3月には36歳を迎える香川。高みを貪欲に追い求めていく姿勢は相変わらずだ。写真:元川悦子

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 アーサー・パパス監督を招聘し、新体制へと移行したセレッソ大阪。2019〜20年にかけ横浜でアンジェ・ポステコグルー監督のもとでコーチを務め、21年には鹿児島ユナイテッドFCを率いた経験もある指揮官は、Jリーグに精通している。

 しかも、同じタイミングで横浜時代に共闘した畠中槙之輔も加入。彼にとっては自身のやりたいサッカーを体現しやすい環境になったと言える。

 チームは1月9日から始動し、11〜19日にタイキャンプを実施。喜田陽は「ものすごく厳しい規律の中で追い込んだ」と言う。そして22日から宮崎へ移動。24日に今季初実戦となる徳島ヴォルティスとの練習試合(45分×3本)に挑んだ。

 1本目は畠中や登里亨平、田中駿汰、喜田、ルーカス・フェルナンデスらが出場。システムは4−2−3−1でボールを保持して主導権を握るスタイルを目ざしたが、登里がいきなり負傷交代。予期せぬアクシデントに見舞われた。

 攻撃の組み立てが低調な場面も多く、得点もヴィトール・ブエノのPKによる1点のみ。やや停滞感も見て取れた。

 そのメンバーで2本目の20分までプレー。ここで11人全員が交代し、香川真司や奥埜博亮、西尾隆矢らが出てきた。香川はキャプテンマークを巻いてボランチに陣取り、前後左右に細かく指示を出す。

 その効果もあってギアが上がり、北野颯太が2点目をゲット。さらに終盤には北野の左CKから舩木翔がドンピシャリのヘッドで決め、リードを広げた。
 
 3本目は両者ともに疲労の色が濃くなり、スコアレスに終わったが、セレッソは3−0で勝利。これには香川も安堵感をのぞかせた。

「プレッシングを含めてまだ課題だらけですけど、新しい監督の1戦目。毎日、2部練をやっていて疲労もあるし、そういうなかでまず練習試合で勝てたことが大事ですね。

 もちろんビルドアップや攻撃はもっともっと構築していかないといけないし、ポジションが被ったり、サイドバックが中に入りすぎたりとバランスを改善しなきゃいけないけど、うまくつなげられた時には良い形もできていた。クオリティを上げていくことが重要ですね」と、35歳のベテランは前向きにコメントしていた。

 現状ではボランチ陣の中で田中、喜田に次ぐ立ち位置にいる香川だが、フラットな状態から始まった競争をポジティブに捉えている。同じベテランの奥埜、レンタルバックした松本凪生や大迫塁らもいるが、熾烈なポジション争いに負けるつもりなど一切ない。

「(J1で10試合・1得点に終わった)昨年末は本当に不甲斐なさでいっぱいだったし、クラブとしても変わらなきゃいけないという思いも強かった。オフもハードなトレーニングをしましたし、キャンプを通してコンディションも上がってきていると思います。

 技術的なものは大きな自信を持っているんで、あとは試合の中で監督のやるサッカーを実践し、プラス、個性やキャラクターを出していくこと。監督に言われたことだけをやっていても大きく成長できないだろうし、“プラスアルファ”を示すのがプロ。そのプライドは持っているし、負ける気はないんで。主にボランチ、インテリオールとして勝負していくつもりです」と、香川はギラギラ感を前面に押し出した。

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 3月には36歳になる香川。「シーズンを通してフル稼働するのは厳しい」「新たな指揮官の求める役割や方向性にアダプトできるかどうか未知数」といったネガティブな見方があるのも確か。前日の23日に引退会見を行なった同期入団の柿谷曜一朗が「この5年くらい、サッカーが楽しくないなと感じることが増えた。今は戦術とかハードワークって言葉があまりにも多すぎる」と本音を吐露したように、30代の年長者たちにとって最新トレンドへの適応はやはり難題だ。

 しかしながら、香川は「僕はどんなサッカーにも対応する力がある方だと思っている」と断言。高強度と戦術化の一途を辿るサッカーへの適応に自信を見せている。年齢に関係なく、高みを貪欲に追い求めていく姿勢は不変なのである。

「曜一朗は自分のプレーに対するこだわりとか“芯”みたいのが強いけど、僕にはそういうのは正直、ないんですよね。あいつは、見ている人を驚かせるようなクリエイティビティを本能的に持っていて、それでプロになって活躍しましたけど、僕はそういう選手じゃない。割と適応能力があると思ってるし、今季もどんどんチャレンジしたいですね」

 どこまでもポジティブなマインドを前面に押し出す香川。今やJリーグのシンボル的な存在の1人と言える男の完全復活を多くの人々が待ちわびているが、ここまでの感触は悪くない様子だ。
 
 実際、田中と香川のボランチコンビであれば、パパス監督が目ざす攻撃サッカーがより具現化しやすくなるという印象もある。もちろん守備強度を考えると、奥埜や喜田が入った方がベターな状況もあるだろうが、2024年終盤のように「香川が全く使われない」という最悪の展開にはならないだろう。

 本人もボランチのレギュラー奪取を目ざし、できることは全てやろうとしている。その意識や基準の高さがチームの躍進につながれば理想的。香川の新たな挑戦はここからが本番だ。

 2月14日の開幕・大阪ダービーで、彼はスタメンの座を射止められるのか。今後の動向が大いに気になる。

取材・文●元川悦子(フリーライター)