NTT・ドコモ・NEC 高速移動時でも通信品質の低下を抑える技術の開発に成功 40GHz帯〜ミリ波で分散MIMOによる高速通信に活路
今後は、高周波数帯分散MIMOの高速移動環境への社会実装に向けて、一般道路や鉄道などの実サービスを想定した実証実験を進めるとともに、分散MIMOの適用周波数の拡大をめざしミッドバンド帯など、さらに幅広い周波数帯への分散MIMOの適用を検討するとしている。
●高周波数帯では「高周波数帯分散MIMOシステム」が有力
高速移動では(例えば新幹線や車両移動時)、基地局(セル)間の切り替え(ハンドオーバー)が頻繁に発生する。そのため、高速移動時に適切なタイミングで基地局を切り替えないと、通信の途切れや遅延が発生する「ハンドオーバー遅延」の可能性が高くなる。
また、高速移動時には、電波がビルや地面などに反射し、複数の経路(マルチパス)を経て端末に到達することになる。この結果、信号品質の変動(フェージング)が発生しやすくなり、通信品質が不安定になるという特性がある。そのため複数のアンテナを用いた通信「分散MIMO技術」が重要になるが、高速移動では適切なアンテナ配置や適応する高度な技術が求められている。
5G Evolution & 6Gでは、サイバー空間とフィジカル空間が融合した世界での映像・センシング情報の収集、車両とあらゆるものが連携して自動運転等を実現するV2X(Vehicle to X)、五感情報や雰囲気、安心感などの感覚も含めた多感通信などの実現が期待されている。これらの実現には無線通信のさらなる高速化・大容量化が必要であり、5Gから利用可能になったミリ波帯を有効活用し、さらに高い周波数帯を移動通信に活用することが検討されている。
これら高周波数帯は電波の直進性が高いため、遮蔽対策が重要となる。その対策として、1つの基地局から多数のアンテナを分散配置し、各無線端末に対して複数の分散アンテナから無線伝送を行う「高周波数帯分散MIMOシステム」は有力な解決手段の一つだ。
NTT、ドコモ、NECは2022年6月に発表した高周波数帯分散MIMO技術の実証実験協力にもとづき、端末移動予測によるアンテナ選択技術の実証実験を行い、屋内遮蔽環境での安定した大容量無線伝送を実現。さらに、複数の無線端末が同時に同一周波数チャネルで無線伝送する場合に、各分散アンテナで形成されるアナログビームフォーミングの干渉抑制効果を最大限活用するマルチユーザ伝送技術の実証実験を行い、歩行速度で移動する場合でも静止時と同じ無線伝送容量を実現した。
今後の展開として、高周波数帯を活用した無線通信の大容量化を活用する有望なユースケースに、自動車や列車など高速移動のケースが想定される。高速移動体では、車両自体の高速走行や周囲の高速移動する他車両によって通信環境に急激な変化が生じることが考えられる。このような急激な変化に対応するため、通信品質の良いアンテナおよびビームを高速に選択できる必要があるものの、分散アンテナ数の増加に伴い選択候補が膨大になるという課題があった。加えて、高速移動中に分散アンテナを切り替えると、ドップラー周波数や伝搬遅延が急激に変化するため、通信品質の大幅な低下が生じるという課題もあった。
