空気が必要ないのはどんな構造? ブリヂストン次世代タイヤ『エアフリー』をタイヤの達人が深堀り(前編) 縦溝は意外に深かった
数々の実証試験を経て実用化へ
ブリヂストンによる、空気のいらない未来のタイヤ『エアフリー』が、テスト段階である実証実験を経て、いよいよ社会実装(≒実用化)されました。
【画像】滋賀県東近江市にて、スローモビリティ『奥永源寺けい流カー』出発式の様子 全37枚
そんなわけで、実際に現場に行って、同乗試乗ですが試乗してきました。

7月7日に滋賀県東近江市の奥永源寺地区で行われた『奥永源寺けい流カー』『奥永源寺けい流カー』出発式。 ブリヂストン
導入したのは、滋賀県東近江市。中山間地域となる奥永源寺地区で運用されているスローモビリティ『奥永源寺けい流カー』のタイヤとしてエアフリーが装着され、7月7日に出発式が行われました。
さて、まずは、このエアフリーとはいったいどんなタイヤなのでしょうか。
ブリヂストンでは、エアフリーを中期事業計画(2024〜2026年)の探索事業(新しいビジネス機会を発掘する取り組み)と位置付けて、国内各地で実証試験を行っています。
現在、東京都小平市で軽自動車、福井市ではバスタイプのグリーンスローモビリティ、また、福岡県久留米市は奥永源寺けい流カーと同じタイプの車両を使っての実証試験が進行中で、その模様はAUTOCAR JAPANでも掲載しているので、目にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
ブルーのスポーク部がこのタイヤの核心部
さて、エアフリー、具体的には、どんな形状のタイヤなのでしょうか。
構成としては、ホイールと車体に固定するスチールのディスク部があり、その外側にスポーク状の板が複数配置されて外周部のリム部を支えています。そしてこのリム部に、トレッドゴムが巻かれているのです。

フィン状のスポークはある程度柔軟性を持った素材で、荷重がかかると変形する。 斎藤聡
ブルーに塗られたスポーク部が、空気レスを実現した核心部です。たくさんのフィン状のスポークによって、空気入りタイヤのようなクッション性や剛性を作り出しています。
このスポーク部の材料は、熱可塑性樹脂……つまり熱することで溶かすことができて再生できるプラスチックで作られています。
走行中のタイヤのアップを見てもらうとわかると思いますが、ある程度柔軟性を持った素材で、荷重がかかると変形するようにできています。このあたりは空気入りタイヤが路面に接地したときに変形しているのと似ています。
常陽カート用とは違うトレッドパターン
トレッドゴムは、中実……というかトレッドデザインの刻まれた一枚板を、ぐるりと1周張り合わせたかたちです。
スローモビリティ用のタイヤ、もう少し分かりやすい例でいうと、ゴルフ場の乗用カートのタイヤのトレッドは、縦溝パターンやブロックパターン、昔のF1用タイヤのウエットパターンのようなバリエーションがあって、太く深い溝が刻まれています。

ゴム配合は企業秘密だが、触った感触では、比較的弾性の高めな印象。 斎藤聡
ところが、今回奥永源寺けい流カーに採用されたエアフリーは、中細の縦溝2本と、ほぼサイプ(極細溝)と言っていいような細溝が斜めに配置されています。
興味深かったのは、2本の縦溝スリップサインが施され、トレッドゴム側面にスリップサインの場所を示す▲マークが付けられていたことです。これは法規に則って作られ、実践投入されたタイヤなのだというのを感じました。
また、縦溝は意外に深く、スリップサイン1.6mmの突起から類推すると、8mmくらいありそうに見えました。ちなみに溝深さ8mmは、スポーツタイヤの溝の深さと同程度です。
ゴムの配合は企業秘密とのことで明らかにされていませんが、実際のトレッドゴムに触った感触では、比較的弾性の高めな(≒硬いけれど反発力の強い)ゴムが使われているように感じました。
後編では、実際に試乗した感触をお伝えします。

