「継ぎ足し続けるから不衛生」は誤解…「呼び戻しスープ」の元祖店が明かす、とんこつラーメン1杯への《凄すぎるこだわり》

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1990年代以降、全国的な人気を得て久しい「とんこつラーメン」。

博多のご当地ラーメンとして知られるが、とんこつラーメンは、福岡市から30kmほど南に位置する久留米市で誕生している。

そんな久留米ラーメンの雄として名高いのは「呼び戻し」というスープの製法を名付けたことでも知られる「久留米・大砲ラーメン」。

実食の様子は、前編記事『まるで「聖火リレー」…スープを継ぎ足し続ける「呼び戻し製法」の元祖店で味わう《究極のとんこつラーメン》』の通り。

今回は取締役社長の香月望来氏に、伝統の「呼び戻し」スープについて語ってもらう。

「呼び戻し」は職人の経験が支える“生きたスープ”

現在、とんこつを主力メニューとするラーメン店は全国に数千あるとも言われている。その中で、「久留米・大砲ラーメン」は「呼び戻し」と言われる製法でスープを作っている。

これは、創業以来70年以上釜のスープを決して空にすることなく、熟成されたスープに別の釜で取った新しいスープを継ぎ足し続ける作り方。現在、この製法を使う店は少数派だが、その背景には、管理の難しさやコスト面での負担があるという。生き物ともいうべき呼び戻しスープの管理技術は、どれほど難しいのか。

1時間に100杯出る時と10杯しか出ない時だと、当然、釜の中のスープへの影響も全然違いますよね。具体的には、釜に入っている水分量と骨のバランス、乳化の度合いや濃度が変化します。なので、香りやスープの色、湯気の立ち方等を見ながら継ぎ足しを行い、アドリブ的に対処し続けなくてはいけません」(香月望来氏、以下「」も)

こうした特徴から、レシピやマニュアルを作ることができず、職人の目利きと経験に支えられた感覚に任されている。

呼び戻しスープを、お客様に出せるレベルで管理できるようになるには5〜10年かかります。私も100%完璧かといえばそうではないですし、100%の人は存在しないと思います。だから、多店舗展開が難しいのです

なぜ非効率な製法を守るのか。香りと鮮度に宿る違い

レシピもマニュアルもなく、目利きと感覚に頼るスープ。そうなると、店舗ごとに味がバラけてしまうリスクが生まれるはずだ。その点について、香月氏はどのように考えているのか。

もちろん、まったく同じ味を出すのは難しいです。ただ、各店でスープを見る社員に課しているのは、『絶対にこれ以下にしてはいけない』というストライクゾーンの設定です。例えば、ど真ん中を目指して、少しインサイドやアウトサイドにズレることはある。これは微量ながら私でもまだあります。それを合格点のブレの中で収められる人だけに店を任せています

チェーン展開する飲食店では、運営やマネジメント能力を重視するケースも少なくない。その中で「久留米・大砲ラーメン」は経営者ではなく職人を育てているような印象だ。

他のチェーンでは2〜3年で管理職を任されることもあると聞きますが、うちは『スープを管理できる』が必須なので、そんなに短期間で店長になった人は1人もいません。みんな現場経験が長いので、単に職人としての技術だけでなく、経営や運営法も体感的に学んでくれています

それだけ、目を配り手をかけ続けなくてはいけない呼び戻し製法のスープ。合理性が求められる現代にはマッチしないようにも思えるが、同店はなぜそこにこだわっているのだろうか。

作っている私たちは、目隠しをしてスープを一口飲んだだけでも、呼び戻しかそうでないかがわかるほど、風味と香りが違います。呼び戻しスープはうま味が強いとよく言われるんですが、実は大事なのはこの香りです。香りがあることでスープのうま味を感じやすくなるんですよ。

また、どんな料理も、作りたてから時間が経つほどに美味しさは落ちていきますよね。呼び戻しでないと、寸胴に入ったスープの最後の方は、作ってから時間が経ったスープです。しかし、呼び戻しだと、常に釜を見ながら継ぎ足し続けます。つまり、製造と提供がほぼ同時にあるわけです。だから、常に今生まれた新鮮なうま味を、お客様にその場で提供できるのです

「継ぎ足し続けるから不衛生」は誤解だった

久留米・大砲ラーメンが誕生したのは昭和28年。そこから時代を経て、特にコロナ期以降は顕著に、世間の衛生意識は高まっている。例えば、ネット上でも「うなぎ屋が継ぎ足し続けて使っているタレは汚い」といった言説も見られる。

呼び戻しを続ける上で、衛生面の管理については、どのような対策や工夫をしているのか。香月氏は、きちんと説明を聞いていただければ納得してもらえるのではないかという。

まず、うちでは羽釜に入っているスープの量は、ピークタイムなら1時間に出るラーメンの杯数より少ないので、計算上は1時間以内にスープはすべて入れ替わっています。それから、釜の中に入っている骨ガラも1日2回すべて捨てています

さらに、衛生面からみると極めて安心できるが、呼び戻しのイメージを覆すような驚きの事実も語られた。

これは『開業以来、釜を絶対に空にしない』と言ってきたうちの表現が原因と言えるかもしれませんが、スープも含めて中身を定期的に全部出して、釜自体も洗っています。釜の内部の焦げや汚れは定期的に落とさないと、熱効率も悪くなりますからね

呼び戻しスープは、単に昔ながらの製法を守るためのものではない。そこで生まれる香りや鮮度を、今そして未来へ繋ぐためのものだった。

効率化や標準化が求められる時代だからこそ、人の感覚と経験に支えられた1杯が持つ意味は、むしろ大きくなっているのかもしれない。

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