コメダ、ココイチや世界の山ちゃんなどに続いて、あの“名古屋メシ”が、首都圏に打って出る。東海地方を中心にラーメン店を展開するスガキヤの公式発表に、歓迎の声が相次いでいる。

【写真】「ラーメン店」だけどスイーツも名物…スガキヤの人気メニューをじっくり見る


スガキヤ公式Xより

 スガキヤは、戦後の創業から一貫して東海地方を中心に出店してきた。「名古屋のソウルフード」とも呼ばれる存在であり、「あの味でないと物足りない!」という熱烈なファンに支えられている。

 一方で、過去2回の関東進出は「失敗」に終わっており、ここ数年でも北陸から全撤退するなど、かなり苦しい時期が続いていた。食べ慣れたファンでも、今回の発表を受けて「この味が関東で本当に愛されるのか?」「東海にいたほうが良いのではないか」と感じる方も多いようだ。

 果たしてスガキヤの関東進出は「三度目の正直」となるのだろうか。

スガキヤ味」と称される独特のラーメンと、スイーツも特徴

 そもそもどのようにしてスガキヤが名古屋のソウルフードとなっていったのかを振り返っていこう。

 スガキヤのラーメンといえば、数種類の魚介と豚骨スープをミックスした白いスープと、煮込まずに蒸すという独特な製法のあっさりチャーシューが特徴だ。しかし、そう事細かに解説する人々は少ない。「スガキヤスガキヤ味」と称されることが多いのだ。それほどに独特な一杯となっている。

 もう1つのスガキヤの定番が「スイーツ」だ。そもそも1946年の創業当時はぜんざい・まんじゅうなどを提供する店舗(当時の屋号は「甘党の店」)だった。歴史的な土台である「甘味処」の名残りを今もメニューに残している。

 レギュラーサイズ190円のソフトクリームからクリームぜんざい・あんみつ・フラッペなど充実している。提供時のシステムとして、ラーメンの完食後にスイーツを出してもらうことも可能だが、ラーメンとソフトクリームを同時に食べる高校生もいるのだとか……。そんな「ラーメン+甘味」が日常生活に違和感なく溶け込むほど、スガキヤは名古屋の日常生活に溶け込んでいるのだ。

 ラーメン店+甘味処としてあまりにも独特であるため、独特の“スガキヤワールド”にハマった常連の人々は「ラーメンを食べたいから(他と比較して)スガキヤを選ぶ」のではなく、「スガキヤに行くのは確定。あとはオプションを頼むかどうか」で悩むという。

「ラーメン1杯430円」を中心に、とにかくコスパがいい

 スガキヤが名古屋のソウルフードとなり得た最大の要因は、いち早くドミナント(集中)出店ができたが故に「名古屋での特別な存在になれた」ことだろう。

 1969年に「ほていや(現在の「ユニー」)」へ出店したのを皮切りに、コストが低いフードコートへの出店へ一貫して力を注いできた。まだほとんどのラーメン店がチェーン展開など考え付いていなかった時代に、名古屋や東海地方を中心に、100店・200店と着々と店舗数を増加させた。

 その結果、ほとんど例を見ない「フードコート特化型チェーン店」となっている。どのスーパーのフードコートにもスガキヤがある、といったような現象が、名古屋や東海地方で生じたわけだ。

 東海地方出身の方いわく「名古屋の人間の青春時代には、もう強制的にスガキヤの存在が刷り込まれている。スガキヤの存在はもはや、空気や水と同じ」とのこと。確かに、一部地域だけのピンポイントで、ここまで浸透した外食チェーンはない。

 日本マクドナルドの創業者・藤田田氏が提唱していた「人は12歳までに食べたものを、一生食べ続ける」という行動原理に基づけば、名古屋(と東海)の人々だけが「スガキヤ=思い出の場所」として記憶に残っていることになる。だからこそ、「名古屋のソウルフード」として名前が上がるようになったのだ。

 スガキヤが熱狂的なファンを味方につけているもう1つの理由として「おトク感」も挙げられる。「ラーメン1杯430円」という安さもさることながら、全体的にコスパがいいのだ。

 もっとも安いラーメンであっても、肉・メンマ・ネギがしっかり目に乗っている。注文に迷った人々向けの「まるごとミニセット」(ラーメン・五目ごはんに、カップソフトクリーム・サラダがすべてミニサイズで付いているセット)の万能感と安さ(630円)も嬉しい。

 前述したようにフードコート出店が多いことから「安い上に、広いフードコートでダべれる」アドバンテージがあり、消費者にとっては価格以上にしっかりおトク感を持ちやすい。

 まとめると、名古屋や東海地方の人々にとって、スガキヤは店舗が高密集しているが故に、何かと「思い出の味」になりやすく、おトク感もあるからこそ、ピンポイントにソウルフードとして定着できた。

 ただ、首都圏の人にとってスガキヤはあまり馴染みがない。名古屋の人に愛されている理由である「思い出の味」という要素には当てはまらないはずだ。

過去2回も「関東撤退」した苦い経験

 スガキヤが首都圏に初めて出店したのは、1973年とされる。当時はGMS業態(総合スーパー。小売・飲食・衣料などが何でも揃う業態)の全盛期であり、スガキヤは各地へのフードコート出店で、首都圏でも50店規模まで店舗網を拡大できた。

 しかし10年、20年と歴史を重ねると、おなじ“名古屋閥”のユニーや、関係の深かったダイエーを含めて、店ごと不振に陥るケースが出てきた。こうなると、スガキヤがいくら頑張っても巻き込まれて不振に陥ってしまう。

 もちろん黒字店舗はあったものの、チェーン店としては一定数の店舗数がないと、コストが下がらず採算を取りにくい。結果、1999年までに首都圏から一度目の全面撤退に踏み切った。

二度目の進出も、2年で撤退……3回目はうまくいくのか?

 その後、2004年に東京・高田馬場へと実験店舗を出店したこともある。当時300円だったラーメンだけでなく、味噌カツとエビフライをトッピングした「名古屋丼」や、首都圏向けの「醤油ラーメン」を看板メニューに加えるなど、スガキヤらしからぬ安さにこだわらない戦略で勝負を賭けた。しかし、こちらも2年後の2006年には撤退に至っている。

 スガキヤの過去の首都圏撤退の要因をまとめると、一度目は「出店先のテナントの衰えとともに衰退」「低価格のスガキヤをそのまま輸出してコストを維持できず失敗」、二度目は「独自の商品を基にした高単価戦略が受け入れられず失敗」といえるだろう。

 果たして三度目の首都圏進出は、一度目・二度目の失敗と同じ轍を踏むことなく、成功できるのだろうか?

ライバルは幸楽苑でも、日高屋でもない…名古屋発「ラーメン1杯430円」の激安チェーン『スガキヤ』は関東民から受け入れられるのか?《この秋に三度目の関東進出予定》〉へ続く

(宮武 和多哉)