オンライン詐欺やマネーロンダリング、薬物取引などを行うサイバー犯罪組織を、スペイン国家警察・イタリア国家警察・欧州刑事警察機構(ユーロポール)・欧州司法機構(ユーロジャスト)の共同捜査グループが解体し、106人もの構成員を逮捕しました。このサイバー犯罪組織はイタリアのマフィアに関連しているとされており、2020年だけで1000万ユーロ(約12億8000万円)の利益を上げたとユーロポールは推定しています。

106 arrested in a sting against online fraudsters | Europol

https://www.europol.europa.eu/newsroom/news/106-arrested-in-sting-against-online-fraudsters

Police Announce Huge Bust of Mafia’s Cyber Crime Operations

https://www.vice.com/en/article/5dbvx3/police-announce-huge-bust-of-mafias-cyber-crime-operations

Europol links Italian Mafia to million-dollar phishing scheme

https://www.bleepingcomputer.com/news/security/europol-links-italian-mafia-to-million-dollar-phishing-scheme/



ユーロポールやスペイン国家警察などが2021年9月20日に発表した声明によると、スペインのカナリア諸島にあるテネリフェ島に拠点を置くサイバー犯罪組織を、ユーロポールやイタリア国家警察の支援を受けたスペイン国家警察が解体したとのこと。この犯罪組織はフィッシング攻撃やSIMスワッピング、ビジネスメールの侵害といった多様なオンライン詐欺に従事し、マネーミュールやペーパーカンパニーを利用して資金を洗浄していたそうで、2020年の違法な利益は1000万ユーロに達すると推定されています。

このサイバー犯罪組織はかなり大規模なネットワークを築いており、細分化された専門分野と役割からなるピラミッド構造をなしていました。メンバーにはフィッシング詐欺に用いるインフラストラクチャーの作成と管理をする専門家や、実際にオンライン詐欺の実行と調整を担当する専門家、マネーロンダリングに加担するマネーミュールを取りまとめる専門家、暗号資産の専門家などが含まれており、そのほとんどはイタリア人でした。

今回逮捕された構成員の中には、イタリアの4大マフィアの1つでありナポリを拠点とするカモッラや、同じく4大マフィアでプッリャ州を拠点とするサクラ・コローナ・ウニータといった犯罪組織で働いていた人物もいるとのこと。

スペイン国家警察は、摘発の様子を捉えた映像をツイートで公開しています。



夜の街を歩く警察官たち。



目的は住宅街にある大きな邸宅のようで……



裏手にも警察官が配備されていました。



「Policía!(警察だ!)」という声と共に扉をたたき……



武装した警察官たちが突入します。



警察官が突入したのはこの邸宅だけでなく、9月20日の発表では16件の家宅捜索が行われたと報告されています。



アパートの一室らしき場所にも犯罪組織のアジトがあった様子。



逮捕された人数は106人に上ります。





今回の摘発では118件の銀行口座が凍結され、224枚のクレジットカード、複数のSIMカード、POS端末などが押収されました。



また、犯罪組織は薬物取引にも手を出していたそうで、警察はマリファナの栽培設備も発見しています。





スペイン国家警察によると、この犯罪組織はサイバー犯罪の他に薬物や銃器の売買、暴力的な恐喝、強盗、殺人といった犯罪にも関与していたそうです。海外メディアのViceは、「この作戦は従来の犯罪組織が、さらに多くのサイバー犯罪に手を出していることを浮き彫りにしています」と指摘しています。

ユーロポールは今回の捜査において、複数の国のサイバー捜査官からなる対サイバー犯罪組織(J-CAT)を通じて支援を行いました。声明では、1年以上にわたって情報交換や運用の調整、分析の提供といったサポートを提供した他、2人のアナリストや法医学専門家をテネリフェ島に派遣したと述べています。