【旭川女子高生殺害】なぜ検察は「死刑」でも「無期懲役」でもなく「懲役27年」を求刑したのか? 被害者の尊厳を踏みにじる犯行も検察が極刑を避けた“最大の理由”
2024年4月、北海道旭川市にある神居大橋の欄干から当時17歳の女子高生を川に落下させ、死亡させるという事件が発生した。この事件で殺人罪などに問われた内田梨瑚被告(23)の裁判員裁判が旭川地裁で開かれており、6月8日に検察は懲役27年を求刑した。内田被告らは女子高生を車に乗せ、監禁して暴行。さらに全ての服を脱がせ、動画を撮影。「落ちろ」「死ねや」などの暴言を吐き続け、女子高生を川に落下させた。極めて残虐な事件であることは言うまでもない。
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検察は内田被告の犯行について「被害者の人格、尊厳を踏みにじるもので身勝手極まりない」と厳しく批判した。

その一方で、検察は共犯の小西優花受刑者(21)についても言及した。小西受刑者は自身の裁判でも内田被告の裁判でも一貫して「最後は内田被告が背中を押して、女子高生は川に落ちた」と主張してきた。
その小西受刑者に検察は懲役25年を求刑し、3月7日に旭川地裁は懲役23年の判決を下した。小西受刑囚も検察も控訴せず、刑は確定している。
検察は内田被告に対する論告求刑で「懲役23年が確定している小西受刑者との量刑バランスを考慮した」と説明した。起訴内容が事実ならば、主犯の内田被告は小西受刑者より罪が重い。小西被告に求めた懲役25年より、2年多い懲役27年が妥当だと検察が判断したと考えられる。
事件の残忍性から、ネット上では「検察は内田被告に死刑を求刑してほしい」、「死刑が無理でも無期拘禁刑を求刑してほしい」という意見が目立っていた。
ところが検察の求刑は懲役27年だった。Xでは「27年なんて短すぎる」、「わずか27年ですか?」、「日本の刑法がどれほど犯罪者に甘いかを痛感させられる裁判」など、痛烈な批判が殺到している。
元検事の田中喜代重弁護士は「私は無期懲役を求刑してもよかったのではないかと思います」と言う。
検察上層部も関与
「捜査や裁判で残忍極まりない犯行の一部始終が明らかになりました。ところが求刑が懲役27年となると、たとえ減刑されず、求刑通りに懲役27年の判決が下り、それが確定したとしても、内田被告は50代、場合によっては40代で刑務所を出所する可能性が生じます。被告の被害者に対するあまりにもひどい犯行を考えれば、バランスが取れているとは言えません。ネット上で『これでは甘すぎる』、『納得がいかない』という意見が目立つのも当然ではないでしょうか」(田中弁護士)
では、なぜ検察は無期懲役を求刑しなかったのか、田中弁護士は「これほど残虐で、世論の注目が高い事件だと、求刑の決定には検察上層部が関与します」と言う。
「恐らく最終的には高等検察庁で協議を行い、決定内容を上層部に提案し、裁可を得たはずです。つまり内田被告に対する懲役27年の求刑は、検察全体の意思だと考えられるわけです。なぜ検察は無期懲役を求刑しなかったか、私は『この事件の本質はここにある』という確証を検察が得られなかったからではないかと考えます。具体的には、『誰が被害者を最後に押したのか』という重要な点が未解明に終わりました。確かに小西受刑者は『内田被告が最後に押した』と明確に証言しました。小西受刑者の裁判では証言の信憑性も大筋で認められました。とはいえ、小西受刑者の『押した』という証言を裏付ける明確な物証がないのも事実です。検察はこれを憂慮したのだと思います」
“石橋を叩いた”検察
田中弁護士が注目するのは、検察の冒頭陳述だ。5月25日に開かれた初公判で検察は「たとえ突き落とした行為がなくとも、被告らの言動のせいで実質的に転落させたと評価できるのであれば殺人罪の実行行為は認められる」と主張した。
「『ピストルで被害者を撃ち殺した』行為と、『被害者がピストルで自殺しなければならない状況に追い込む』行為は、どちらが罪は重いのかという問題でしょう。もちろん『自殺に追い込むほうが恐ろしく、罪深い』と考える人はたくさんいると思います。ただし刑法や実際の刑事裁判では一般的に『ピストルの引き金を引き、被害者を撃ち殺した』ほうが罪は重いと考えます。今回の事件で検察側は冒頭陳述で『被害者を突き落としたのは内田被告です』と明確に主張できませんでした。となると求刑も有期刑にならざるを得ないと判断したのではないでしょうか。検察側は“石橋を叩いて渡る”方針を選択したと言えるかもしれません」
田中弁護士は検察側に「できることなら控訴審は避けたい」という“本音”も透けて見えるという。
「娘の望む判決を下してください」
「無期懲役を求刑し、減刑されて有期刑の判決が下った場合、検察は基本的に控訴する方針を定めています。『誰が女子高生を殺したのか分からない』という検察が強い確証を持てない事件で高裁、最高裁を争えば、ひょっとすると内田被告に有利な逆転判決が下らないとも限らない。一方、懲役27年を求刑した場合、たとえ判決で小西受刑者と同じ懲役23年に減刑されても、検察は自動的に控訴する必要はありません。それこそ、もし本当に懲役23年の判決が下れば、内田被告が受け入れる可能性は上昇すると考えられます。しかし法律上、裁判所は検察官の求刑に拘束されません。実行者は内田被告あるいは内田被告が本件の中心的役割を果たしたという心証を形成したならば、検察の求刑を上回る判決をする可能性もあります」(同・田中弁護士)
検察が求刑があった6月8日の公判で、女子高生の父親が意見陳述を行った。父親は「裁判官、裁判員の皆さま」と呼びかけ、内田被告に人差し指を向けながら、「どうか、どうか、あいつを、あいつを、私の娘の望む判決を下してください。お願いします」と懇願した。
父親の訴えにハンカチで涙を拭う裁判員もいたという。果たして天国で被害者の女子高生は、検察の求刑に納得したのだろうか?
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デイリー新潮編集部
