雑誌の連載、テレビのレギュラー出演、商品開発や食のイベント――寝る間も惜しむように働く、東京・恵比寿の予約が取れない日本料理店「賛否両論」店主・笠原将弘さん(53)が出版した書籍は、通算100冊以上。ここでは最新刊「笠原将弘のご自愛めし ちゃんと食ってるか!?」(文藝春秋刊)より一部抜粋し、玄米と料理が大好きな健康志向の清水ミチコさんとの特別対談をお届けする。

【画像】ツアー中だから喉が嗄れることが最近多くて…日本料理店「賛否両論」店主・笠原将弘さんが清水ミチコさんのために考案したレシピ


撮影 志水隆/文藝春秋

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三十年来の清水ファン「うれしくなっちゃってラジオの話をいっぱいしたら『気持ちわるいね』って(笑)」

笠原 清水さんのラジオ、いつも聴いてます。昔は「清水ミチコのミッチャン・インポッシブル」を聴いて笑いながらみんなで仕込みしてました。

清水 よく聴いてくれてるね。ありがとう。

笠原 僕は三十年来の清水さんのファンなのですが、十五年くらい前にテレビのレギュラー番組で初めて清水さんにお会いしたときに、うれしくなっちゃってラジオの話をいっぱいしたら「気持ちわるいね」って(笑)。

清水 そうだそうだ(笑)。そのあと、番組で「一番尊敬している人は誰ですか」って聞かれたときに、「清水ミチコさんです」って言わせるという流れをつくったな。

笠原 しかも翌週の「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」で僕のことを話してくれたんですよ。「テレビによく出てる若いシェフが、(清水さんの)ラジオをすっごく聴いててマニアックで気持ちわるかった」って。

清水 そんなこと言わないよ(笑)。もうちょっと言い方が。

笠原 それが僕はうれしかったんです。

清水 まさかこんなビッグになるとは。よかったね。

笠原 よかったですよ。清水さん、いまツアー中ですよね。やっぱり大変ですか?

清水 喉が嗄れることが最近多くて。足が痛いとか、腰が痛いとか、まあいろいろあるんだけど、ツアーは好きだから精神的には楽しい。

喉の粘膜にいい「鶏 長ねぎ ほうれんそう みぞれ煮」

笠原 今回、清水さんからのお悩みを受けて考えたのは、「鶏 長ねぎ ほうれんそう みぞれ煮」。まず喉の粘膜にいいといわれるほうれんそうをゆでます。

清水 ゆでるときは根元から入れる、と家庭科で教わりました。

笠原 清水さんはもともとパティシエで、家庭科の先生の免許もお持ちなんですよね。

清水 そうそう、さすがファンだねえ。

笠原 気持ちわるいです(笑)。

清水 ほうれんそうをゆでるときに塩は入れるの?

笠原 パスタのときは入れますが、野菜は入れなくても大差ないかなと。ほうれんそうはゆでて絞ったあとに「しょうゆ洗い」といって、日本料理ではしょうゆをまぶしてもう一回絞るんです。これで一気に水っぽさがなくなります。

清水 (一口食べて)さっとゆでただけだから甘みが出るし、歯応えもいい。いつもゆですぎなんだなあ。

笠原 喉にいいといえば、大根、長ねぎ、生姜。はちみつも炎症を和らげてくれます。すべて喉にいい食材です。

清水 あれ? それは何してるの?

笠原 鶏むね肉にしょうゆをもみこみました。むね肉は疲労回復にいいんです。皮はだしがわりにとっておいて、肉のほうに一つ一つ片栗粉をまぶします。

清水 えー、面倒くさ(笑)。

笠原 面倒くさいですよ(笑)。肉のうまみを閉じ込めて、食感がぷるっとなって喉にやさしい。二回にわけて火を入れるのでぱさつかないし、この調理法ならみんなおいしいって言います。

清水 本当だね、鶏肉がほろっとしてやわらかい。はちみつが入っているのに甘くなくて、明後日くらいに喉に効きそう。

笠原 明後日(笑)。今回は喉にいいというテーマでレシピを考えましたが、木の子や白菜を入れたり、うどんを入れてもおいしいです。

鶏の皮を煮物に入れるとコクが出る

清水 鶏の皮といえば、笠原さんのYouTubeチャンネル(「【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道」)で皮は捨てるんじゃないでしょうか、みたいなことをやってたね。

笠原 鶏の皮を使うレシピを紹介した回もあります。丸めてラップして冷凍しておけば、好きな人なら皮だけ炒め物にしたり、凍ったまま煮物にちょっと加えたら、コクが出るじゃないですか。大根を煮るときとか。

清水 ぜんぜん違うよね、煮物に脂のあるものを加えると。

なかなかむずかしいZ世代「頭もいいのにメンタルが。すぐ辞めますって。」

笠原 清水さんもYouTubeチャンネル(「清水ミチコのシミチコチャンネル」)で料理をつくられていましたよね。ふだんから料理をするとストレス解消になったりしますか?

