「テック界の「セクハラ問題」解決には、「長い道のり」が待っている──米VCの調査から浮き彫りに」の写真・リンク付きの記事はこちら

米国のスタートアップ界では、認知的不協和が起きているようだ。2017年2月、Uberのエンジニアだったスーザン・ファウラーが同社の差別やハラスメントについて言及したこと[日本語版記事]をきっかけに、米国全体がシリコンヴァレーにおけるセクシャルハラスメントや暴行、報復に関心を寄せるようになった。

それから1年でスタートアップやヴェンチャーにおける問題行為が相次いで明らかになり、有名な投資家やCEOたちが何人も辞職した。ジャスティン・カルドベック、デイヴ・マクルーア、マイク・キャグニー、クリス・サッカ、マーク・キャンター、シャーヴィン・ピシェヴァー、アンディ・ルービン、アミット・シンガル、スティーヴ・ジュルベットソン──。信用を失ったテック界の男たちのリストは長い。

不祥事が発覚するたび、変革が叫ばれた。しかし、スタートアップの創業者たちがこの問題を認識し、解決するまでには長い道のりがある。そんな事実が、ヴェンチャーキャピタルのFirst Round Capitalによる新しい調査からうかがえる。

セクハラに対する認識は男女に大きな違い

この調査はスタートアップの創業者800人以上を対象に行われた。そのうち17パーセントは女性である。調査結果によると、創業者の約半数が職場でセクシャルハラスメントを経験した、あるいは経験した人を知っていると回答した。女性ではその割合は78パーセントにのぼる。

ただし回答者の19パーセントは、テック界のセクシャルハラスメントはメディアによって誇張されていると回答している。男性がこう回答する割合は、女性の4倍高かった。一方で、回答者の40パーセント以上はその反対、つまり問題はメディアが報道するよりも深刻であると回答した。また皮肉なことに、スタートアップの創業者が投資家を探すときにいちばん重視するのは「人柄のよさ」だという。

多様性の欠如に関する質問では、回答者の42パーセントは原因がよく言われる「パイプラインの問題である」と答えた。つまり、多様性におけるテック界のお粗末な成績は、そもそもこの産業に女性やマイノリティの数が少ないからだとした。2番目に多かった回答は「無意識にバイアスをもっているから」で、「STEMでの新卒採用が少ないこと」が3番目に続く。

対策については、男女で違いがみられた。女性の回答者は、女性のヴェンチャーキャピタリストを増やすこと、そしてリミテッドパートナー(有限責任社員)からの圧力がよい対策になると答えた。男性の回答者は、感受性訓練とメディアの報道を増やすことが最良の対策だとした(男女とも、人に良識ある行動を誓わせるのは対策としては意味がないと回答している)。

多様性への取り組みには消極的?

驚いたことに、自社に多様性やインクルージョンを促進するための正式な計画やポリシーがあると回答したのは、全体のたった17パーセントだった。First Roundが前年に調査を行った際の14パーセントから、わずかな改善しかみられない。回答者の多くは非公式な対策はあるとしたが、約16パーセントは多様性やインクルージョンを促進するためのポリシーを策定する予定はないと回答している。

テック業界が人種やジェンダーの実際の割合を反映するまでに何年かかるかという質問で、回答者の3分の1近くが「20年以上」と回答した理由はこれかもしれない。First Round Capitalいわく、彼らは何人の回答者からなぜ「永遠に反映しない」という選択肢がないのかという苦情を受けたそうだ。

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