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「あくまでルールの範囲内で求めるものを提供」

アストン マーティンの最新モデル『DBX S』を、南房総市にあるドライビングコース、THE MAGARIGAWA CLUBで試乗することができた。

【画像】700ps越えのパワーを完全に手懐ける!恐ろしくレベルの高いバランス型SUV『アストン マーティンDBX S』 全43枚

SUVスタイルのモデルとはいえ、メルセデスAMGから供給される4L V8ツインターボ・エンジンの最高出力は727psにも達している。クローズドコースでなければ、とてもその核心に触れることなどできないパフォーマンスといえるだろう。


アストン マーティンの最新モデル『DBX S』をテストドライブ。    アストン マーティン

昨年デビューし、今回初めて日本における試乗が叶ったDBX Sだが、今どき珍しく、そのパワートレインは48VのBSGしか備わっていない。

その事実に対する興味深いコメントを残してくれたのは、アストン マーティンのアジアパシフィック&グレーターチャイナ担当、リージョナルプレジデントであるカール・ベイリスだった。

彼は「あくまでルールの範囲内でカスタマーが求めるものを提供する」とし、これがアストン マーティンのやり方だと強調する。

実際に彼らはスーパースポーツカーのヴァルハラでPHEV技術を採用しているほか、最新のF1でも(市販はしていないが)電動化モデルを走らせている。レーシングのDNAを持つブランドだからこそ、図抜けたパフォーマンスが必要なときだけモーターによるエクストラパワーを活用しているのである。

これは、真実が見えてこない現代車の電動化事情に対するスポーティなメイクスの姿勢として、的を射ていると思う。

では、今回の主役であるDBX Sにおけるピークパフォーマンスは、どのようにまとめ上げたのだろうか。

フル加速で垣間見た+20psの底力

スタイリングに関しては、グリル内のマトリクスが新デザインになっている以外は、ほぼ『DBX707』のそれを踏襲している。スカットルに据えられた赤いSのエンブレムでそれとわかる程度。そこはアストン マーティンらしく控えめなのである。

DBX Sの白眉といえる727psのパワーは、DBX707から20psアップ。ちなみにM178ユニットのターボ内に仕込まれたインペラはヴァルハラ用とのこと。


DBX707からの変更は最小限というのが、いかにもアストン マーティンらしい。    アストン マーティン

そんな事実より感心させられるのは、供給元のメルセデスAMGが、いつも自分たちのモデルよりも高出力のエンジンをアストン マーティンに供給してあげている気前の良さである。

今回はペースカーが入っての試乗だったのだが、だからこそいきなり真剣にスロットルを踏む必要に迫られた。最も長い直線に入ってスロットルを床まで踏み倒すと、野太い排気音とともに、120km/hあたりから全く加速感が緩むことなく230km/hを超えていく。

今回、先導車のプロドライバーがドライブしていたのはDBX707だったのだが、よく観察していると、ストレートエンドでは確実に差が詰まる。これが+20psの恩恵だろうか? 200km/hオーバーでパワー比べができるなんて、クローズドコースならではである。

しかも重要なのは、この速度域でもフロントが浮きはじめてフラフラする感じが一切ないこと。今どきのドイツ系のクロスオーバーSUVのように『実はけっこうなシャコタン』ということもないのに。

また、防音もしっかりとしているので、体感速度はメーターの半分ほどしかない。だから安心してスロットルを踏み抜けるのである。

727psとバランスしたシャシー

試乗時のドライブモードはスポーツから始めて、途中でスポーツ+に切り替えて走った。経験上、路面が滑らかで速度域が高いクローズドコース試乗によって公道レベルの乗り心地を看破することはできない。パワートレインと同じく、シャシー面でもトップエンド付近のパフォーマンスが鮮明になるのだ。

この手のモデルでサーキットを走ると問題になることが多いブレーキ、そしてコーナリング時の身のこなしも素晴らしかった。


クローズドコース全開走行でも音を上げない事実には心底驚かされた。    アストン マーティン

コーナリングで1テンポ遅れて上屋の重みがグッとのしかかる感じがないので、左右に切り返すようなシーンでも自信をもってステアリングを切り込める。

これは48V駆動のスタビライザーがロールを消しているというのもあるが、今回のDBX Sではルーフがカーボンパネルになった効果もある、と説明されていた。だが、見上げたら試乗車は何とガラスルーフだった。実際には、さらにコーナリングの動きが優れているということになる。

以前から、DBXのシャシーが700ps越えのパワーを完全に手懐けていることは理解していたが、クローズドコース全開走行でも音を上げない事実には心底驚かされた。

それと同時に、リアタイヤが滑り出すような状態でもアストン マーティンらしさ、快適さを担保できていることに感心させられた。

スペック先行ではなく、実は恐ろしくレベルの高いバランス型。スーパースポーツSUVとしてはまさに頂点の1台といっていいだろう。