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住んでいる場所に束縛できるはずがなかった!

ひとつの時代の変わり目なのかなと思います。先日、一部サッカー界隈を賑わせた「Jリーグがホームタウン制を事実上撤廃する」との報道。地域密着を掲げて時代の寵児となったJリーグも、その理念の一丁目一番地に見直しを入れる時代となったのだと思います。地域密着、企業名は入れない、そのこだわりがJリーグを成功させたと同時に、そのこだわりは目新しさを失い、役目を終えつつあるのだなと。

↓一部報道に対する声が早速上がっています!


↓一部報道では9月の理事会で話したというので、何か説明があるのかと思ったら、特にありませんでした!


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もちろん「中の人」に言わせれば、これはあくまでも緩和であって、大都市圏(要するに東京都)での試合開催や下部組織の運営、営業活動などを実施するために、これまでよりも柔軟な姿勢でやっていきましょうということなのであると言います。一部報道にあるネーミングライツの解禁も、議論をし始めたばかりであり、何も決まっていないのであると。鹿島メルカリアントラーズに直ちになるわけではない、と。

Jリーグの村井チェアマンからも「撤廃・変更の事実は一切なく、今後、Jクラブの営業、プロモーション、イベント等のマーケティング活動における活動エリアに関する考え方の方向性について議論しているものです」と報道を否定するコメントも出されました。その点では、地域密着の理念が直ちに揺らぐものではないのでしょう。一部報道にあるように、「ホームタウン内で他クラブの活動を制限することは、独占禁止法に抵触する」という観点での対応であるという面もあるのかもしれません。

とは言え、この手の記事は往々にして「図星」であることも多いもの。そもそも議論をしている時点で、腹の底には「図星」があるわけです。「あいつぶっ殺しましょうか」と相談しているヤクザの腹の底には、現実の方策として「ぶっ殺す」がありますし、絶対にやってはいけない禁じ手だと思っているのなら「ぶっ殺すかどうか」を議論するはずがありません。議論している時点で、理念は終わっているのです。すでに「絶対に手をつけてはならない聖域」ではなくなっているのです。「直ちにぶっ殺す」かどうかはさておき。

それでいいと思います。

この30年で世間も変わりました。さまざまなものが地域密着を名乗り始めました。スポーツをはじめ、アイドルグループだって、ゆるキャラだって「地域」に根差すようになりました。それはウケる手法だったのでしょう。ひとつの地域を指定するだけで、多くの人とのつながりが生まれ、我が事として感じてもらえるのです。実際に密着するための尽力は大変なものであるとしても、何のキッカケもないところから結びつくよりは遥かに簡単でした。

同じ学校に通っていたというだけのどうでもいい理由で生涯の友となることがあるように、同じ地域に根差しているということをきっかけにクラブと人々が相思相愛になることが確かにあった。その「気づき」(というか輸入)をもって、日本を席巻したJリーグの功績はとても大きいものです。と同時に、その手法はあらゆるものが利用できる汎用的なものであったため、「地域密着」はとりあえずやっておくデフォルトの手法になってしまいました。

何にでも本拠地がある以上、密着はできます。その密着度合いや、地域の誇りとなっている度合いをさまざまな他業種ライバルと競い合うなかで、相対的にJリーグのプレゼンスは下がっていきました。何でもいいから「おらほのもの」が欲しいと思っている人に、たくさんの選択肢が生まれる時代になったのです。そうなれば当然、お客さんもバラけます。ジェフ千葉で夢を叶えるより、千葉ジェッツで夢を叶えるほうが現実的ですからね。

「何もないところなら独占できるが」

「にぎわっているところにはライバルがいる」

そういう密着競争の時代になったのです。

そうしたなかで、30年前の舵取りで最大の失敗であった、「東京にビッグクラブを作れなかった」ことが、改めてJリーグの課題として浮上してきたのでしょう。理念を守るために切り捨てた東京は、巨大な浮動層としてやっぱり取りたい場所であったのです。誰かが23区を本拠地として、土日・休日に試合をやってくれればよかったのでしょうが、残念ながら結局そうはなりませんでした。これだけチーム数がありながら開幕節や大型連休に普通に東京で試合がない事態がつづいていました。

やはりそこは何とかしたいでしょうし、何とかしたほうがいいだろうと思います。まずはそこを緩和して、広く浮動層にアピールするような機会も作っていくということなのでしょう。それが「直ちに」地域密着の理念を撤廃する未来にはつながらないだろうとは思いますが、「地域独占」という姿は変わっていくのだろうと思います。密着ではなく、緩やかなハグのようなものになっていくのだろうなと。

↓言葉を選んで燃えないようにはしているが、「撤廃」以外は特に否定していない公式コメント!


↓なお、言葉を選ばずに似たようなことを言うと、勢いよく燃えます!



地域を大切にする気持ちは素晴らしいですし、これからも大切にすべきだと思います。ただ、それだけでなくなったとしてもいいと思いますし、むしろ今はそうあるべきです。今、一番勢いがあって流行っている人の本拠地は地域ですらなく「アカウント」であり「チャンネル」です。世界を席巻するサービスの本拠地は国や地域ではなく「アプリ」であり「プラットフォーム」です。そういう「ホーム」があったっていいし、それはほかの「ホーム」と共存するものです。「タウン」がすべてでなくていいし、そういう風にもう解放してあげてもいいと思います。「クラブ」さえどこかにあれば。

同じ場所に住んでさえいれば相思相愛になれて、同じ場所に住んでいることを条件として愛し愛される幸せな時代は終わりつつあるのです。すでに地域によっては「無理だな」と感じてもいるでしょう。むしろ今試されるのは、30年間操を立ててきてくれた相手に対する、地域からの愛でしょう。ヨソで試合をしたっていい、遠くのお客さんに笑顔をふりまいてもいい。心はここにあるとわかっているし、最後はここに戻ってくるとわかっているのだから。そうやって、相手を束縛しなくても愛してやれるかどうか、そこが問われるのかなと思います。

ある日突然自分のクラブが新宿メルカシマアントラーズになって、チームカラーがメルカリレッドに変わって、「あれ?年間の半分くらい国立でやってない?」「ジーコ像がメルカリで売られてる」「カシマ開催が水曜の夜ばっかりですね…」と思ったとしても、それを愛してやれるかどうか。まぁそこまでやられたら愛せないかもしれませんが、ガチガチに縛っていないと不安になるようでは、いけないのだろうと思います。たとえ全力で愛してくれなくても、愛して待っててあげる。それがファンの姿勢だろうと思いますので。

新宿メルカシマアントラーズ。

ヴックス楽天kobo。

ミクC東京。

「ホーム」がどこにあるかによっては、必ずしもタウンが優先度第一位でないチームも出てくるかもしれませんが、今よりも大きくなってタウンに帰ってきてくれる日を待ってあげましょう。30年後くらいにはまた「地域に完全に殉じていることが誠実さと映って、結果的に遠くの地域の人にも愛されるし、そうでない時点で誰からも受け付けられなくなる」なんて環境変化も起きるかもしれませんから。「在宅勤務最高と思ってたけど、出社したほうが働きやすいですね…」と考え直す人みたいに!



本当にその土地から離れないものって、山とか海とかだけなんでしょうね!