エプスタインと若い女性(民主党資料より)

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 世界を震撼させた「エプスタイン事件」──米国の富豪ジェフリー・エプスタインが、長年にわたり多数の未成年少女を人身売買し、政財界の有力者ら世界のVIPに性的搾取させていたとされる未曾有の事件だ。

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 この事件の中心には、自家用ジェット機「ロリータ・エクスプレス」があった。全長40メートルにも及ぶ巨大な機体と豪勢な機内は「空のVIPルーム」とも呼ばれ、多くの被害少女たちが、性接待の舞台となった「ペドフィリアの島」に運ばれた。

 エプスタイン事件が凄惨なのは、暴力や脅迫ではなく、富や名声、そして「安心感」という心理的トラップにより少女を取り込んだ点にもある。少女性虐待ネットワークの構造と「ロリータ・エクスプレス」の役割を『エプスタイン文書で暴かれた世界の闇』(宝島社)より、一部抜粋して再構成する。(全5回の第1回)

全長40メートルを超えるロリータ・エクスプレスの機体

 ジェフリー・エプスタイン事件を語るうえで欠かせないのが、俗に「ロリータ・エクスプレス」と呼ばれる自家用ジェット機の存在である。機体は全長40メートルを超えるボーイング727型機で、一般的なプライベートジェットよりもはるかに大きく、エプスタインの膨大な資産と権力を象徴していた。

 機内は豪華に改装され、閉ざされた「空のVIPルーム」として機能していた。公開されたロリータ・エクスプレスの飛行記録から、ドナルド・トランプ、ビル・クリントン、アンドルー元英王子、俳優のケビン・スペイシー、クリス・タッカーらの搭乗が取り沙汰されたほか、ビル・ゲイツとの接点もたびたび報じられている。

 飛行記録や交友の有無そのものが直ちに違法行為への関与を示すわけではないが、疑惑の目を向けられているのは事実だ。

 この機体は、ニューヨーク、フロリダ州パームビーチ、ニューメキシコ州のゾロ牧場、米領ヴァージン諸島の私有島など、エプスタインの主要拠点を結ぶ足として利用され、被害少女たちを各地へ運ぶ役割も果たした。

大富豪や有名人が出入りする華やかな空間

 ロリータ・エクスプレスの内部にはベッドや大型のソファなどが設置され、機内で性虐待行為が行われていたとする証言もある。さらに、この機体は被害少女たちに社会的地位や富を誇示する「演出装置」でもあった。大富豪や有名人が出入りする華やかな空間を共有させることで、少女たちに特別な世界へ招き入れられたかのような錯覚を抱かせ、警戒心を弱めるような効果があったと推察されている。

 このように、少女たちを性虐待ネットワークに取り込む手口は、恐怖心で支配するよりも、金銭や安心感を与える形で進められたとされる。いわゆる「セクシャル・グルーミング(性的手なずけ)」だ。

 家庭環境や経済状況に困難を抱える少女が主に狙われ、最初は比較的ハードルの低い依頼や報酬の提示から接触し、そこから支配関係を深めていった。

 さらに、知人の少女を紹介すれば報酬がもらえる仕組みにより、被害の輪がネットワーク状に広がっていった。こうした構図は、日本では近年問題視されている「闇バイト」事件と同様に、弱い立場の若者を取り込んで被害を再生産していく搾取システムと似ている。

少女たちの「勧誘役」を担ったギレーヌ・マクスウェル

 この性虐待ネットワークの中心で少女たちの「勧誘役」を担ったとされるのが、エプスタインの長年のパートナーである、ギレーヌ・マクスウェルだった。上流階級出身の英社交界でも名を知られた彼女の存在は、少女や周囲の大人たちに安心感を与える"窓口"となった。同姓の著名なセレブ女性が間に入ることで、危険な立場であるという印象が薄れ、心理的ハードルが下がったとみられる。エプスタイン事件の異様さは、個人の異常性だけではなく、富・名声・人脈・女性の勧誘役といった要素が組み合わさり、警戒心を鈍らせる構造にあった。

 その象徴だったロリータ・エクスプレスは、空飛ぶVIP空間であると同時に、被害少女を外部から切り離す装置でもあった。現在、機体は米ジョージア州ブラウンズウィックの空港へ移され、退役・解体が予定されながらも、長く置かれたままとなっている。かつて富と権力を誇示したその機体は、今なお事件の異様さを静かに示している。

(第2回に続く)