八田與一容疑者(写真:大分県警)

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大分県別府市で大学生2人が車にはねられて死傷した事件から丸4年。6月29日、東京・JR渋谷駅前では、大分県警や支援団体が、殺人容疑などで重要指名手配されている八田與一容疑者(29)に関する情報提供を呼びかけた。

「この日は渋谷のほか、北海道、神奈川、大阪、沖縄など全国11都道府県で情報提供を呼びかける街頭活動が一斉におこなわれました。今回、大分県警は八田容疑者が運転していたとみられる車の新たな防犯カメラ映像を初めて公開。配られたチラシには、新公開の八田容疑者の全身とサングラス姿の写真も掲載されています」(社会部記者)

事件があったのは、2022年6月29日午後7時45分頃。別府市の県道で、信号待ちをしていたバイク2台に猛スピードで走ってきた軽自動車が追突し、大学生1人が死亡、友人1人がけがを負った。

「大分県警は当初、『ひき逃げ』(救護義務違反)で捜査していましたが、現場にブレーキ痕がなく、時速80?100kmのスピードで故意に追突したとみられる状況から、明確な殺意があったと判断。遺族の刑事告訴や署名活動もあって、容疑を殺人・殺人未遂に切り替えて八田容疑者を重要指名手配し、行方を追っています。

八田容疑者はスマホや財布を持たず、裸足で逃走しており、当初、逮捕されるのは時間の問題と思われていました。しかし、別府湾に面したヨットハーバーでTシャツを脱ぎ捨てたのを最後に、その後の足取りは途絶えたままです。事件発生から4年が経過した今も逮捕には至っていません」(同前)

大分県警の発表によれば、6月25日までに寄せられた八田容疑者に似た人物の目撃情報は4年間で1万2370件にのぼるが、そのうち関東での目撃情報が半分近くを占めるという。八田容疑者は関東に潜伏しているのか。あるいは“見逃されている”逃亡先があるのかーー。神奈川県警元刑事でジャーナリストの小川泰平氏は、こう推理する。

「目撃情報の半数近くが関東に集中しているといっても、八田容疑者が関東に潜伏しているとは限りません。関東に多いのは、そもそも人口が多いということと、メディアが関東に多く、関東の人がそれだけこの事件に関心を持っているということでしょう。しかし、八田容疑者に似た人物の目撃情報がいくらあっても、単に、よく似ている別人だったというケースも多い。情報が多いだけでなく、どれだけ有力なものか、が重要ですね」(以下、カッコ内は小川氏)

それだけ情報内容を精査するのは難しいということでもあるが、「あえて言えば」と前置きして、小川氏は考えられる逃亡先をあげた。

「一つ言えるのは、人がたくさん住んでいて他人に干渉しないところなら身を隠しやすいということです。たとえば、大阪の西成、横浜の寿町、東京の山谷といった、簡易宿泊街にいる可能性はあると思いますね。逃亡して住む家を借りるにしても、不動産業者を介さなければいけないし、生活のために生活保護を受けるのも難しい。こうした街で、日雇い仕事で現金を稼いで生活をしているなら、身元もバレないし、隠れるには絶好の場所なんです。

あるいは、地方なら、最近増えている“空き家”に住んでいる可能性も考えられる。当然、電気とかガスはないですが、雨露をしのぐことはできる。空き家に住んで、生活費は泥棒をして稼ぐというケースもあるにはあります。とはいえ、4年間もそういう生活はできないでしょうから、都会のドヤに住んでいるほうが、可能性としてははるかに高いと思います」

もちろん、警察も簡易宿泊施設の多い街を捜査しているはずだという。

「こうした指名手配犯を探す場合は、真っ先にあたります。当然、今回も警察は調べているはずですが、完璧に調べるのは難しい。人の出入りも激しいし、横浜の寿町で5?6000人、大阪の西成なら2?3万人が住んでいる。そのなかから探さなければなりませんから」

なにより求められるのは、粘り強い継続的な捜査だ。

「1回行ってチラシを置いて、それで終わりではなく、繰り返し、繰り返し捜査を続けることが必要です。チラシを配りっぱなしでは、いい情報を得られません。せめて何カ月かに1回は顔を出して声をかけることが必要です。

あるいは、情報提供をしてくれた人に直接会って、どういうところでどういう格好をしていて、どんな感じだったのかを聞いて、それを一つひとつ潰していく。そうやって、本人が出没しているところを絞っていって『こいつだろう』と目星をつけたら、たまたま顔が似ていたというケースも、よくあります。こういう情報提供の内容を潰していくことも必要だし、八田容疑者の生い立ちから情報をたどって、関係者にひとつひとつ当たっていくことも必要です」

問題は大分県警に、そうした全国規模での捜査をおこなう余力があるかどうかだという。

「一般の人は、この事件では全国の警察が八田容疑者の捜査に当たっていると思うかもしれませんが、警視庁や神奈川県警が主導的に捜査しているわけではありません。

それぞれ、自分のところにも指名手配事案がたくさんあるので、そんな暇はないんです。もちろん、捜査共助というものがあるから、たとえば、有力な情報が東京から来れば、東京の警視庁の捜査員に行ってもらったりすることはある。ただその場合、別に手を抜いているわけではなくても、言われたことしか聞いてこない傾向があります。そこで、もう一歩、もう二歩、深掘りした話を聞いてみたいわけですが、直接担当した刑事とそうじゃない刑事の違いは、どうしても生まれてしまいます」

粘り強い捜査を続けるには、どうしても組織の限界がある。

「大分県警は、決して大きな組織ではありませんからね。粘り強い捜査を全国で続けることがどれぐらいできるのか。たとえば東京で有力な情報があったら、1カ月間程度は捜査員が東京に出張して、情報をひとつひとつ潰さなければいけない。そこまで可能な人員がいるかどうか。大分県警は、この指名手配捜査で専従班を作っているようですが、とにかく人と予算を投入することが大切です」

なぜ1人の人間をこれほど長く見つけられないのかーー。遺族の悲痛な叫びが、捜査関係者の思いでもあるはずだが……。