SH、P、N、F…。その昔、ケータイといえば機種名の頭はこれらのアルファベット。現在では、ちょっと懐かしい感じさえもしてしまう(写真はイメージです)

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日本国内における携帯電話の「メーカー別出荷台数シェア」が、近年、大きく変化している。

今から5年前の2008年度を見ると、シャープ(23.0%)、パナソニックモバイル(17.8%)、NEC(13.0%)、富士通(12.8%)、ソニー・エリクソン(7.5%)がトップ5を占めていた。つまり、ガラケーといえば国内メーカーの独壇場だったのである。

では、これが2012年度にはどうなったか。上からアップル(25.5%)、富士通(14.4%)、シャープ(14.0%)、ソニーモバイル(9.8%)、サムスン電子(7.2%)と、勢力図が大きく変わってしまったのである。

さらに、現在の主戦場となっているスマホの出荷台数のみに限定すると、アップルは35.9%とさらにシェアを増やし、5位のサムスンも8.5%と数字を上げている(以上、出典「MM総研」)。つまり、スマホが普及すればするほど、国内メーカーのシェアは減少しつつあるのだ。

現在ドコモは、サムスンの「GALAXY S4」とソニーモバイルの「XPERIA A」を、夏商戦の“ツートップ”と位置づけ、大プッシュしている。近い将来、ドコモがiPhoneを取り扱うなんてことになれば、ソニーモバイル以外の国内メーカーは壊滅の危機に直面してしまうかもしれない。

では、なぜスマホの普及とともに日本のメーカーが衰退し、海外勢が躍進する結果になってしまったのか? ケータイ研究家で青森公立大学准教授の木暮祐一氏は以下のように分析する。

「日本のケータイ市場は、キャリアが主役となり、ユーザーに対していろんなサービスをてんこ盛りで提供していくという独特の構図になっています。そのため、機種開発にあたっても、キャリアが主導する面が少なくありません。一方、端末メーカーからすれば、キャリアの言うとおりに製品を作っていれば、キャリアが買い上げてくれる。こんな楽なマーケットはなかったんです」

もちろん、すべての日本のメーカーがそうだったわけではない。

「実はかつては、キャリアを通さずに販売されている製品もありました。しかしほぼ同じ製品なのに、キャリアが販売すると、キャリア独自の値引きなどがついて、大幅に割安になる。対して、メーカーが独自に販売する端末には、そうした割引施策がない。となると、誰もメーカーの独自端末を買わなくなりますよね。そうして、日本のケータイは、キャリアのみが販売するようになっていったのです。そしてこれは、海外勢の参入を阻む障壁になっていました」(木暮氏)

そうして、国産ケータイは“ガラパゴス”と呼ばれるようになった。

「しかし、世の中の主流がスマホになり、この流れは一変します。スマホなら、OSは共通ですから、日本市場向けへのカスタマイズもソフトウエアレベルでOKになる。日本市場だけを相手にしている日本メーカーと、世界規模でビジネスを展開するアップルやサムスン……、どちらが価格競争力があるかは明らかです。こうして、流れがスマホに傾くなか、日本メーカーの地位はどんどん低下していったのです」(木暮氏)

シャープ、パナソニック、富士通、ソニー、NEC。日本が世界に誇るメーカーたちの巻き返しに期待したい。

■週刊プレイボーイ28号「瀕死のジャパン端末とキャリアショップの悲鳴」より