記事のポイント

ソニーは投機的でないWeb3活用を目指し、安全なインフラ提供を目指す。

パブリックブロックチェーン「Soneium」公開やNFT活用の「Fan marketing Platform」などを発表。

Web3は成長段階にあり、企業の参入・撤退が続くなかで市場の成熟が注目される。


「Web3技術はこれまで投機的な側面が強調され、マネーゲームの道具として扱われたり、諸外国ではマネーロンダリングのリスクやボラティリティの高さが問題視されたりしてきた。ソニーがめざすWeb3の活用は、そうした投機的な世界ではない」。

そう記者会見で話したのは、ソニーグループで執行役員副社長CSOを務める御供俊元氏だ。同グループは1月14日、都内で記者会見を開き、Web3事業を推進すると発表した。

同社傘下のブロックチェーン関連会社3社(Sony Block Solutions Labs、S.BLOX、SNFT)にて、Web3の基盤インフラであるブロックチェーンからアプリケーションレイヤーまで包括的なソリューションを提供するという。目的は、クリエイターのクリエイティビティ拡張やファンコミュニティへのエンゲージメント強化のサポートだ。

なぜ、ソニーがWeb3事業に参入するのか?



発表された具体的な取り組みは、パブリックブロックチェーン「Soneium(ソニューム)」の一般公開と暗号資産取引サービス「S.BLOX」のリニューアル版リリース、そしてNFTを活用した「Fan marketing Platform」のリリースの3つ。

つまり、「暗号資産交換業」「ブロックチェーン事業」「NFTマーケット事業」といった事業への参入を推し進めるという。「なぜソニーがWeb3事業に参入するのか? この疑問を抱かれる方も多いのではないか」と御供氏は語り、「我々は安全で安心して利用できるWeb3インフラを提供し、クリエイターとファンがより深くつながる世界を実現したい」と続けた。

「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というパーパスを掲げるソニーグループならでは取り組みと言えるだろう。実際、同会見において御供氏は、「クリエイターとユーザーをつなぐネットワークやコミュニケーション領域は、ソニーにとって非常に重要な要素だ」と強調している。

会見には御供氏のほか、 ソニーグループ傘下のブロックチェーン会社であるS.BLOXの渡辺潤代表取締役、元乃木坂46で投資家としての一面もある高山一実さんが登壇し、渡辺氏は同グループのWeb3戦略を、高山さんは一般的な目線から見たWeb3の印象を話した。

Soneium(ソニューム)にできること



発表された具体的な取り組みのうち、まずSoneium(ソニューム)とは何か。同ソリューションは、開発者やクリエイターが自身のアプリ内の決済を通して収益を上げられることに加え、エンドユーザーがお気に入りのアプリ上の活動を通じてクリエイターの応援・支援をするファンコミュニティを築けるパブリックブロックチェーンだ。

渡辺氏は「世界中のクリエイターの創造性を解き放ち、境界を越えて多様な人々の価値観をつなげるコミュニティを育むことをめざしている」と話したうえで、「Soneiumによってクリエイターとファンが共創する新しい文化が生まれると考えている」と続ける。

たとえば、デジタル上でクリエイターとファンが共同でイベントを企画したり、ファンが投票でコンテンツの方向性を決めたりすることが容易にできるという。また、ファンの貢献がブロックチェーンによって記録・証明され、正当に評価されることなども可能だ。

ファンの貢献をより明確にする



一方、暗号資産取引サービス「S.BLOX」は、暗号資産の取引からSoneium(ソニューム)でのアプリ利用の体験まで一気通貫で提供することを目指して、旧モデル「WhaleFin」をリニューアルしたもの。リニューアルに伴い、UI画面のデザイン刷新や今後モバイルアプリのリリースや対応通貨の拡充により、使いやすいサービスを予定しているという。

また、「Fan marketing Platform」については、NFT施策を実行する企業向けに提供するプラットフォームで、NFTを活用したファンエンゲージメント施策の実行から分析までワンストップで支援するという。

ファンの貢献をより明確にするためでもあり、ファンはNFTやトークンを獲得して特典や限定イベントに参加したり、クリエイターはファンの貢献を可視化してより深いエンゲージメントを実現できたりする。今年2月以降、順次にサービスをリリースする予定だ。

Web3の転換期



企業のWeb3分野の取り組みは、撤退と参入を繰り返しているようにも見える。暗号資産市場やNFT市場の冷え込みに加え、技術の成熟度および市場環境が曖昧であるためだ。

渡辺氏は「Web3はまさに2000年代初頭のインターネットと同じ転換期にある」と語り、「当時、Yahoo! BBの普及やWindows XPの登場により、インターネットが爆発的に普及したように、Web3もこれから本格的に浸透していくだろう」とまとめた。

ブランドのWeb3活用に目を向けると、海外ではスターバックス(Starbucks)やナイキ(Nike)などの業界大手が先駆的な取り組みをしており、日本国内においても大手企業を中心に取り組みが発表されている。ブランドがWeb3を活用していかに消費者との接点を増やしていくか、あるいはロイヤルティを上げていくのかについては、今後さらに注視すべきかもしれない。

文/島田涼平