【A4studio】サイゼリヤがあえてSNSをやらない理由、「バズることがリスクになる」独自の経営戦略があった

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人気ファミレスチェーンの「サイゼリヤ」が、今年からモーニングメニューの提供店舗を徐々に拡大。「朝サイゼ」と銘打っているこのモーニングサービスは、2024年6月から都内の店舗で試験的に開始し、今年6月22日時点では東京・埼玉・千葉など関東圏を中心に22店舗で展開している。

しかし、『週刊女性』の6月4日付の記事で、朝サイゼが“ガラガラ状態”だと報じられているのだ。一部ネットの声では“サービスの周知不足”とも指摘されているが、公式SNSなどを運用していないサイゼリヤには、何かしらマーケティングにおける欠点があるのだろうか。

今回は企業のメディア戦略やブランディングなどに詳しい「新恵社」代表取締役の岡健作氏に解説していただいた。(以下、「」内は岡氏のコメント)

記事前編は【「サイゼリヤ」モーニングを本格導入も「ガラガラ状態」か…「予想外のウラ事情」があった】から。

サイゼリヤ広告費をかけないワケ

サイゼリヤは企業の公式SNSをほとんど運用しておらず、メディア取材もあまり受けないなど、宣伝広告に消極的なことで有名だ。派手な広告を打ち出さずとも、ファミレス業界において上位の売上と人気を確立している背景にある、サイゼリヤならではのマーケティング設計について、岡氏はこう解説する。

「そもそも広告とは、商品自体のクオリティや価格設計などが消費者にとってあまり魅力的ではない、つまり商品としては消費価値が弱いものを売り出すためのもの。そして広告・宣伝は、マーケティングにおいては最終段階の工程になります。

サイゼリヤの場合は、上流工程である商品や価格設計といった初期段階にこだわって、盤石なシステムを作り上げているため、派手な広告費を打たずとも、おのずと商品やサービスの魅力に惹かれて客足が絶えない仕組みづくりができているのです」

そしてサイゼリヤがSNS運用などに消極的な理由は、過去の“苦い経験”があったからだという。

サイゼリヤは1994年の100店舗達成時に、テレビ番組で紹介されたことがあります。この影響で客数は一気に2〜3倍ほど伸びたのですが、急激な変化によって店舗のオペレーションが追いつかず、サービスのクオリティが著しく低下して、結果的に客足が途絶えてしまったという苦い経験があるのです。こうしたサイゼリヤのトラウマは、あえて積極的な広告を打たないという現在の戦略に繋がっているとともに、オペレーションなどの店舗設計の重要性を意識するきっかけになったとも考えられるでしょう」

一般的な外食チェーンの広告費は売上のおよそ3〜8%が目安だと言われることが多いが、サイゼリヤ広告費は売上のうちわずか0.3%程度とかなり低い割合となっている。朝サイゼの展開における慎重な姿勢も、こうした過去の経験から学んだサイゼリヤ流の経営スタイルと考えられるだろう。

サイゼリヤのあえて「バズらない」戦略

ではSNS運用に向いている飲食チェーンと向いてないチェーンの違いとは何なのだろうか。

「新しい商品を次々にリリースする飲食店や、イートインに加えてテイクアウト需要も大きい飲食店の場合は、広告を積極的に打つ必要があります。

例えばハンバーガーチェーンのマクドナルドは広告にかなり力を入れていますが、季節ごとの商品をリリースするなど、商品ラインナップの変化が激しいことから、いかに新商品の情報を周知するかが、そのまま売上に直結するからです。またテイクアウトの需要も大きいので、店舗のキャパシティを超える範囲で広告を大々的に打っても、機会損失に繋がることはあまりないでしょう」

一方サイゼリヤの場合は、SNS運用など自ら積極的に広告を打つタイプの飲食チェーンではないと岡氏は語る。

サイゼリヤに関して言うと、新商品を頻繫にリリースするというよりも、すでにあるメニュー内容を改良したり、店舗設計を見直してコストダウンしたりすることが多く、消費者に目新しい商品価値をアピールする機会が単純に少ないのです。

さらにイートイン利用のみということで、店舗のキャパシティを超える客数が殺到することは、サービス品質低下を招くため、なるべく避けたいといった事情もあります。これらを考慮すると、大々的に広告を打つことは、サイゼリヤのような企業にとってはむしろリスクになりえるのです」

岡氏は今後の朝サイゼの展開について、「このまま少しずつ実施店舗を増やしつつ、盤石な売上設計や運営システムが整ったタイミングで全国展開していくのではないか」と予想する。

――朝サイゼが現在“ガラガラ状態”という裏には、実はサイゼリヤのあえて“バズらない”戦略があったということだ。すでに消費者からの期待値が高い朝サイゼは、今後どう展開していくのか。引き続き注目していきたい。

(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)

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