【A4studio】「映え重視」危険な半生ハンバーグ店と元祖『さわやか』の「決定的な違い」…「食中毒リスクのある飲食店」を見きわめる「意外な方法」
神奈川県横浜市内のハンバーグチェーン『花より、ハンバーグ。』(国内5店舗)で、腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生したと報じられたのは4月末。『花より、ハンバーグ。』は牛100%のハンバーグの表面に焼きを入れ、その後は客が鉄板で好みの焼き加減に仕上げるスタイルを採用している。近年、全国に広がる“半生ハンバーグ業態”である。
客が焼くスタイルのハンバーグ店で食中毒事故はたびたび発生しており、事故が報じられるとネット上では、「なぜ危険だとわかっているものを出し続けるのか」といった声が上がっていた。
そんな“半生ハンバーグ業態”の元祖的存在としてしばしば名前が挙がるのが、静岡県内に展開する人気ハンバーグチェーン『炭焼きレストランさわやか』(静岡県内のみに35店舗)だ。提供スタイルだけを見れば『さわやか』とこれまで問題を起こしてきたハンバーグ店はよく似ているものの、確認したかぎり『さわやか』では食中毒事故が起こっていない。
この差はいったい何なのか。また、リスクが高いと思われる“半生ハンバーグ業態”は、なぜ変わらず存在し続けるのか。外食産業に詳しいフードアナリストの重盛高雄氏に解説していただく。(以下、「」内は重盛氏のコメント)
記事前編は【「半生ハンバーグ」で相次ぐ食中毒…「バズったもの勝ち」の店とは一線を画す、元祖『さわやか』の「真面目すぎる営業姿勢」】から。
“マニュアルがある”だけでは意味がない
類似の“半生ハンバーグ業態”で食中毒事故を起こす店が出てきてしまうのはなぜなのか。重盛氏は、その大きな差は“知識”ではなく“理解”にあると話す。
「わかりやすく手洗いを例に説明しますと、チェーンAとチェーンBに“手洗い後はペーパータオルで拭いて水分をきちんと取り除く”という同じマニュアルがあったとします。
Aではそうすべき理由まで従業員一人一人に周知徹底できていて、対してBの従業員はそのマニュアルの知識はあるものの理由まではしっかり教育できていないとします。するとBの従業員のなかには、マニュアルは知っていてもつい面倒くさくなって紙タオルを使わずに、布タオルで拭き厨房に入るスタッフが出てきてしまうかもしれません。
マニュアルを作ること自体はとても簡単なんです。同業他社のマニュアルを模倣できるかもしれないし、いまはAIでも簡単に作れるでしょう。難しいのはそのマニュアルを知識として覚えさせるだけでなく、従業員一人一人に理屈まで理解してもらい、常に徹底させることなのです」
さらに重要なのが、蓄積してきた経験の差だという。
「『さわやか』は“半生ハンバーグ業態”として提供してきた歴史を持ち、その過程で衛生管理やリスク回避に関する知見を蓄積してきたことでしょう。しかし、表面的な演出だけを参考にした類似のチェーン店が、同等のノウハウまで備えているとは限りません。食中毒や営業停止のリスクを十分に理解しないまま営業を続ければ、重大事故へ発展する危険性もあります。
これは、大規模チェーン店だから安全、小規模チェーン店や個人店だから危険という単純な話ではありません。企業規模の大小以上に重要なのは、現場で働く一人一人の衛生意識なのです。結局は現場のスタッフ全員に、『自分たちが少しでも油断すればお客様に危害が及ぶかもしれない』という意識が浸透しているかどうかなんです」
消費者側にも求められる自己責任の危機意識
さらに重盛氏は「問題意識を持たなくてはいけないのは店側だけではない」と指摘する。
「近年は情報の受け取り方そのものが変化しています。TikTokのショート動画などを中心に情報収集する人も珍しくありません。そうした環境では『おいしそう』という印象だけが強く残り、食に伴うリスクまで十分に伝わらないこともあるでしょう。
そうした影響か、最近は“飲食店が出している料理は安全”と安易に信じ切ってしまっている人が増えている印象もあります。でも本来は自分の体に取り入れる食べ物のことなので、客側もある程度リスクを理解したうえで、食べるかどうかを一定の自己責任で判断しなければいけないのです」
とはいえ、どれも似たような見た目で、どの店が安全でどの店にリスクがあるのかを見極めるのは簡単ではなさそうだが。
「逆説的ではありますが、事故を経験していない店よりも、一度問題を起こして危険性を十分に理解している店のほうが、標準以上に厳格な衛生管理を行っているケースもあります。営業停止になれば売り上げは止まり、店の信用も大きく損なわれますので、そうした苦い経験を経ることで『次は絶対に防がなければならない』という意識が強くなるからです。
また、店舗オペレーションに余裕があるかどうかも重要な判断材料になります。スタッフが余裕なく、常に慌ただしく動いていたり、トイレ清掃が行き届いていなかったりする店には注意が必要かもしれまれません」
さらに、店の“裏側”を見ることも参考になるそう。
「例えば搬入口や裏口の様子を見ると、衛生管理の実態が垣間見えることがあります。食材の扱いが雑だったり、喫煙スペースの近くに原材料が置かれていたりすると、衛生管理への意識に不安を感じるでしょう。店内の表側がきれいなのはある意味当然ですので、そういったあまり客の目に触れない場所まで管理が徹底されているかどうかも、チェックしてみるといいかもしれません」
“レア”なおいしさは、多くの人を惹き付ける。しかし、その魅力を安全に成立させるには、徹底した衛生管理と現場の緊張感が欠かせないのではないだろうか。“映え”が拡散される時代だからこそ、店側にも消費者側にも、食のリスクを正しく理解する姿勢が求められているのだ。
(取材・文=森田浩明/A4studio)
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