友人の父親に強姦・殺害されたダニエル・ヤムネック君(「Action Society」の公式Xより)

写真拡大

 友だちの家での「お泊まり会」が、8歳の少年にとって最後の夜になった──。

【写真】獣医を目指していたダニエル君、判決後に切実な表情で涙を流す母親のマリアさん

 南アフリカ・ケープタウンで2023年に起きた児童殺害事件で、西ケープ州高等裁判所は7月22日、被告の男(49)に2つの終身刑を言い渡した。

 男は被害少年の友人の父親。男は過去にも強姦容疑で逮捕された経歴があったが、十分な刑罰が課されていなかった。「防げたはずの悲劇」として、国の対応を批判する声が高まっている。

わが子が眠る部屋での卑劣な犯行

 海外事情に詳しいジャーナリストが事件を解説する。

「事件が起きたのは2023年6月15日。ケープタウン郊外の集合住宅で、8歳のダニエル・ヤムネック君は友人宅でのお泊まり会に参加していました。その深夜、ダニエル君は友人の父親から性的暴行を受け、絞殺された。同じ部屋の2段ベッドで、男の息子が眠るさなかの犯行で、遺体には噛み跡も残されていたといいます」

 ダニエル君は自然を愛し、獣医になることを夢見て、幼い妹を可愛がる優しい少年だったという。

 男は一貫して無罪を主張していたが、事件から約3年を経た7月22日、裁判所はダニエル君に対する殺人と強姦にそれぞれ終身刑、性的暴行に懲役8年、さらに2005年に別の女性に対して行った強姦に懲役10年を言い渡した。現地メディアによると、判決の瞬間、被告席の男は涙を流していたという。

過去の犯罪歴にもかかわらず「野放し」に

 この事件が南アフリカで大きな反響を呼んでいるのは、犯行の残虐性だけが理由ではない。重要なのは、男が事実上「野放し」にされていた性犯罪者だったという事実だ。

 男は2005年、成人女性への強姦で有罪判決を受けたが、科されたのは実刑ではなく、3年間の更生プログラムへの参加だった。

「しかも男はこのプログラムから逃亡してるんです。その後にも強姦未遂の容疑をかけられたものの、告訴が取り下げられた経緯もあったといいます。2005年の事件の被害者であるキャレン・ブラウンさんは、男がプログラムを修了していなかった事実を、ダニエル君の裁判を通じて初めて知ったと語っています」(同前)

 ダニエル君の死後、新たな訴えも相次いだ。

 ダニエル君の母親を支援してきた人権擁護団体「Action Society」によると、別の父親から「自分の幼い子ども2人も同じ男から性的虐待を受けた」との相談が寄せられたというのだ。当時、虐待の事実が確認されたにもかかわらず、法的措置には至らなかったとされる。

 警告のサインは何度もあった。それでも、男が止められることはなかった。

手を取り合う被害者たち

 判決当日、Action Societyは公式Xに1枚の画像を投稿した。写っていたのは、ダニエル君の母親マリアさんと、2005年の強姦被害者ブラウンさんが手を握り合う姿。同じ男に人生を壊された2人の女性が法廷で手を取り合い、判決の瞬間を待っていた。同団体はその写真に添え、こう綴っている。

「いかなる判決も、奪われたものを取り戻すことはできない。だが2人は悲しみと不屈の決意で結ばれ、共に立ち上がった」

 2人には今後、男が仮釈放の審査対象となった場合、委員会に意見を述べる権利が認められたという。

 Action Societyは現在、国の重大な過失を問う民事・刑事訴訟の可能性を検討している。犯人には終身刑が下された。だが「なぜ防げなかったのか」という問いへの答えを、南アフリカの司法はまだ出していない。