【山村 佳子】半年で5人の20代女性と…55歳夫の浮気の壮絶。25年連れ添った52歳専業主婦の決断

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「“男性は、女性はこうあるべき”という抑圧は、性別関係なく多くの人の心に悪影響を与えることがあります。たとえば、収入が少ないとか、繊細であったり、主夫であったりする男性の自己肯定感が低下し、心の病に発展するケースもあるのです。男性を縛り付ける抑圧を心理学では“トキシック・マスカリニティ(有害な男らしさ)”といい、最近はこれを背景とした調査も増えています」

こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのところに相談に来たのは、52歳の専業主婦・理恵子さん(仮名)。大手上場企業に勤務する55歳の夫の行動がおかしいと連絡してきた。その調査の結果は。

半年で5人もの20代女性と…

理恵子さんと夫は結婚25年、24歳と22歳の社会人の娘がいます。夫とは2001年に職場結婚。当時は、1999年6月23日に男女共同参画社会基本法の公布・施行してから2年しか経っておらず、男女平等の意識は少なかった時代です。短大卒の理恵子さんは“男性社員のお嫁さん要員”としてコネ入社したことを自覚しており、男らしく頼りがいがある夫との結婚を嬉しく思っていました。

夫はいわゆる“昭和”な価値観を持っており、理恵子さんが専業主婦になることを求め、理恵子さんはそれに応じて、家事と育児をワンオペで担ってきました。

変化があったのは、1年前。夫は年齢とともに“男らしさ”が失われたことを感じ、うつ状態になるミッドライフクライシス(中年の危機)に陥ります。そこから脱却したのは、ネットで出会った、男らしさをコーチングする男性との出会いでした。夫はオンラインサロンに参加し、体を鍛えて若作りを始めます。歯を白くし、毛髪を増やしたところで、半年で5人もの20代女性と性交渉をしたこともスマホの記録でわかりました。トキシックマスカリニティ(有害な男らしさ)に囚われている理恵子さんの夫がやりそうな行動です。

理恵子さんは娘に相談すると「もう離婚しなよ」と言われ、調査に踏み切ったのです。

夫のスマホに記録されていたもの

理恵子さんは、夫のスマホのパスワードを知っており、入浴中などに自由に中身を確認していました。夫は理恵子さんに対して「どうせ見ないだろう」と油断しているのでしょう。あるいは、「見られたところで問題ない」とさえ思っているのかもしれません。

理恵子さんは「この金曜日に、夫は浮気します」と言い、女性との待ち合わせ時間と場所を事前に送ってきました。そこで、私たちは18時に新宿の書店前で尾行のスタンバイをします。17時から張り込みを開始したのですが、夫が現れたのは17時30分。仕事ができる人は早めに待ち合わせ場所に来る傾向がありますが、ここまで早いのは初めてのことです。

20代らしき女性との食事に選んだ「場所」は…

夫は鍛えた体がひと目でわかるような、タイトなシルエットの紺の真新しいポロシャツにチノパンを合わせています。おそらくオフィスのどこかで着替えてきたのでしょう。身長180?ほどで、実年齢は55歳ですが40代半ばにしか見えません。胸板が厚くお腹も引き締まっており、相当な努力を重ねていることがうかがえました。

18時5分にやってきたのは、ふくよかな20代の女性でした。「初めまして、遅れちゃってごめんなさい」と口にする彼女は、すでに酔っているのか、時々目の焦点が定まっていないようです。容姿端麗というタイプではなく、ストイックに体を鍛え上げた、エリートを自認する夫とは真逆のようにも見えます。

夫は一瞬ムッとした表情を見せましたが、すぐに笑顔になり、女性と歩き始めます。尾行を続けると、向かった先はチェーンの牛丼店でした。二人はビールを飲みながら惣菜をつつき、女性はシメに牛丼を食べています。

調査に同行していたペアの探偵も、「ケチとは聞いていましたが、初対面のデートで牛丼チェーン店を選ぶケースは初めて見ました」と驚きを隠せない様子でした。夫は大手企業に勤務しており、推定年収は2000万円ほどです。カウンセリングの際、理恵子さんが「夫は部下と飲んでも、いつも割り勘にするから、出世コースに乗れなかった」と言っていたことを思い出しました。

牛丼屋から最安値のラブホテルへ

30分程度の滞在の間にも、夫は周囲の目を盗みながら、女性の体に執拗にボディタッチを繰り返しています。女性もまんざらではないようで、笑顔でそれに応じていました。夫はかつてパパ活サイトに登録していたものの、女性側から金銭を要求される仕組みを嫌い、出会いの場をInstagramへと移した経緯があります。

おそらく、この20代女性に対しても夫はお金を支払うつもりはないのでしょう。女性の側にも、一時的な寂しさや欲求を満たしたいという気持ちがあるのかもしれません。二人はすぐに濃厚な雰囲気になりました。そして、1500円ほどの会計を済ませると、歌舞伎町でも最安値の部類に入るラブホテルへと移動したのです。

