浅草〜渋谷間を走る日本最古の地下鉄、東京メトロ銀座線。40編成ある車両のうち、レトロなデザインの車両が2種類だけ存在するのを皆さんはご存じだろうか。


出会えたらラッキー?(画像は東京メトロ提供)

木目調の壁に深い緑のシート、金の取っ手など、通常の車両とは明らかに雰囲気が異なる。1927年の開通当初から40年ほど運行していた1000形を再現している。

ツイッターでは実際に乗ったというユーザーから、

「最高にレトロかわいい銀座線に乗ってる、、、めちゃくちゃかわいい、、、」
「銀座線レトロ仕様は2編成しかないレア車と聞いたので今日はハッピーデー認定」
「2回くらい乗ったことあるけど、外見からして際立っているし、車内も綺麗すぎて視界にまぶしくて妙にそわそわするよ」

といった声が寄せられ、好評だ。

20分の1の確率で出会えるレトロ車両はなぜ誕生したのか。Jタウンネットは9月19日、東京地下鉄(以下、東京メトロ)の広報担当者に聞いてみた。

ホームドア導入をきっかけに運行

外観のみレトロな1000形仕様の38編成が「1000系量産車」とされるのに対し、内装もその仕様となる2編成は「1000系特別仕様車」と呼ばれる。東京メトロの担当者によれば、1000系特別仕様車は17年1月から運行している。


特徴的なつり革など、細部までこだわりが

なぜ特別仕様車を導入したのかを聞いてみると、

「銀座線にホームドアを導入していくために、車両を2編成増備する必要が生じました。地下鉄開通90周年(17年)も控えていたので、90周年のイベント等での活用等により、お客様により親しんで頂くことを目的として導入いたしました」

とのこと。ホームドアの導入で停車時間が増え、運行間隔が広がってしまったことから、電車そのものを増やす必要があったようだ。

現在は特に期間は設けず、通常車両として運行している。

ツイッターなどで好評の声があがっていることに対しては、

「こだわって製造した車両のため大変嬉しく思います。20分の1の確率という、なかなか出会う機会の少ない車両ですが、ご乗車された際には、レトロな車両の雰囲気を楽しんで頂けたらと思います」

と話している。

実際に乗ってみた

そんなレトロな車両に、記者も乗ってみることにした。

赤坂見附のホームにスタンバイし、入ってくる電車の内装を確認。通常の電車は白い壁、レトロ車両は木目調なので、遠目でも判別可能だ。

20分の1の確率なので15本くらいは見送らなければならないだろう...。そう覚悟していた筆者だったが、幸運にも8本目で乗ることができた。入ってきたのを見た時は、やはりテンションが上がってしまった。


扉も素敵だ

中に入ると、壁や扉が木目調だけでなく、特徴的な吊手や真鍮色の手すり、室内側面予備灯、製造者銘板・車号銘板など、細部にまでこだわりが見える。

東京メトロが運営する「銀座線リニューアル情報サイト」によれば、涙型の吊手は「リコ式吊手」といい、1000系で使われていたもの。室内側面予備灯は補助用の照明で、当時は駅の近くなど室内用照明が消えるポイントがあったため、そこで点灯していた。

現在の通常運行で点灯することはないが、かつてのイベントではそのポイントにあわせて室内予備灯だけを点灯させ、昔の様子を再現していた。

ライトはLEDを使用し、当時の色に近づけた。レトロな雰囲気を感じさせながらも先端技術を使っているのが面白いところだ。


室内側面予備灯


イベントでは点灯していた(画像は東京メトロ提供)

製造者銘板・車号銘板には車両の製造会社と製造年、車両番号が刻印されている。開通当時は製造者銘板だけだったというが、100系特別仕様では車号銘板を統合した。

この車両の場合、製造年は「平成29年」になっている。


「1340」は車両番号、その下は製造会社と製造年が刻印されている

また車内からは見えないが、外観の違いにも注目したい。車両を正面から見ると、運転席の上部にライトが一つ、「前部標識灯」が付いているのがわかる。1000系量産車は電球が切れて営業に支障をきたすことがないよう2灯なのに対し、特別仕様車は1灯に。量産車で照明の信ぴょう性が証明されたことで、より1000系に近づいた外観となった。


向かって左が1000系特別仕様車、右が1000系量産車(画像は東京メトロ提供)

どこか懐かしい雰囲気の車内は、乗っているだけで気分が高まり、昭和初期にタイムスリップしたかのような気分になれる。

特別仕様の銀座線車両、乗れるかどうかは運次第だ。