記事のポイントフェズは、購買データと生成AIを掛け合わせ、勘に頼らない広告配信と効果検証を一気通貫で支援する新機能を開発した。購買親和性をもとにメディアを定量的に可視化し、最適な広告プランを自動提案する仕組みを提供している。広告・販促・CRMなどすべてのマーケティングプロセスを「購買起点」に再設計すべきという考えを示した。
リテールメディア領域でデータ活用を推進するフェズ(Fez)は4月17日、独自開発した新広告ソリューション「メディアファインダー/メディアプランナー」の提供を開始した。購買データと生成AIを組み合わせ、広告配信のターゲティングから購買結果の検証までを一気通貫で支援する新機能だ。広告主・小売・代理店が、勘と経験に頼らず、購買実績を起点にした広告設計を実現できる。

購買データ1300万IDを活用

同社は現在、ドラッグストアやスーパー、ホームセンターなど全国14の流通企業からID-POSデータを預かり、約1300万IDの購買履歴を保有している。これらのデータをもとに、購買・店頭・販促など多様なリテールデータを統合・分析するプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を開発・提供している。Urumo Ads(ウルモ アズ)は、そのUrumoを基盤とした広告ソリューションで、購買データに基づくターゲティングから広告配信、効果検証までを一気通貫で支援。主要な広告メディアと連携し、広告効果の可視化や、ターゲティング精度の向上を実現している。2025年4月時点で、480ブランド以上が導入している。今回発表した「メディアファインダー/メディアプランナー」は、購買結果に基づくターゲティングとプラン設計を担うUrumo Adsの新機能となるもの。開発の背景には、広告施策の立案において、属人的な経験や勘に依存する傾向が強く、定量的な根拠に基づいたメディアプランニングが困難だという課題があった。フェズでは、特に購買とリーチの両立が求められる現在の環境において、購買親和性という新たな基準を導入することで、マーケティング施策の最適化を図る狙いがあった。

「購買親和性」で選ぶメディアプラン

「メディアファインダー」は、購買データとメディア利用実態を突合し、特定商品の購買層と親和性の高いメディアを定量的に可視化するツール。散布図形式で「購買率」×「広告接触率」を一覧化することで、リーチだけでは測れなかった実購買につながるメディアが一目で分かる仕組みとなっている。その結果をもとに広告配信計画を組み立てるのが「メディアプランナー」だ。予算やターゲット属性を入力すると、購買とリーチの両軸で最適なメディア配分を自動で算出する。広告代理店が提供する従来のマーケティングミックスや、広告指標ベースの配信ツールと比べ、購買実績を基盤とした「売上に寄与するプランニング」である点が大きな特徴だといえる。

購買リフトとブランドリフトの双方を実現

ビタミン剤・栄養剤ブランドを対象とした実証事例では、購買親和性の高い層に対して広告を配信した結果、非接触層で128%、接触層では199%の購買リフトが見られた。加えて、ブランド想起率の向上に加え、特定ブランドに対する態度変容も見られ、購買リフトとブランドリフトの双方を実現できた事例として紹介した。クライアントからは、「SKU単位での施策効果が検証できる」「過去の購買検証と一致した」「新たな仮説構築にもつながった」といった評価の声も寄せられているという。こうした分析を支えるのが、IDベースのデータ突合基盤と、生成AIを活用した独自の分析エンジンだ。たとえば、YouTubeと小売店のアプリを両方インストールしているユーザーがいる場合、そのIDをもとに、広告接触と購買を時系列で分析することが可能だ。こうした仕組みは特許も取得済みで、複数のデータソースを横断的に扱うフェズの技術的な強みのひとつとなっている。また、データ活用においては、アプリとiOSでのトラッキング許諾を得たユーザーに限定して分析を実施。また、第三者から提供された調査データをもとにしたターゲティング配信は行わず、傾向分析の範囲にとどめるなど明確なルールを設けている。

購買起点のIMCが新たな競争力に

フェズ代表取締役の赤尾雄司氏

フェズ代表取締役の赤尾雄司氏は、新サービス発表に合わせて行ったプレゼンテーションで、市場構造の変化についても触れた。人口減少や出店余地の限界、仕入れ価格の上昇など、小売を取り巻く環境が変化するなか、小売店のPBや専売品の比率が高まり、NBメーカーの「販売につながる企画力」が問われていると指摘。そうした環境のなかでは、マーケティングにおいても「定性」から「ファクト」への転換が求められていると語った。また赤尾氏は、「マーケティングのルールは、購買起点に変わっていく」と述べ、広告・販促・商品開発・CRMといったすべてのプロセスが購買データに基づいて再設計されるべきとも強調した。リテールメディアはその一部の領域であり、購買結果を起点とした統合マーケティング(IMC:Integrated Marketing Communication)の構築こそが今後の競争力の源泉になるという。今後は、購買実績をもとに、広告主・小売・代理店が同じ基準で判断できる環境づくりを進めるとともに、百貨店やコンビニ、ECチャネルといった他業態への対応についても、ニーズや許諾状況を踏まえながら検討していく。

リテールメディア戦略は「横断化」のフェーズへ

リテールメディア領域に進出する小売企業が増加する傾向のなかで、「広告主には、どの小売のメディアに出稿すべきかという新たな課題が浮上しているのではないか」というDigiday Japanの問いに対し、取締役戦略・業務執行責任者の鈴木勇次氏は、小売によって購買データの活用の姿勢や組織の前提が異なるため、現時点では明確な横断ソリューションこそないが、技術的な分析は十分に可能であると説明した。赤尾氏も、「一つの小売に限定されず、複数の店舗をまたいで購買する」といった買い回り行動まで含めて購買を分析したいというニーズは高く、今後の重要な論点のひとつだと捉えているという。取材・文・写真/戸田美子