5月17日、維新の党の看板政策である「大阪都構想」の是非を問う住民投票が大阪市で行なわれた。

結果は自民、民主に共産までもが共闘した“反対派”がわずか0.8%差で勝利。これほどの僅差で勝敗を分けた要因はなんだったのか?

選挙活動に関わった維新議員たちに聞いてみると、「都構想の是非」とはかけ離れた理由で勝敗が決したことが浮き彫りになった。維新の大阪府議はこう証言する。

「我々が活動していると、小学生たちが『ハンターイ! ハンターイ!!』と楽しそうに連呼しながら歩いているんです。どの地域でも頻繁(ひんぱん)に見られた光景でした。子供たちに『なんで反対なの?』と尋ねてみると、一様に同じような答えが返ってきた。『ハンターイ!』の発信源は学校の教師たちだったんです! 橋下さんは教育改革で教育委員会や教師たちとぶつかっていましたからね。

つまり、都構想とは関係なく、大阪の教師たちは反橋下で固まっていて、その思想を子供たちに吹き込んでいたわけ。それがその家族にも伝わっていった。自分たちの利害のために教育現場を利用したのだからとんでもない話です!」

橋下氏が教育委員会や教師たちの抵抗を押し切って断行した主な改革は、以下の通り。

・小中学校の学校選択制

・民間人校長の積極任用

・全国学力テストの成績公表

・市立の全小中学校で土曜授業導入

・所得が低い家庭の中学生に月1万円の塾クーポン配布

ほとんどが教師の能力が問われて優劣がついたり、労働時間が増えたりする内容だ。高給取りで休みも多い地方公務員教師たちが反発するのは自然な流れだろうが、教育現場を政治に利用するのはいかがなものか。当然、大阪の教師全員がそうだったわけではないだろうが…。

もちろん、反対派が勝利した要因はそれだけではない。

「今回、自民党、民主党に共産党が相乗りするという異例の事態が起こったわけですが、これが痛かった…。共産党はボランティア運動員の動員力がハンパじゃないから。

いつもなら、いくら共産党の運動員が騒いだって大した影響はなかったでしょう。しかし今回は、運動員たちが共産党の旗を持ったりジャンパーを着たりしなかった。だから自民党や民主党の運動員たちとも見分けがつかなかった。これは本当に痛かった…」(維新の大阪市議)

前述のように、住民投票の勝敗差は得票率にしてわずか0.8%。共産党が自民党などと共闘していなければ、結果は逆だったはずだが…。

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(取材・文/菅沼 慶)

■週刊プレイボーイ23号(5月25日発売)「党の東西分裂と橋下復活へのシナリオ『都構想』敗北に内心で手をたたいた維新の連中」より