指揮官不在のままレスター始動 「前監督の買い物」岡崎慎司の立場は!?
注目の日本代表FWは、同日の渡英で初日の練習は免除。他にも、同じく新加入の左SBクリスティアン・フクス、再契約交渉中だったエステバン・カンビアッソ、主将のウェズ・モーガンらが後日合流を許されていた。
そして、当日の練習場に不在だった要人がもう1人。その6日前に前監督となったナイジェル・ピアソンだ。
クラブの公式声明によれば「根本的な見解の相違」が解雇の理由。過去に傍若無人とも受け取れる言動があったピアソンには、昨シーズン後半に大鉈を振るおうとしたオーナーに意見した実子でもある副会長さえ匙を投げ、今回はその副会長の口から解任が告げられた。
4月以降の9試合を7勝1分け1敗というラストスパートで降格を回避し、上昇気流に包まれて昨シーズンを終えていたはずのチームには、一転して混沌とした空気が漂う結果となった。
伝統のスタイルを持つクラブであれば話は別だろう。監督が誰でもチームの方向性は常に見えている。だが、レスターはその類いではない。
昨シーズンまでのピアソン体制は攻撃に主眼を置いていたが、プレミアリーグでの最盛期は「しぶとい集団」としての5年間。1995年からのマーティン・オニール(現アイルランド代表)監督時代で、当時の決め手はカウンターの印象が強い。
噂の後任候補には、安全第一のサム・アラダイス(前ウェストハム監督)と積極果敢なユルゲン・クロップ(前ドルトムント監督)という対照的な両者が含まれている。つまり、今後のチーム像は新監督次第。「前監督の買い物」という目で見られがちな加入済みの新戦力にとっては特に不安な状況だ。
そのひとりである岡崎は、ピアソン体制下では2トップの一角に定着する可能性も高いと思われた。しかし、アラダイスのような守備重視の新監督が1トップを基本とするようなことになれば、逆にベンチに根を張る危険性が高まる。
ともに「乗り気」と言われるニール・レノン(現ボルトン監督)やクラウディオ・ラニエリ(前ギリシャ代表監督)も堅守を好む監督だ。
人選にかかわらず、フロントは降格したクイーンズ・パーク・レンジャーズのターゲットマンとして、昨シーズンのプレミアで18得点を挙げたチャーリー・オースティン獲得に動いてもいる。加入となれば、昨シーズン11得点のレオナルド・ウジョアが健在の1トップ争いで、岡崎の序列は最高でも3番手だ。
共同助監督のひとりとして暫定的にプレシーズンを仕切るスティーブ・ウォルシュは、「チームに最適」とまで言って岡崎を買っているが、新監督就任後も補佐役でいるという保証はない。
攻撃志向の監督が後任となった場合も、噂に挙がる候補者のひとりであるケビン・キーガン(元イングランド代表)のようにオーソドックスなタイプならまだしも、クロップのようなパスサッカー信奉者が岡崎を「置き土産」として歓迎するかどうかは怪しい。
素早い連携が得意とは言い難い29歳の和製CFよりも、昨冬に加入した24歳のクロアチア産「9.5番」アンドレイ・クラマリッチのほうが重宝されるのではないか。
むろんクロップ招聘は非現実的だ。「意中」とされるマンチェスター・ユナイテッドをはじめ、充電期間を経た来夏にはプレミア上位勢から任地を選べるかもしれないのだ。
オーナーの第1希望はフース・ヒディンクと見られている。だが、母国オランダの代表監督を辞したばかりで「リタイア」説もある名将が、今シーズンも残留が目標となるレスターに出向くとは思えない。
巷には、『スカイベット』社のように解雇直後のピアソンを新監督候補に含めるブックメイカー(賭け屋)もある。現実となれば岡崎には追い風が吹くが、それほど先が見えないことを意味する人事予想でしかない。
レスターの青を身にまとう岡崎の今後は、彼自身のアピールと同等にまだ見ぬ新監督の考え次第。レスターのプレシーズンが「灰色」の中で幕を開けた。
文:山中忍

