カルビー 、IP管理にブロックチェーンを導入 新プラットフォーム「かるれっと」で共創型ブランド戦略を推進

記事のポイント
カルビーはブロックチェーン活用のIP管理プラットフォーム「かるれっと」を発表し、クリエイターとの共創を促進するC2B型エコシステムの構築をめざす。
「かるれっと」は契約履歴の透明化やデジタル証明により、信頼性の高いIP取引を可能にし、事業全体のDXも推進する。
NFTやWeb3の実証事例を通じて、カルビーはデジタル空間でのIP活用とブランド接点の拡張を図っている。
カルビーはブロックチェーン活用のIP管理プラットフォーム「かるれっと」を発表し、クリエイターとの共創を促進するC2B型エコシステムの構築をめざす。
「かるれっと」は契約履歴の透明化やデジタル証明により、信頼性の高いIP取引を可能にし、事業全体のDXも推進する。
NFTやWeb3の実証事例を通じて、カルビーはデジタル空間でのIP活用とブランド接点の拡張を図っている。
「かるれっと」でC2B型エコシステム構築へ
「かるれっと」は、分散型ID(DID、Decentralized Identifier)とブロックチェーン技術を活用し、IPの利用許諾や権利管理を安全で効率的に行えるよう設計されたIP管理プラットフォームである。
同社は2016年に新商品の開発に特化したユニークな組織としてCalbee Future Laboを広島で発足した。2023年からは新規事業開発に軸足を移し、本社のある東京に拠点を構えている。同ラボの新たな挑戦のひとつが、IPの2次創作を通じた生活者との協働である。
具体的には、同社の「じゃがりこ」などを用いたグッズデザインコンテストを開催し、選ばれた作品を実際の商品として販売。その売上の一部をクリエイターに還元するというモデルをすでに展開している。こうした取り組みの拡大により、1年間でカルビーのライセンス商品が前年度比で約80%増加*するなど、食以外の領域におけるIP活用が大きく進展している。こうした成果を背景に、新たに開発されたのが「かるれっと」だ。
*カルビー調べ:製造数量ベース 2023年度(2023年4月〜2024年3月)、2024年度(2024年4月〜2025年3月)の比較

Calbee Future Laboのディレクターを務める松本知之氏は、「契約情報や利用履歴をブロックチェーン上に記録することで、透明性と信頼性の高いIP流通を実現する。クリエイターが迅速かつ容易に契約ができるため、参入障壁を低減できる」と話す。
同社はこの取り組みを通じて、IPの利用を限定的なライセンシーにとどめず、一般のクリエイターが自由に参画できるC2B(Consumer to Business)型のエコシステムを築こうとしている。また、デジタル技術の導入により、IPの管理やライセンスの発行、販売実績の共有までを一貫してオンライン上で完結できるようにすることで、事業全体のDXも視野に入れる。
発表会では、今後の展望として今年度、複数の実証実験を実施することが明らかにされた。たとえば、「じゃがりこ 細いやつ」のデザインコンテストで選ばれた作品については、「かるれっと」を介してライセンス契約を行い、商談・販売へとつなげていく。また、7月には公認クリエイターによる新たなライセンス展開も予定している。
さらに、カルビーはアプリ「ルビープログラム」のユーザー数と、今後展開するカルチャー・コミュニティとの連携を強化し、2030年までに合計1000万人のユーザー基盤をめざすという。IPと顧客接点を多層化することで、「食べる前」や「食べた後」にも続くブランド体験を創出し、生活者との長期的な関係構築を進めていく方針だ。
NFTとWeb3活用でIP接点を拡張
同CXチームのマネージャーを務める関口洋一氏は、これまでカルビーが実施してきたNFTキャンペーンやWeb3プロジェクトなどの実証事例を紹介。同氏は、2022年から開始された一連のNFTキャンペーンやWeb3プロジェクトを振り返り、カルビーが生活者との新たな接点をデジタル空間でどう築いてきたかを紹介。プロ野球チップスのカードのNFT化、ゲーム内キャラクターとしてのIP展開などを通じて、IPそのものの価値や活用可能性を検証してきたと語った。

さらに、IP活用における信頼性の確保には「誰が誰にどのIPをどのような条件で貸し出したか」を可視化する仕組みが不可欠であると強調。その課題を解決するため、「かるれっと」にはJPKI(公的個人認証サービス)や分散型ID(DID、Decentralized Identifier)、検証可能なデジタル証明書(VC)を活用し、権利の可視化と契約の自動化を実現していると述べた。
「個人情報を過度に開示せずに、正当なIPの利用者であることを証明できる仕組みが必要だった」とし、従来であれば運転免許証や顔写真の提出が求められていた本人確認を、プライバシーを保った形で簡素化できる点を、導入の意義として挙げた。
さらに、「これまで難しかった企業IPを正規に借りることができるようになることは、クリエイターにとって大きな意味がある」と語り、IP利用における新たな機会創出に向けた取り組みであることを強調した。関口氏は、「かるれっと」を通じて、IP活用にまつわる技術的・制度的な課題の解消を図るとともに、IP管理の透明性と信頼性を担保する新たなワークフローの社会実装に向けて意欲を示した。
今回の発表会では、カルビーの事業展開に対する新たなアプローチも提示された。あくまで食品メーカーとしての原点を大切にしながらも、「カルビーの商品を食べて笑顔になる」体験を、より多様な文化やライフスタイルに接続する構想である。同社取締専務執行役員の笙啓英氏は、カルビーが培ってきた「フレンドリーで親しみやすい」ブランドイメージを活かしながら、生活者との関係性を「食べる」だけでなく「共創する」へと進化させていく方針を示した。

文・撮影/坂本凪沙