清水 そう、すごいなる。相当なストレス解消になる。

笠原 玄米もお好きだと。

清水 玄米とか納豆とか、やっぱり和食はよくつくる。実際においしいし、飽きないし。「体にいいもの」って思ってるから、子どもにも夫にも焼き魚、納豆、みそ汁みたいなものばっかり出してたら、ある日仕事が忙しくて「今日はコンビニになる」って伝えたら、ものすごい喜んでた(笑)。

笠原 ご家族にも「体にいいもの食べなさい」とか言いますか?

清水 うん、そう言われるとまずく感じちゃうんだろうね、人間。

笠原 僕も若いスタッフたちに「魚食べろよ」と言うような年齢になりました。

清水 魚食べないからね、若い子はね。魚は面倒っていうイメージがあるよね、肉と違って。やっぱり料理界も令和世代というか、Z世代はなかなかむずかしいですか。

笠原 むずかしいですよ。Z世代しかいないです、ここ(「賛否両論」)には。

清水 そうなんだあ。

笠原 僕が五十代であとはみんな二十代ですよ。親子でやっているようなもんだから、気を遣いますよ。

清水 そうだよね、すぐ傷つくし。

笠原 だから下手なこと言えない。

清水 言えないし、みんないい子じゃん、基本的に。

笠原 そう、みんないい子。

清水 頭もいいのにメンタルが。すぐ辞めますって。弱いんだよなあ。

笠原 そう、やってみたら、思ってたのと違いましたって。

清水 そうそうそう、知らないよって(笑)。

笠原 世の中そんなもんだよって言いたくなりますけどね。

清水 それを言っちゃうとまたね。芸人の世界もそうだね。

菜の花の緑と、ベーコンのピンクで春っぽい「春のチャーハン」

笠原 もう一品は、世代を超えてみんな大好きなチャーハンをつくろうと思います。新生活にふさわしく、その名も「春のチャーハン」。いろんなつくり方がありますが、卵は卵黄と卵白に分けて、卵黄をあったかいごはんに混ぜちゃう。

清水 えー、こんな工程見たことない。幸せな色。

笠原 白身はよく火が通ったほうがおいしいので先に焼いて、そこに卵黄入りのごはんを加えてほぐしながら白身と混ぜるように炒めます。

清水 フライパン振りたくなる(笑)。

笠原 振るのは最終的に、具材とか調味料が入ったときに、全体を混ぜるためにはやったほうがいいですけども、ごはんをぱらぱらに炒める工程のときは、ひたすらほぐすように炒めたほうがいいと思います。

清水 木ベラでさくさく切るように炒める感じね。(じゃああああ、かんかんかん)おいしそう、これだけでも。

笠原 冷やごはんでつくるイメージがあるかもしれませんが、あったかいごはんのほうが火が早く通ります。チャーハンはごはんをおいしく食べる料理なので、基本的に具材を細かく、入れすぎないのもポイントです。

清水 筍ごはんもそうだね。

笠原 そうです、筍が大きいならふつうにおかずとしてごはんと別に食べたほうがおいしいじゃないですか。チャーハンはあくまでもごはんが主体なので、具材がいっぱいのほうが豪華には見えるけど、食べたときにごろごろして口の中に違和感が。菜の花だけはよりおいしくするために、炒め合わせる前にフライパンで火を入れて焼き目をつけます。

清水 菜の花はそのまま食べてもおいしそう。

笠原 おいしいですよ。オリーブオイルをかけて食べれば洋風になりますし、しょうゆとおかかで食べれば和風になります。今回はチャーハンなので細かく切って使いました。

清水 ほんとに細かい。

笠原 長ねぎは最初に入れてもいいんですけれども、焦げやすいし、最後に入れて甘みを出すくらいがおいしいと思います。あとは、和風寄りに仕上げたいので、塩昆布。菜の花と相性がいいんです。

清水 へええ、いい色だね。

笠原 菜の花の緑と、ベーコンのピンクで春っぽいかなと。

清水 こういう卵の扱いとか焼き方とか、自分で考えたの?

笠原 そうです。

清水 さすが料理人。誰かに頼まれたからじゃなくて、好きだからやってるんだよね。あたしのライブと一緒だね。

※記事内のレシピは「笠原将弘のご自愛めし ちゃんと食ってるか!?」に掲載されています。

撮影 志水隆/文藝春秋

(中岡 愛子)