車の「タバコ装備」ほぼ絶滅? かつては「定番品」 新車の標準装備から激減した訳

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灰皿やシガーライターなどの「たばこ装備」なぜ減少?

 クルマには快適で過ごせるような装備が多数備わっています。

 一方で過去に標準装備だったものの、現在ではオプションのみに切り替わった装備もあり、「シガーソケット」と「灰皿」が該当します。なぜこうした装備は減少傾向にあるのでしょうか。

最近、あまり見かけないシガーライター

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 たばこの装備のうち、灰皿は見たことがあるという人が多いでしょう。一方でシガーライターは、単語だけ聞いてすぐに思いつくという人は多くないかもしれません。

 シガーライターは、クルマに装備されていた電熱式のタバコ着火装置で、シガレットライターとも呼ばれています。

 シガーライターは車内のソケット部分と組み合わされ、ボタンのように押し込むことで通電し、渦巻状の電熱線が熱を持つことでたばこに着火できる仕組みとなっています。

 こうした灰皿やシガーライターなどのたばこ装備は、かつてクルマに標準装備されていました。

 しかし、現在のクルマの装備ではほとんど見かけることがありませんが、一体なぜなのでしょうか。

 これには、時代の変化が要因のひとつとして大きく関係しています。

 たばこや医薬品、食品などを扱う日本たばこ産業(JT)は、1965年から2018年まで毎年全国タバコ喫煙調査を実施。

 これによると、喫煙率がもっとも高かったのは1966年で、女性18%、男性83.7%という数値となっており、当時の男性は全体の8割が喫煙者であったことが分かります。

 このため、駅のホームや電車、飛行機といった交通機関など、いたるところに灰皿が設置され、さまざまな場所でたばこを吸うことができました。

 また総務省統計局の小売物価統計調査によると、1966年当時のたばこの銘柄のひとつである「ハイライト」は1箱70円と、現在のたばこの価格と比べても大幅に安価であり、手軽にたばこを吸うことができた時代といえます。

 その後数値は徐々に下降傾向になり、1980年には女性14.4%、男性70.2%、元号が平成となった1989年には女性12.7%、男性61.1%となっていきます。

 時代の変化とともに、健康志向の高まりや喫煙規制が強まっていく傾向があったためです。

 また、現在では当たり前になっている消費税ですが、1989年に初めて導入され当時は大きな騒ぎとなり、国民の消費活動にも大きな影響を与えました。

 2012年には女性14%、男性49.1%と、男性の喫煙率は5割を下回る数値に。

 その後2018年には改正健康増進法が成立し、事務所や飲食店など多くの人が利用する施設を原則禁煙となりました。

 JTが最後に発表した2018年の喫煙率は、女性8.7%、男性27.8%とピーク時と比べて大きく数値が低下しています。

 さらに現在では、国全体で禁煙対策が強まり、「多くの施設において屋内が原則禁煙に」「20歳未満の方は喫煙エリアへ立入禁止に」「屋内での喫煙には喫煙室の設置が必要に」といった項目がマナーからルールへと変化し、全面施行される動きになっています。

 ある自動車メーカーの関係者は、以下のように話します。

「現在販売しているクルマには、標準装備でシガーライターがついているものはありません。

 またシガーライターのオプション設定がないクルマすらあります。

 これには、世の中の喫煙率が減っていると同時に、車内での喫煙に対するニーズも減少していることが要因といえます」

※ ※ ※

 このように、時代の変化とともに、健康志向増加などの影響で国全体が禁煙を進める動きとなり、灰皿やシガーライターなどのたばこ装備も徐々に減少するようになったことが要因のひとつといえます。

現在のたばこグッズ事情は?

 一方で最近のたばこグッズ事情はどうなのでしょうか。これについて、オートバックスの広報担当者は以下のように話します。

「たばこ装備がクルマの標準装備からなくなっていくにつれ、後付けのたばこ装備は充実してきています。

 電子たばこも流行しており、アイコス専用のグッズが一番多く販売されています」

電源用となっているシガーソケット

 煙の出ない電子たばこが流行していることで、一定ユーザーには電子たばこの充電グッズなどが支持されているようです。

 また紙巻たばこ用のグッズについて、前出の担当者は以下のように話します。

「紙巻たばこ用の灰皿にも、一定数の需要があります。

 昨今は、外でたばこを吸える場所がかなり限られているのが実情です。

 そのため、プライベート空間である車内でたばこを吸う人が増えてきていると感じます」

 灰皿やシガーライターなどのたばこ装備は、かつて当たり前の装備のひとつだったものの、現在では標準装備されておらず、これからクルマに乗る、クルマを買う予定というユーザーにとっては目新しい装備ともいえるでしょう。

 こうした時代の変化とともに、車内の装備も変化しつつあります。