都市部ではバイク駐車場が不足しています。「停めたくても停められない」ことから、警察も厳しく駐車違反で取り締まることができない状況。なぜ整備が進まないのでしょうか。

バイク保有台数減の一因は駐車環境か

 四輪車の駐車場に比べ、圧倒的に数が少ない二輪車の駐車場。国土交通省によると、2013年3月時点で二輪車の駐車収容台数は、四輪車のおよそ7分の1です。2017年12月には、東京都の小池百合子知事も会見で、なかなか進展しない都下におけるバイク駐車場の整備を「加速度的に進めていきたい」と発言していました。


高速道路の高架下に設けられたバイク駐車場(2018年11月、乗りものニュース編集部撮影)。

 50cc以上のバイクは法律上、「自動車」のひとつとされるため、原則としてはクルマと同様に駐車違反の罰則などが科されます。しかしながら、一般的に自治体が運営する駐輪場には停められず、クルマの駐車場バイクの駐車スペースが合わせて設けられているケースも多くはありません。

 また2006(平成18)年、警察庁からの通達により、歩行者の交通安全確保や、高齢者、障害者などの移動を円滑化するうえで支障となる、といった理由で二輪車の駐車違反取り締まりが強化されました。これを機に駐車違反検挙件数が急増。停めたくても停める場所がないと、駐車場不足が顕在化しました。

 二輪車の業界団体である日本二輪車普及安全協会(東京都豊島区)は現在、ウェブサイトで全国のバイク駐車場を検索できるサービスを提供していますが、これを始めた背景には、「しっかり対策しないと、乗る人がいなくなってしまう、という危惧がありました」と話します。日本におけるバイクの保有台数は年々減少していますが、前出の小池知事も、その理由のひとつは駐車場の確保ではないか、としています。

民間の駐車場は増えるが、自治体の整備が進まないワケ

 バイク駐車場の整備状況について、日本二輪車普及安全協会に話を聞きました。

――バイク駐車場は増えているのでしょうか?

 もちろん、10年ほど前と比べれば環境は改善されてきています。たとえば当協会ウェブサイトの「全国バイク駐車場案内」に登録されている駐車場数も、2011年6月現在で1350か所だったのが、2018年11月現在では1万2700か所以上を数えます。

 主に民間の駐車場が増えていますが、やはり土地の問題から大規模なバイク駐車場はなかなか整備されず、特に東京では慢性的な駐車場不足です。たとえば高架下のスペースや民家と民家のあいだなど、1台、2台分でもいいので整備してほしいと、当協会からも事業者に働きかけています。

――自治体では整備されないのでしょうか?

 場所によっては公共駐輪場の一角をバイク駐車場にするといった例もあります。しかし、利用者が思ったように増えなかったり、自転車の駐輪台数のほうが不足していたりして、そのぶんを自転車に回して欲しいといった声も出てくるなど、一筋縄ではいかないのです。その点、バイク駐車場に関しては民間運営のほうが増えている傾向であるほか、東京都の道路整備保全公社も、駐車場事業者に対してバイク駐車場の整備を支援しています(編集部注:2017年までの13年間で都内の176駐車場に対し3483台分の整備支援を実施)。


二輪車(原付および自動二輪)の違法駐車取り締まり件数の推移。取り締まりが厳しくなった2006年、およびその翌年に件数が急増した(画像:国土交通省/日本自動車工業会)。

――ほかにどのような場所に停められるのでしょうか?

 いま増えているのは、スマートフォンアプリなどを通じた個人間の駐車場シェアです。自宅などの駐車場を使わない時間に有効活用でき、貸し出す側にとっても利用する側にとってもメリットがあります。また、大きな(四輪車用)駐車場の一角をバイク駐車場にしたり、バイク販売店で駐車を受け入れていたりします。あまり知られていないのですが、路上のパーキングメーターによる駐車スペースをバイクで利用することも可能です。

 しかしながら、諸外国のように車道や歩道の一角にバイク専用の駐車スぺースを設けるような動きは、トラックの荷さばき場整備や自転車の通行環境整備などが優先される傾向もあり、あまり進んでいません。

「停めたくても停められない」駐禁を厳しくもできず

 2018年4月には、警察庁が「自動二輪車等に係る駐車環境の整備の推進について」という通達を各都道府県警察などに出しています。

 同通達では、特に大都市においてバイク駐車場が不足している状況を受け、現に必要があって自動二輪車などの駐車禁止規制を実施している場所で、従前の交通指導取り締まりを変更するものではないとしつつ、場所に応じて駐車禁止規制の緩和(駐車規制の対象から自動二輪車を除外する見直しなど)が可能かどうか検討することや、駐車環境のさらなる整備を推進することを求めています。

 それから7か月が経過しましたが、日本二輪車普及安全協会によると、大きな変化はないといいます。そもそも警察庁は同様の通達を2010(平成22)年にも出しているほか、2006(平成18)年に駐車禁止取り締まりを厳しくした際にも、周辺事業者に対しバイク駐車場の整備拡充を働きかけること、駐車規制の見直しにあたってはバイクの駐車需要にも配意すること、としていました。12年を経てもなお、特に都市部ではバイクの駐車環境整備が十分に進んではいないのです。

 日本二輪車普及安全協会は今後、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」に向け、海外の人が東京でバイクに乗るケースが増えると推測しています。いまでも地方の観光地ではレンタルバイクでツーリングする人が増えているとされるなか、そうした人が同じような感覚で、あるいは(バイク駐車環境が整備された)本国と同じ認識を持って東京に来たとき、駐車場が十分でなければ楽しめないのではないか、と話します。