記事のポイント
テイラー・スウィフトの新作発表を受け、ディスコグスでのアルバム販売が37%増加し、ほしいものリストへの追加も急増した。
「ショーガール」の予約販売では開始直後からファンが殺到し、待ち時間は最長2時間に達するなど熱狂が広がった。
多様なバリエーション戦略によりコレクター心理を刺激し、レコード業界全体に波及効果をもたらしている。


テイラー・スウィフト(Taylor Swift)の新作「The Life of a Showgirl」(以下、「ショーガール」)は、まだ発売前にもかかわらず、すでにレコード店や音楽マーケットプレイスで売上を押し上げている。

スウィフトのアルバム「The Tortured Poets Department」(2024年4月発売)は、「ショーガール」の発表後にビルボード200チャートで再びトップ10に返り咲いた。

さらに、オンラインのレコードマーケットプレイスであるディスコグス(Discogs)では、8月12日のアルバム発表以降2週間のスウィフトのアルバム販売が、その前の2週間と比べて37%増加した。同期間にディスコグスの利用者が自身の「ほしいものリスト(Wantlist)」に追加したスウィフト作品の数も49%増えている。

ディスコグスのマーケティング担当プレジデント、ジェフリー・スミス氏によれば、この顕著な活動の増加は、コレクションを完成させようとするファン心理が背景にあるという。スウィフトは複数のバリエーションを発売することで知られ、それがコレクター心を刺激し、新作発表時には「なくなる前に手に入れなければ」という希少性の意識を煽るのだ。

「彼女のファンはコレクターなので、すべてのバージョンを欲しがる。それこそが彼女のレコード売上がほかのアーティストに比べて異常なほど高い理由だ」とスミス氏は語る。「音楽そのものだけでなく、その瞬間、発表、そしてリリースに立ち会うこと自体に価値があるのだ」。

ストリーミング時代でも成長を続けるレコード



ストリーミング時代において、フィジカルメディアの売上はかつてほどではない。だが、全米レコード協会(RIAA)の調査によると、レコードの売上はCDを上回り、2024年には14億ドル(約2100億円)を生み出した。前年比7%の増加で、18年連続の成長となる。ルミネート(Luminate)の調査によれば、「The Tortured Poets Department」はその年のレコード売上トップに輝いた。

さらに、新たに婚約を発表したスウィフトが「ショーガール」を10月3日にリリースすると告知したことで再び熱狂が高まった。売上数字はまだ公表されていないものの、8月11日に予約販売が始まるや、ジャケットやタイトルが公開される前からファンが殺到し、ショッピファイ(Shopify)を活用したオンラインストアの待ち時間は最長2時間に達した。

その後、スウィフトは「Shiny Bug」「Tiny Bubbles in Champagne」「Baby, That’s Show Business」という3種類のバリエーション、さらに3種のデラックスCD版を予約販売。小出しにされるこれらの新作が、発表後も勢いを持続させている。Googleトレンドのデータによると、過去1週間で「The Life of a Showgirl vinyl variants」の検索数は米国で130%急増している。

「テイラー効果」がレコード店を支える



スウィフトの新譜は、レコード店やマーケットプレイスにとっても追い風になる。「彼女が何かをほのめかすたびに、ディスコグスでの検索は即座に急増する」とスミス氏は語る。「リセール市場は爆発し、店舗も在庫を維持できなくなる」。

ジョージア州のレコードショップ、ヴァーティゴ・ヴァイナル(Vertigo Vinyl)は、スウィフトが店舗経営をどれほど支えているかをXで投稿し、バイラル化した。「テイラー・スウィフトの売上だけで年間の家賃をまかなっていると言っても過言ではない」とする投稿は、2日間で100万件以上のインプレッションを記録した。

さらに同店はこうも投稿している。「『スウィフティ』(スウィフトのファンの通称)の皆さんに感謝! 2024年は『Reputation』と『TTPD』の2作品だけで12万8000ドル(約1900万円)の売上を生んだ。レコード店を真剣にやっている店にとって、心からありがたい存在だ」。

スミス氏の言葉を借りれば、「テイラーのレコードは棚に並ばない。入荷したその日にすぐ売り切れる」のだ。

もっとも欲しがられる限定版レコード



ディスコグスのデータによれば、スウィフトの限定盤レコードは同サイトでもっとも人気の高いアイテムのひとつだ。

「Folklore: the Long Pond Studio Sessions」はディスコグスで18番目に欲しがられている作品であり、「Lover (Live from Paris)」も20位に入っている。さらに、スウィフトの「Reputation」や「Lover」は、ピンク・フロイド(Pink Floyd)の「The Dark Side of the Moon」やフリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の「Rumours」と並んで、もっとも収集されている作品のトップ10に入っている。

スミス氏は、スウィフトのリリースがファンをレコード収集の世界に誘うゲートウェイになりうると指摘する。

壁に飾るためだけに1枚購入する人もいれば、そこからほかのアーティストのレコードや、再生に必要なプレーヤーまで買い集めるようになる人もいる。スミス氏の知人のひとりも「Midnights」が2023年に発売された際に初めてレコードプレーヤーを購入し、いまでは100枚以上のコレクションを持っているという。

バリエーション商法と「コンプリート欲」



加えて、スウィフトのファンの一部は、複数のバリエーションを中心にコレクションを組み立てようとする。「TTPD」は異なるボーナストラック付きの4種類のエディションに加え、フルのダブルアルバムまで存在する。「Folklore」(2020年)に至っては9種類のバリエーションがあった。通常の黒盤や安定したスタンダード版は比較的容易に手に入るが、限定色や特別なパッケージの版は瞬時に熱望される対象となる。

一部のファンや音楽業界関係者からは、こうした多様なバリエーション展開が過剰消費を助長し、ファンの購買習慣を搾取しているのではないかとの批判も出ている。

しかし、スミス氏によれば、ファンはそれぞれのエディションを彼女が音楽を通じて紡ぐ大きな物語の一部として受け止めているという。「アートワークやカラースキームまで含めた世界観が重要なのだ。ひとつ欠けていると、コンプリートした気になれない」と同氏は語る。

スミス氏自身が持っているスウィフトのレコードは「1989」と「1989 (Taylor’s Version)」の2枚だけだ。それでも、スウィフトが婚約者のトラヴィス・ケルシー氏やその兄ジェイソン氏と出演した「New Heights」ポッドキャストの2時間を最後まで見たという。

「自分はファンではないかもしれないが、彼女に対しては大きな敬意と感謝の気持ちを抱いている」とスミス氏は語る。「その存在感に引き込まれざるを得ないのだ」。

[原文:Taylor Swift hype is boosting record store sales]

Melissa Daniels(翻訳・編集:杉本結美)