに包装されたパッケージで終わるものだったが、そのモデルは急速に減りつつあると、ブランドデザイン企業のチェンジアップ(ChangeUp)でエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めるジェイミー・コーニーリアス氏は述べる。「もう誰もカウンターを求めていない」と、同氏は語る。例のひとつは家具屋で、顧客が購入する商品の近くにいるとき、店員が顧客の会計を処理するように配置されることが多くなってきていると、同氏は述べている。

「肝心なのは、私が購入する商品のすぐ横に座っている、その最後の瞬間だ。これは私が何をしているかの確認だ。私を別の、その商品と関係のない場所に押しやってしまうのは適切でない」と、コーニーリアス氏は述べている。

一部のブランドは、モバイルチェックアウトによって売上が急増するのを目にしている。ベルベット・バイ・グレアム・アンド・スペンサー(Velvet by Graham and Spencer)で小売、戦略、オムニチャネル運用のディレクターを務めるアンジェラ・ケンドル氏は、同社が従来型のキャッシュラップをアイパッド(iPad)でのチェックアウトに置き換えたと語る。また、店舗に長椅子や椅子を配置し、人々が座って休めるような場所を作り出した。これにより、店舗でイベントを主催するとき役立つだけでなく、滞在時間が伸び、売上も増加したとケンドル氏は述べている。

買い物は「座って完結」へ



ベルベットは、eコマースと比べて顧客の発見が増えたことにより、店舗内のポイントオブセールでの購入が約40%増加したと、ケンドル氏は語る。しかし、テクノロジーの使用は、ハイテクなエクスペリエンスの提供自体を目的としないことが重要だと、同氏は述べる。セルフチェックアウトのディスプレイ画面は一部のブランドではうまく機能するものの、自社のブランドには適していないと、同氏は述べている。

「モバイルPOSを徹底的に掘り下げ、すべてのスタッフが店内を歩きまわるときiPadを使用するようにした。iPadだけでも問題なく、店員は十分な教育を受けており、試着室のなかでも、店内を歩き回っているときでもその使い方を知っているため、多くのコストを節約できる」と、ケンドル氏は述べている。

グロッシアーと同様に、店員は店舗を歩き回り、商品を強引に勧めて顧客を煩わせないように考えられていると、ルイス氏は述べる。誰かが店舗に入ってくるなり一律のおすすめをしたりせず、顧客は自分で店内を探索するよう促される。そのあとで、商品について専門家から教育を受けた店員が、質問をしたり、商品をおすすめしたりできる。「最初の会議のとき、我々は『押し売りのようなビューティーカウンターは望ましくない』といった。顧客とのつながることができ、商品を押し売りするのではなく、良好な体験を作り出せるような店員が望ましい」と、同氏は述べている。

ジュエリーショップのメジュリ(Mejuri)で小売担当のシニアバイスプレジデントを務めるコートニー・ホーキンス氏は、同社が2018年にトロントで最初の店舗を開設してから、キャッシュラップを使用したことがないと語る。現在では40を超える店舗があり、その一部は約800平方フィート(約74.3平方メートル)の面積がある。また、ジュエリーをガラスケースのなかに展示するのではなく、オープンな陳列棚を使用している点でも伝統を破っている。これらは展示用の品物で、顧客が手に持って着用でき、実際の在庫は店の奥に格納されていると、ホーキンス氏は述べる。この配置により、顧客は最初から最後まで同じ店員の対応を受けられると、同氏は述べている。

「キャッシュラップで別の店員に引き継がれることなく、最初から最後まで同じ店員に対応してもらえる。トランザクションが連続的で整合したものとなり、コンシェルジェの体験になる。商品は店の奥で梱包されてから、表に持ち出される。顧客に商品を見せてケアの方法を説明し、それから包装する。購買体験はこれで終了し、レジに引き渡すことはない」と、ホーキンス氏は述べている。

チェンジアップのコーニーリアス氏は、カウンターを取り去ることにより、特に入口において、商品に関係なく顧客に感動や驚きを与える機会も生まれると語る。カウンターを取り去った場所には、情緒やつながりを呼び起こすようにデザインされた芸術的なインスタレーションやコミュニティー空間を代わりに設置する。

「入口や出口をそのブランドらしく感じさせるようにするのが肝心だ。これは、キャッシュラップがかつてはブランド独自の雰囲気だったのと同じだ」と、コーニーリアス氏は述べる。多くの小売業者は、『顧客が店舗に入った瞬間から、我々のブランドが何者で、どのように顧客とつながりたいのかについて、顧客の認識に変化をもたらしたい』と語っている」。

[原文:The death of the checkout counter is leading brands to rethink their store layouts]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:坂本凪沙)