130周年迎えた函館競馬場、今年の芝は “時計のかかる洋芝”で昨年「レコードの夏」 早まる気温上昇
先週、函館競馬が開幕した。思い起こせば去年は「レコードの夏」だった。函館記念でサッカーボーイが37年守った芝2000メートルの記録をヴェローチェエラが1分57秒6で更新。2歳戦ではカイショーが芝1000メートルを56秒4で駆け46年ぶりに塗り替えた。芝の記録は開催で計8回を数えた。
今年の開幕前、関係者の声は割れていた。「力のいる洋芝向きと思って連れてきた。去年みたいに速かったら話にならない」、「滞在が合うし、時計も速い方がいい」。では実際はどうだったか。土曜は早朝から雷雨、終始稍重。3歳以上1勝クラス(芝1200メートル)は、新馬以来の勝利を狙ったカイショーが3着(1分8秒2)。昨年1分6秒6のメイン・函館スプリントも1分7秒4に。「速かったら困る」陣営に、空は味方した。
やはり去年が異常か。馬場造園を預かる施設整備課の安藤恒平馬場担当課長に尋ねた。「構成も、丈も、変えていません」。去年からの話ではなく、洋芝の3種混合は長くこの競馬場の標準だ。「レコードを目指してはいません。一番綺麗に仕上げた結果、時計が出るだけです」と説明。馬場は変えていない。
野芝は横へはう力が強く、地表を網の目のように覆って反発力を生む。対して洋芝は縦に伸び、地下に保水性の高い根のマットを作る。歩けば針のような葉がじゅうたんのように足裏を沈ませる。「縦方向の生育が強く、踏むと縦の弾力を強く感じます」と安藤氏。このクッションこそ“洋芝は時計がかかる”の正体だろう。乾いて水分が抜ければ一気に速くなる。
同じ北海道でも札幌は苦しい。「洋芝は25度を超えると生育に影響が出る」と安藤氏。「合うのは15〜25度」。両者の平均気温に大差はなく、効くのは走る時期。函館の開催は適温の6月〜7月半ば。日最高は平年で6月20・4度、7月24・1度と適温に収まる(気象庁)。札幌で走るのは最も暑い7月末〜8月。日最高は平年も26度前後で、真夏日も一週間ほど出る。2年前に札幌競馬場を取材した際には、あまりに気温が暑いと洋芝が参って自らの根を細くするとも聞いた。同じ洋芝でも片や適温、片や夏枯れになる。函館は最も優しい時季に走っている。
去年の時計は異常だったのか。半分は当たりだ。乾燥と高温が極端に味方した。だがそもそも速い年の天井そのものが、一段高くなっていそうだ。“時計のかかる洋芝”の函館スプリントで、17年と去年に1分6秒台が出た。北日本の夏は10年以上、平年超が続く。配合は同じでも、気温が上がれば乾いた日の馬場は締まり、速くなる。
もっとも稍重の土曜、軟らかいはずの馬場での函館スプリントの1分7秒4の時計は悪くない数字だ。理由は芝の状態がいいからだろう。密に根を張った健康な芝は水はけがよく、雨でも荒れず足場を保つ。乾いた日曜は8Rの同じ1勝クラス(芝1200メートル)で1分7秒7に上向いた。今週以降も時計は天気が鍵を握る。気温が上がる分、乾いた日は速くなりやすいが、その反面で函館は7月にかけて雨も増える。速い日と遅い日が空次第で交互に来そうだ。
その函館だが、直近3年は観測史上最も暑い3年。23年には史上最高の35・4度を記録しており、今年は馬房にエアコンも設置された。早朝の調教では、時計を計測するトラックマンでもダウンを着る人は年々減っている。このまま暑さが6〜7月にまで及べば、函館も札幌のように苦しむ側に回りかねない。130周年を迎えた函館競馬場でそんなことを考えた。(デイリースポーツ・島田敬将)