夫は背後にいる私たちの存在には全く気づかないまま、最も安い部屋のボタンを押しつつ、女性の手を自身の股間へと誘導していました。女性も歓声を上げており、これもまた決定的な浮気の証拠となります。私たちは夫が選んだ部屋の隣室を押さえ、録音を開始しました。壁の薄いホテルだったこともあり、行為に及んでいる状況がある程度はわかる、音声証拠を確保することができたのです。

「男らしさ」の呪縛

その音声を分析していると、夫は「男らしくあらねばならない」という社会的プレッシャーから生じる精神的な歪みを、女性に対して支配的かつ強引な性交渉に及ぶことで解消しているようにも感じました。

どの女性とも1回限りの関係だからこそ、妻や世間には見せられないような歪んだ願望をぶつけることができるのでしょう。女性を一人の人間として尊重していないようにも感じられ、調査を進めながら怒りと悲しみを覚えました。

それと同時に、夫は自身の内面にある葛藤を言語化できていないことも感じました。「男は強くあれ」という前時代的な価値観にとらわれ、老いへの不安や、定年退職によって居場所を失う恐怖を、過度な筋トレや若い女性との性交渉によって刹那的に紛らわしているのではないかと思ったのです。

この問題の本質的な解決には、夫自身が、老いることや、弱さを受け入れることは決して恥ではない、と自覚し、理恵子さんと対等に向き合い誠実なコミュニケーションを取ることが不可欠です。また、このままでは性依存症に陥る危険性もあるのではないかと思いました。その予防のためには、まずは専門の心療内科や精神科を受診し、適切な治療やカウンセリングを受けることが必要ではないかと感じたのです。

2時間ぴったりでホテルを出てくると、夫は「またね。さようなら」と女性のことを振り返りもせず、駅に向かって猛スピードで歩き、そのまま帰宅していきました。残された女性は、ホテル内でもさらにお酒を飲んだのか、さらに足元をフラつかせながら、世田谷区内の一戸建てへと帰っていきました。

後日、彼女は21歳の大学生で、幼少期に親からネグレクトを受けて育った背景があることが判明しました。父親の影が薄い環境で育った女性は、無意識のうちに年上の男性に父親の面影を重ね合わせ、心惹かれてしまう傾向があります。彼女の行為が妙に情熱的だったのも、夫に対して父親を重ね、愛情を求めていたからなのかもしれません。

以上の調査結果を理恵子さんに報告すると、「実際に見ると、本当に気持ち悪いですね」と深くため息をついていました。

「娘よりも下の年齢の女の子と性交渉をして、しかもこんなひどい扱いをしているなんて。それに、自分で判断もできないような若い女の子を相手に、まるで数を競うようにしているだけじゃないですか。自分の娘がされたら決して許せないようなことをすること自体が耐えられないです。いつも家では『自分以外は全員バカだ』という傲慢な態度をとっていますけど、そういう浅ましい本性がそのまま行動に出ていて、本当に嫌気がさします」

門限は22時、友達との旅行は禁止

この証拠を見た後に、理恵子さんは自分が置かれた状況を冷静に判断できるようになりました。離婚に際し、改めてカウンセリングの依頼をいただいて話したところ、「私には22時の門限があり、友達との旅行は禁止など、他にもいろいろ制約があったのです」と語ります。

理恵子さんが離婚を申し出たところ、夫は強硬に反対。最初は「絶対に離婚しない」と怒鳴られましたが、理恵子さんの意志が強いことを知ると、土下座したり、泣き落としをしたりと、あの手この手で阻止しようとしたそうです。

「なんかもう、気持ちが無くなっちゃうと受け入れられなくなるんですね。『こんな男のパンツを洗うために、私は生まれてきたんじゃない』と思い、弁護士を立てて離婚することになりました」

証拠のこともあり、理恵子さんは財産分与分も、慰謝料も相場より高く受け取り、実家に戻りました。この決断には、娘たちも大喜びしていたそうです。ただ、3人は最後に「父親として、夫として家族を守ってくれてありがとう。感謝しています」と伝えたそうです。すると夫は大泣きして、「戻ってきてほしい」と言ったそうですが、理恵子さんも娘たちももう完全に心が離れていました。でも理恵子さんは「病院に行ったほうがいい」とすすめ、夫はその後通院しているようだと話していました。

理恵子さんは「いい状態で別れる事ができてよかったです。介護関連の会社に仕事も決まり、これからは私の人生を歩みます」と私たちに感謝してくれました。

夫も「男らしさの呪縛」に苦しんでいたともいえます。今回のことでそのことに気づき、「かくあるべき」から脱出できることも祈ります。

今回の調査料金は15万円(経費別)です。

【前編】「お母さん、離婚したほうがいいよ」結婚25年になる52歳専業主婦が20代の娘たちから離婚を勧められる理由