〈手足口病が急増〉「手・足・口だけとは限りません」全身に発疹、治った後に爪が剥がれることも…小児科医が教える受診の目安
夏に流行する子どもの感染症「手足口病」の患者が、全国で増え続けている。2026年は、手足だけでなく顔やお尻、背中などにも発疹が広がりやすい「コクサッキーウイルスA6型」が多く検出されているという。どのような症状に注意し、いつ医療機関を受診すべきなのか。SNSでも子どもの病気について発信する小児科医のりんごさんに聞いた。
「本当に手足口病?」全身に発疹が広がるケースも
夏に子どもを中心に流行する手足口病の患者が、今年も全国で増えている。
国立健康危機管理研究機構が公表した感染症発生動向調査週報によると、2026年の手足口病は第20週以降、定点医療機関当たりの報告数が増加。第26週(6月22~28日)には、全国約2000か所の小児科定点から1万396例が報告され、定点当たりの報告数は4.61となった。
全国的な推移はおおむね例年と同様で、現時点では過去に見られたような突出した大流行とはされていない。ただし、地域差は大きく、第26週には島根県で定点当たり20.45、大分県で10.94、佐賀県で9.42を記録。夏休みを前に、家庭や保育園、幼稚園などで警戒が必要な状況が続いている。
今年の症状には、どのような特徴があるのか。SNSでも手足口病に関する発信を積極的にしている小児科医のりんごさんは、原因となるウイルスの種類に注目する。
「2026年は、手足口病の患者から『コクサッキーウイルスA6型』、通称CA6が多く検出されています。ただし、CA6だけが原因ではなく、エンテロウイルス71型など、ほかのウイルスも確認されています」(小児科医のりんごさん、以下同)
手足口病は一つのウイルスによって起こる病気ではない。コクサッキーウイルスA6型やA16型、エンテロウイルス71型(EV71)など、複数のウイルスが原因となる。2026年7月1日時点で、主にCA6とエンテロウイルス71型が検出されている。
受診を急ぐべきサインは「水分が取れない」
一般的な手足口病では、その名の通り、手のひらや足の裏、口の中などに小さな水疱が現れる。しかし、CA6による手足口病では、発疹がより広い範囲に出ることがあるという。
「お子さんによって症状の出方は異なりますが、CA6では、お尻や太もも、お腹、背中、さらには顔の周囲まで、大きな水疱や赤みが広がることがあります。保護者の方から『本当に手足口病なのですか』と驚かれることもあります」
見た目の激しさに戸惑う保護者は少なくないが、多くは時間の経過とともに自然に治まる。ただし、水ぼうそうなど別の病気との判別が必要になることもあるため、自己判断せず、心配な場合は通常の診療時間に小児科を受診してほしいという。
さらに、症状が治まった後に現れる変化にも注意が必要だ。
「手足口病が治ってから数週間から2カ月ほどたった頃、爪の根元に横線が入り、その後、爪が根元側から剥がれ落ちることがあります。これは『爪甲脱落症』と呼ばれ、CA6による手足口病の後に見られることがあります」
多くの場合、剥がれた爪の下には新しい爪が生えており、自然に伸びてくる。ただ、手足口病の症状が治まってから時間がたって現れるため、保護者が関連に気づかず、突然の爪の変化に驚くケースもある。
CA6による手足口病の回復後に爪甲脱落症が起こることは、国内外で報告されている。一方で、爪が剥がれたすべてのケースを手足口病によるものと断定できるわけではない。痛みや腫れ、化膿がある場合や、爪の変形が続く場合は医療機関への相談が必要だ。
手足口病には、ウイルスを直接退治する特効薬や抗ウイルス薬はない。治療は、痛みや発熱などを和らげながら回復を待つ対症療法が中心となる。
そのため保護者が迷いやすいのが、「どの段階で病院へ連れて行くべきなのか」という判断だ。
「発疹があっても、機嫌がよく、食事や水分が取れ、普段通りに遊べているなら、夜間救急へ駆け込む必要はありません。心配であれば、翌日の通常診療の時間帯に受診してください」
一方、日中でも早めの受診が必要なのが、口の痛みで水分を取れなくなった場合だ。
「口の中にできる水疱や潰瘍は強く痛むことがあります。水やお茶を嫌がり、ストローや哺乳瓶も受けつけない状態が続くと、脱水症になる危険があります」
特に注意すべきなのは、半日以上おしっこが出ていない、泣いても涙が出ない、口の中が乾いている、目がうつろ、ぐったりして元気がないといった症状だ。
看病する大人への感染にも注意
口の痛みが強いときは、酸味や塩分の強い食べ物、熱い料理を避け、ゼリーやプリン、冷ましたスープなど、刺激が少なく飲み込みやすいものを少量ずつ試すとよい。ただし、水分をほとんど受けつけない場合は、点滴が必要になる可能性もある。
さらに、夜間であっても救急外来を受診すべき症状がある。
「高熱が続く、何度も吐く、視線が合わない、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんや体全体の震えが見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください」
手足口病は多くの場合、数日で回復する。しかし、まれに髄膜炎や脳炎、心筋炎などの重い合併症を起こすことがある。厚生労働省も、高熱が出る、発熱が長引く、嘔吐する、頭を痛がる、視線が合わない、呼びかけに答えない、呼吸が速く苦しそう、水分が取れず尿が出ない、ぐったりしているといった症状を受診の目安としている。
感染を家庭や園で広げないためには、どのような対策が有効なのか。
「手足口病の原因となるエンテロウイルスは、一般的なアルコール消毒だけでは十分な効果が得られにくいウイルスです。大切なのは、流水と石けんによる丁寧な手洗いです」
感染経路には、せきやくしゃみによる飛沫感染、水疱や鼻水などに触れる接触感染、便に含まれたウイルスが手を介して口に入る糞口感染がある。
特に、おむつ交換やトイレの介助、鼻水を拭いた後は、石けんを使って十分に手を洗う必要がある。症状が治まった後も、便からは比較的長期間ウイルスが排出されるため、登園を再開した後も手洗いを続けることが重要だ。
「洗面所やキッチンのタオルを家族で共用することも避けてください。ペーパータオルを使うか、一人ずつ専用のタオルを用意しましょう」
看病する大人への感染にも注意が必要だ。大人は感染しにくいとされるものの、発症すると、手足の発疹に強い痛みが出たり、足の裏が痛くて歩きにくくなったりする場合がある。
「おむつを処理するときは、必要に応じて使い捨て手袋を使用し、外した後にも必ず手を洗ってください。子どもを守るだけでなく、看病する保護者自身を守るという意識も大切です」
「手足口病」という名前から、手、足、口だけを確認して安心するのは早い。発疹が全身に広がることや、回復後に爪が剥がれる場合があることを知っておけば、突然の変化にも落ち着いて対応できる。
そして、発疹の数や見た目以上に注意したいのが、子どもの全身状態だ。水分を取れているか、尿が出ているか、呼びかけに普段通り反応するか。日々の小さな変化を見逃さないことが、重症化の兆候を早期に捉え、適切な受診につなげる第一歩となる。
取材・文/集英社オンライン編集部

