生成AI(人工知能)の普及に伴い、インターネット検索やデジタルツールを介してあらゆる知識へ瞬時にアクセスすることが可能となった。人間の知性を測る重要な指標であった「記憶」や「暗記」の価値が揺らぐ中、人間が脳に知識を蓄えることの是非について多様な視点から議論が交わされている。膨大なデータを代替するテクノロジーが台頭する現代において、人間が磨くべき能力や知性の在り方について「ABEMA Prime」で議論が行われた。

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■AIで調べれば暗記はいらない?

 生成AIの登場により、複雑なロジック構築や文章作成までが自動化される現代において、「人間はわざわざ知識を暗記する必要があるのか」という疑問が投げかけられている。思考のプロセスまでをAIが代替しつつある中、知識を外部化する効率性と、思考力低下というリスクのバランス、そしてこれからの時代に人間が培うべき知性の定義が大きな論点となっている。

 物理学者でカリフォルニア大学バークレー校教授の野村泰紀氏は、「暗記の必要性は薄れていく」との立場から、自身の研究分野を例に挙げ次のように語った。

 「僕らの分野だと、粒子の質量とか知っている人が偉かったが、それは調べれば出る。ただし、太陽の重さが1キログラムだと思っている人がいたら使えない。AIに聞けば、こんな研究をやっていると教えてくれるが、言っていることがさっぱりわからなければ何の意味もないし、勉強はしなくてはいけない」と指摘した。

 一方で「物を理解する過程で暗記は必要。人間の脳の仕組みとして、暗記なしでロジックだけ理解しようというのは無理。最初はそれを真似したりしているうちに、どういうものかが分かっていき、最終的に暗記だけの部分を忘れていいとなるのではあって、過程に暗記は入る」と、理解の土台としての暗記の重要性も強調した。

 一方、記憶力元日本チャンピオンの青木健氏は、「AIを使うためにも知識の蓄積は必要である」として、次のような見解を示した。

 「大学受験でも丸暗記のようなものは不要になっていく。受験自体も推薦だったり、考えさせるような問題が増えて、変わってきている。ただAIを使うにしても、自分の中である程度の知識がないと正しいプロンプト打つことができないし、求めている回答がなかなか出てこない。かつ返ってきた答えが本当に自分の求めているものかを判断するには、ある程度の知識がいる」。

 また、学生たちが歴史を学ぶ時を例に出し、「歴史の年号を覚える行為自体は本当に意味がないし、どの国とどの国が戦争したのか、なぜ第二次世界大戦が始まったのかの理由などの方がよほど重要」と語り、文脈の理解を伴う記憶の大切さを訴えた。

■便利だからこそ考えるべき使い方

 実務や創作の現場におけるAIの活用について、出演者からは利便性と危機感の双方の声が入り混じる展開となった。。

 EXITのりんたろー。は「ネタ作りのスピードを格段にアップした。自分が欲しい情報を取りに行って、あとはパターンを無限に出してもらうと、無駄な時間がどんどん削減される」と、AIによる効率性を評価した。また相方の兼近大樹氏も、「AIで『ボケ案』を出してもらうが、すごくおもしろいものが出てくるようになってきた」と進化を認めつつも、「AIが言ったら面白いことと、自分が言ったら面白いことは全然違う」と言及した。

 インフルエンサー・モデルのまいきちは、「記憶は感情と結びついてると思う。記憶を全部AIに任せてしまうと、議論にもならない。みんなそれぞれ同じ知識、記憶、感情があって、いろいろな議論が生まれるので、そこの楽しさがなくなってしまうのは嫌だ」と主張した。

 AIの普及は教育現場のあり方にも影響を及ぼしている 。港区の区議を務める斎木陽平氏は「ノルウェーの小学校ではAIを禁止したりとかして、できるだけ旧来型の教育を残していこうという議論もある」と紹介し、これに対する見解を専門家に求めた。

 野村氏は「意味あると思う。最初からAIを使ってしまうと、必要な部分が育まれないから」と応じ、年齢に応じた適切な教育プログラムの必要性を指摘した。また番組では、日本の保護者を対象にした調査で、子どものChatGPT利用に対し「思考力の低下」(34.7%)や「誤情報を信じてしまう」(33.7%)を懸念する声が上位を占めているデータも提示された。
(『ABEMA Prime』より)