「いよぎん株主阿鼻叫喚ホールディングス」に商号変更するよう異例の株主提案、単なる詭弁と片付けられない理由
愛媛県地盤の伊予銀行を中核とする金融グループ、いよぎんホールディングスが異例の株主提案を受けた。社名を「いよぎん株主阿鼻叫喚(あびきょうかん)ホールディングス」に変更するよう求められたのだ。
提案をしたのは個人株主で、総議決権数302個(0.01%)を保有。実は、いよぎんが商号変更を求められたのは今回が初めてではない。2023年には「いよぎん内部留保第一主義リアルエステート」への変更を求められた。このときも提案をしたのは個人株主であり、同一人物である可能性が高い。
自民党の資産運用立国議員連盟は4月23日、現在の株主提案の要件である「議決権数300個以上」を引き上げ、「議決権の1%以上」などとする提言案をまとめた。その理由は、個人株主やアクティビストによる会社への干渉が強まっているためだ。
経営陣が株主への対応に右往左往することになれば、本来行うべき業務が置き去りにされる懸念がある。いよぎんへの株主提案のようなものに至っては、構っていられないというのが経営側の本音かもしれない。
しかし、提案理由からは些末(さまつ)なものだと一刀両断できない部分も読みとれる。いよぎんの株主提案で問題視しているものの一つが内部留保だ。いわゆる利益剰余金のことで、いよぎんは2026年3月末時点で6164億円ある。1年で582億円積み増した。
総資産額が近い七十七銀行が5002億円、百五銀行は3195億円だ。
いよぎんは潤沢な内部留保があるにも関わらず、株主への還元もイマ一つだ。いよぎんの配当性向は23.6%で、七十七銀行が35.7%、百五銀行が30.8%なのだ。配当性向とは純利益からどれくらいの割合を配当金として株主に還元しているかを示している。
いよぎんは2026年に入って自社株買いを実施しているため、配当性向だけで株主還元の判断はしきれないかもしれない。しかし、百五銀行も5月12日の取締役会で自社株買いの実施を決議している。
いよぎんに株主提案した個人株主は、「ケチ根性丸出し」と経営陣を批判した。
足腰を鍛えるために和式トイレ設置を要求した例も
2025年2月には愛媛の名門企業として名高い丸住製紙が倒産。負債総額は590億円で、株主提案をしている個人株主によると、いよぎんは融資約50億円の損失を出したという。
丸住製紙は新聞用紙の大手で、国内4位の会社。新聞の発行部数の低迷とともに紙需要が落ち込み、そこに石炭の高騰など物価高が直撃した。この会社は「紙のまち」として知られる四国中央市の産業を支えるほどの規模であり、周辺にある数々の中小企業と取引をしていた。地元の金融機関としてはなくてはならない存在だったのだ。
一方、東京商工リサーチは、代表一族が地元で強い影響力があり、プライドが高かったために関係者の助言を聞き入れなかった様子を報じている。個人株主は「丸住製紙に忖度(そんたく)した結果」で損失を出すに至ったと批判した。
これ以外にも、2024年に起こした伊予銀行の25万件の顧客情報漏えいや、四国アライアンス証券社員によるキャッシュカード不正使用事件などを問題視。「いよぎん株主阿鼻叫喚ホールディングス」に変更するよう求めたのだ。
社名だけを見ると詭弁(きべん)を弄しているようにも見えるが、実際は株主還元に対する姿勢や融資先のチェック体制、セキュリティー・ガバナンスの問題点を指摘し、それを改めるよう求めるまっとうな提案という側面も持っている。
似たような提案は過去にもある。2012年に個人株主が野村ホールディングスに対して行ったものだ。商号を「野菜ホールディングス」にするよう求めた。さらにオフィス内の便器をすべて和式にして足腰を鍛錬し、株価四桁を目指して日々ふんばる旨を定款に明記する提案もしている。
こうした事例を受け、法務省は株主提案権の乱用的行使を問題視しはじめていた。しかし、ふざけたように見える株主提案の中には、まっとうな意見が含まれているものも多い。個人株主を封殺して良いのかどうか、慎重な議論が必要なはずだ。
文/不破聡 内外タイムス
