EVの話題にかすむFCV、20年代普及へトヨタ大増産の勝算
三重県いなべ市の山あいに今春、豊田合成がFCV向け高圧水素タンクの新工場を完成した。現時点で納入先は非公表だが、FCVの車種拡大に対応する投資だ。20年代初めに稼働し、樹脂、炭素繊維、ガラス繊維の3層構造からなる高圧水素タンクを量産する。
FCVは20年代に本格的な普及期に入ることが“必要”だ―。トヨタが5月に出したプレスリリースには啓蒙(けいもう)的な一文が挿入された。燃料電池スタックなどFCVの基幹部品の設備増強を決めた際のものだ。
同社は15年に掲げた「20年頃以降に世界で年3万台のFCV販売」との目標を堅持。FCVの生産能力を現状の10倍に高める。17年末に「水素基本戦略」をまとめた政府と歩調を合わせ、FCVの販売地域の拡大や普及への環境整備も進める考えだ。
海外にもFCV普及への動きはある。例えば中国上海市は17年9月に「燃料電池車発展計画」を発表し、20年までにFCVの台数を3000台にするとした。中国全体では30年までにFCV100万台などの目標があり、上海市はその先導役を目指す。
6月中旬に上海市で開かれた中国の家電・IT見本市「CESアジア」では早速、韓国の現代自動車が最新鋭のFCV「NEXO」を展示。粒子状物質(PM)の浄化などの環境性能をPRした。現代自はその後、独アウディとFCV関連技術での提携を決めた。
ホンダなど他の自動車メーカーもFCVの取り組みを続ける。トヨタのFCV「MIRAI」向けに部品を供給する日系の部品メーカー首脳は「海外のメーカーもFCV普及に熱が入ってきた。供給拡大につなげたい」と商機をうかがう。
(文=杉本要)
