家庭ごみを「戸別収集」、排出量も集積所トラブルも減少…費用増を懸念し踏み切れない自治体も
家庭ごみの戸別収集の取り組みが注目されている。
ごみの減量につながったり、集積所を巡る住民同士のトラブルを避けたりすることができるという。ただ、収集費の増大などのデメリットもあり、導入できずにいる自治体は少なくない。(石原宗明)
6割が賛成
神奈川県鎌倉市の由比ガ浜地区にある住宅街で18日午前10時過ぎ、ごみ収集車から作業員の男性が降りると、家の玄関前に置かれた容器からごみ袋を取り出し、小走りして隣家に向かった。この作業を繰り返し、両手がいっぱいになると、後方から追いついてきた収集車にごみ袋をまとめて投げ入れる。男性は「時間内に集められるように動き続けないと」と汗をぬぐった。
同市は曲折を経て今年4月、市全域で可燃ごみの戸別収集を始めた。2012〜16年に一部地域で可燃、不燃、プラスチックなどの戸別収集を試験実施。可燃ごみの収集量を10%削減することができ、アンケート調査でも回答した約1600人のうち65%が継続を希望したことから、有料化とのセットで導入を目指した。
その後、収集費の大幅な増加に対する懸念が出て断念したが、近年、住民の高齢化などでごみ出し負担の軽減を求める声が寄せられるように。説明会を重ね、パブリックコメントを実施したところ、6割が賛成し、導入することになった。
戸別収集にかかる費用は24年度比で2・4倍の約5億5000万円に上る見込みだが、同市ごみ対策課によると、「カラスにごみを荒らされる被害が減った」「集積所の管理負担が減り、楽になった」など、評価の声も寄せられている。「効果を検証した上で、他のごみへの対応を検討したい」という。
東京都台東区もごみ減量を狙い、16年から可燃ごみと不燃ごみなどの戸別収集を無料で実施している。清掃リサイクル課によると、24年度の可燃ごみの収集量は、15年度比で約1割減少。さらに、ごみ捨てを巡る住民間のトラブルや相談が激減したという。
「分別意識高まる」
環境省は16年、ごみ減量に向けた基本方針として、排出量に応じた負担の公平化や意識改革などに向けて「ごみ有料化」の推進を明確化した。有料化の効果が一層上がる方策の一つに、分別意識が高まる戸別収集をあげ、自治体向け手引では「排出者が明確になり不適正な排出の防止などを期待できる」とのメリットも示した。同省によると、24年度は全国137か所の自治体が戸別収集を行っている。
廃棄物行政に詳しい東洋大学名誉教授(環境政策)の山谷修作さんは「戸別収集に移行するだけで約5%の減量効果がある。ごみ出し負担が減り、集積所の管理が不要になるなど、高齢世帯や子育て世帯を中心に利点は少なくない」と話す。
「コスト管理も重要」
ただ、収集費の増加などの懸念から、戸別収集に踏み切れない自治体もある。
愛知県春日井市は22年9月から2か月間、一部地域で可燃ごみの収集を行ったところ、収集作業の時間や移動距離が従来比4〜6倍に増加したことから、収集費も5倍程度増えると試算した。同市ごみ減量推進課は「戸別収集の有効性は認識しているが、コスト管理も重要。現状での実施は困難」とする。
北海道苫小牧市は市内全域での戸別収集を目指し、16年から一部地域で戸別収集を先行実施していたが、今年2月、人件費の上昇と人手不足などを理由に全域への拡大を断念した。先行実施地域の住民に、集積所収集に戻すことへの説明を始めている。
山谷さんは「面積や地形、人口の密集具合など、ごみの収集環境も自治体によって異なる。戸別収集は、そうした実情と住民ニーズのバランスを考慮しながら進めていく必要があるだろう」と話す。
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記者が暮らす自治体では戸別収集を行っていない。自治会長を務める今、会員からは集積所のごみの出し方の周知徹底を求める声が寄せられる。生活の中でどうしても出るごみの収集のあり方を今後も考え続けたい。
高齢者・障害者支援として導入
戸別収集を巡っては、ごみ出しが困難な高齢者や障害者に対する支援として導入している自治体もある。
松山市では23年から、市職員が週に1度、「要介護1」以上の高齢者宅などを訪問し、収集している。ごみが出されていないなど異変があれば、担当のケアマネジャーに連絡する。家の中で転倒して動けなくなった高齢者を救出したこともあった。
埼玉県所沢市は05年度、「要介護1」以上の高齢者らを対象に導入したが、11年度に要件を緩和し、「要支援2」以上を対象とした。
25年度の対象世帯は、10年度比2・2倍の767世帯。同市環境クリーン部は「収集する市職員の負担が増えても、できるだけ多くの人に対応したい」としている。

