お店のショーウインドーを飾るデコレーターとして働き、現在は彫金家をしているオオクボスミエさん(75歳)。家に家具を置くときも、ディスプレーの飾り方が活かされているのだとか。そこで、オオクボさんの余白のある「ものの置き方」や、とくに気に入っているリビングを紹介します。

※ この記事は『75歳、おしゃれの決め手 自分を演出する楽しみ』(KADOKAWA刊)に掲載された内容を一部抜粋・再編集して作成しています

【写真】リビングはときどき、火鉢を囲んで集う社交場に変わる

空間を活かす「ディスプレーの3つのテクニック」

長年、ディスプレーの仕事を続けてきて思います。生活空間にもディスプレー、つまり演出の発想を取り入れると、暮らし方も変わるだろうな、と。整理整頓が苦手という方も、ディスプレーの手法で、まずは自宅の小さな場所から変えてみるというのはいかがでしょうか?

たとえば、リビングの飾り棚。ショーウインドーのように、サプライズをする必要はありません。自分の好きな作家さんのものを飾ったり、花を少しだけ飾ったり。また、来客を楽しませることを目的に整えます。それがうまくいっておもしろくなれば、家の整理整頓も順々に進んでいくような気がします。

ディスプレーを置くときの工夫3つ

ディスプレーには、基本のテクニックが3つあります。

●1:ものの配置

基本は安定した形の「三角形」。富士山、クリスマスツリーをイメージしてみてください。円錐形で安定感があります。

専門用語で「三角構成」と言いますが、三角は、バランスがとれて安定感があるのです。ものを配置するときは、三角形や円錐をイメージして、その範囲に収める工夫をしてください。

●2:余白をつくること

スペースがあると、まだ置けると思いがちですが、全部使ってしまうと、息苦しくなってしまいます。

飾り棚に限らず、食器棚、本棚、そして室内も、基本は空間の3分の1を残すこと。使うスペースは、残り3分の2に限定します。そこに、三角形を意識してものを配置していきます。

●3:季節感

空間のさまざまなところに、季節を感じるあしらいをしてみてください。着るもの、食べものと同じように、室内空間も季節で変える。夫とともに白磁と銀の作品を販売するG工房では、秋になるとリビングに火鉢を出します。お客さまが火鉢の周りに集まって、自然に会話が弾んでゆくのは、見ていて楽しいものです。

日本には、歳時記という文化があります。春のお花見、夏の花火、秋のお月見、冬のイルミネーションなど季節ごとの風物を暮らしに取り入れて、演出してみましょう。

自分の好きな場所をつくる

捨て活というよりは、少しだけものを整理して、自分が豊かになれる場所を、家の中につくってみたいと思っています。

リビングでもいいし、寝室でもキッチンの一角、お風呂の窓辺だっていい。自分のお気に入りのもの、思い出の品、友人のお土産、とっておきのアート、あるいは拾ってきた貝殻でも。自分の好きを選んで置いてみると、その一角があなたにとって特別な場所になっていきます。

リビングが夫婦のお気に入り

私たち夫婦のお気に入りの場所は、リビングです。リビングといっても、仕事の打ち合わせもすれば、お客さまを招き入れる応接室でもあって、ときには散らかっていることもあるけれど、ふたりの好きがつまっていて、お客さまも楽しんでくれていることは間違いないようです。李朝飾り棚の上には、好きなアーティストの作品を並べています。置きすぎないように、余白をとりながら。

●リビングに余白があると心も豊かになる

テレビ脇に置いたタンノイのスピーカーでは、ビル・エバンス、ジョン・コルトレーンなど、モダンジャズを聴いています。「ものを出したら、元の位置に戻す」習慣で、テーブルの上を常にフリーな状態に。家の中心になるような場所に余白があると豊かな気持ちになります。

そして、ときどき、その好きの顔ぶれも変えています。ギャルリーワッツのオーナーさんがよく、「アートを暮らしにとり入れるのよ」と言っていましたが、散歩道で拾った石ころでも、テーブルの上に置いてみれば、そこにポッと明かりが灯るように温かみが生まれるものです。