今、一度フリーランスとして独立したものの、再び企業に所属する道を選ぶ“キャリアの逆流”と呼ばれる現象が急増している。自由な働き方で高収入を得られる魅力がある一方で、年齢とともに案件が減少し、将来への不安に直面するフリーランスも少なくないようだ。

【映像】男性(41)の“自己PR”書類

 ニュース番組『わたしとニュース』では、現在“正社員回帰”を目指して就職活動中の男性のリアルな声を紹介しつつ、エコノミストの崔真淑氏とともにフリーランスの現実とその“市場価値”について深掘りした。

■「月給は2.5倍に」なるも…40歳で直面した“案件激減”と「収入ゼロ」の現実

 「ちょうど年齢が『40歳』とスキルシートに書くようになったころから目に見えて紹介される(仕事の)案件が減った」そう語るのはフリーランス歴10年の男性(41)。正社員回帰を目指し、就職活動をして1カ月半ほど。IT業界との関わりは、2007年、22歳で正社員になったのが始まりだという。

 しかし当時は、「毎年昇給自体はあったが、月額あたり5000円くらいしか上がらないような形だった。当時、結婚して子どももいたので、このまま生活していくと給料が足りないと考えていた」。

 より稼げると判断し、派遣会社を通した仕事に転向。さらに、エージェント会社に仕事を紹介してもらえば、フリーランスとして働けるのではないかと考え、2015年、作業に欠かせないパソコンも購入、フリーランスとしての道を歩み始める。その結果、収入は大きく増加したという。

「最初に勤めていた会社でもらっていた月給の2倍〜2.5倍ぐらいになった」(フリーランス歴10年の男性、以下同)

 しかし、フリーランスとして10年が経った今、リアルに感じているのは…。

「フリーランスになった時にスキルアップがほとんどできなかった。私と同年代の方はほとんどがプロジェクトマネージャー。ずっと同じ会社にいてスキルアップをしてきたプロジェクトマネージャーの人たちと今時点の給料を比べたら、多分圧倒的に私の方が少ないのではないか」

 さらに昨年、過酷な事態に直面。病気を患い約10カ月間働けなくなったことで、その間の収入は「全くない」状況になったという。

「『とりあえず治療に専念だ』という形でそこまで強い焦燥感はなかったが、今は結構強めに(焦燥感を)感じている。なりふり構っていられないと思って、(直近の収入確保のため)フリーランスの案件も探しつつ、同じように正社員の求人にもどんどん応募するようになっていった」

■「市場価値は上がっていないが年齢は上がっている」エージェントが目の当たりにする“フリーランスの現実”とは

 男性はゴールデンウィーク明けから正社員への“回帰”を目指し、就職活動を開始。転職エージェントからの紹介を軸に、個人でも転職サイトに登録、企業からのスカウトを受け取るようにして、これまで10〜20社ほど応募した中で、1社だけ2次面接に進んだという。

「昨日(インタビューの前日)、2次面接を受けて通るかどうかの結果待ちという状況」

「(Q.場合によっては条件を下げることも検討する?)切羽詰まってきたら、それも考えるかなと思う。その場合には、IT業界に絞らない仕事の探し方も考えている。切羽詰まってきたら、もうこだわっている余裕はないと考えているので、最悪の状況だが、それも頭の片隅に置いて(就職)活動している」

 後日、2次面接の結果が届き、残念ながら見送りとなってしまったという。

 フリーランスの厳しい就職活動の現状。フリーランス人材マッチング会社「Hajimari」の藤井健二朗氏は、自社の事例を振り返りながら、次のように指摘する。

「自分の思った条件で選考通過ができないという自分の“想定”と“現実”とのギャップに苦しむ方が多い。多くの方が独立する前の自分の“市場価値”で転職活動を考えているが、(キャリアは成長していないため)自分の“市場価値”は上がっていないけれど年齢は上がっている状態になってしまうので、企業から見ると(選考)通過率が低くなる状況に陥る方が多い。結構な収入ダウンになる方もいるので、なかなか受け入れ難くて、(フリーランスを)継続する方は案外多い」

 藤井氏の会社では、正社員回帰にかかる就職活動期間はほぼ2カ月ほどで、フリーランス時代の年収の7〜8割ほどになる人が多い。中には、30代後半でフリーランス歴5年の男性が30社から不採用通知を受け、一旦就職活動をストップしたものの、およそ4カ月かけて最終的にフリーランス時代の6〜7割の年収に条件を下げて内定したという大変なケースもあったという。

 一方で、かなりの年収ダウンを受け入れられず、“正社員回帰”を諦めるフリーランスも2〜3割に上ると明かす。どちらにせよ、自分の“市場価値”を認識して就職活動をしていかなければならない厳しい現実があるようだ。

■3年おきに“市場価値”の確認を…自己投資の重要性

 こうした現状を踏まえ、崔氏は自身の経験を踏まえ、客観的に自分の“市場価値”を把握することの重要性を説く。

「フリーランスや独立している人こそ、3年おきぐらいに自分の“市場価値”を確認しに行くことは結構大事かなと。そうしないと自分のプライドと年齢だけがどんどん上がっていき、『なんで収入がもっと上がらないんだよ』『なんでこのクライアントは仕事をくれないんだよ』という不満ばかりが溜まっていくので、客観的に見てくれるマッチング会社の意見を定期的に聞くのは個人的には良いことだと思う」(崔氏、以下同)

 さらに、フリーランスの働き方における「仕事の分散」の重要性についても強く語る。

「特にフリーランスや独立した人は、収入や売り上げを立てる先を分散することが心の安定に繋がりやすいと思っている。やはり、すごく大きな案件や顧客が突然なくなってしまった時に分散していないとかなりダメージが来ると思う。私自身も独立した時からずっと分散するように心がけていたが、コロナの時にすごく影響が来た。でも、分散したおかげでなんとか食べていけたし、昔から分散しておいて良かったと思った。心の安定と仕事の分散はすごくリンクしやすい職種だと思う」

 そして最後に、AIの普及など目まぐるしく変化する時代の中で、これからどのように働くかについて語った。

「10年後、間違いなくAIの影響はさらに増してくる。そういう環境の中で、今の仕事があり続けるのかという思考は常に持たなければならないし、これは全てのフリーランスの課題だと思う。フリーランスは意図的に自分で収入の分散、心の分散ができるが、正社員の場合、会社からの保険はあるものの、合わない人がたくさんいたりすると転職も難しく、心が縛られやすくなる可能性もあるかもしれない。でも、収入の安定性はある。どちらの我慢、どちらなら自分はより楽しく働けるかは常に天秤にかけながら考える必要がある」

 自由と高収入の裏にある「スキルの停滞」と「年齢」の壁。かつては理想とされたフリーランスの持続可能性が今、問われている。正社員の安定か、フリーランスの裁量か。自分の市場価値を客観的に見つめ直し、リスクを分散させながら、自分に合った働き方を模索し続けることが求められているようだ。

(『わたしとニュース』より)