「いっそ死んでくれ」――。ソチ冬季五輪・ショートトラック男子5000メートルリレーで、金メダルの有力候補だった韓国チームがメダルを逃したことで、韓国内から激しいバッシングを浴びせられている。

大韓体育会は2014年2月14日のツイッターで、「いま選手たちに最も必要なのは激励と応援です」とコメント。火消しに躍起だ。

「そのまま黒海で飛び降り自殺しろ」

2014年2月13日に行われたショートトラック男子5000メートルリレーで、韓国チームは、残り数周のところでイ・ホソク選手が米国選手と接触し転倒。決勝に進めずメダルへの機会を逃した。

これに韓国のネットユーザーなどが大激怒。「金メダルを取らせるために税金を払っているのに転倒するとは。いっそ死んでくれ」「帰国せずそのまま黒海で飛び降り自殺しろ」などと、イ選手への罵倒が飛び交った。

イ選手は前回のバンクーバー五輪のショートトラック男子1000メートルの銀メダリストだ。中国メディアの騰訊体育(2月15日付)は、「五輪選手でも失敗すれば『いっそ死ね!』と言われる」と報じた。ネットユーザーらの「怒り」はあまりに激しい。

さすがに「死んでくれ」は行き過ぎとも思えるが、転倒したイ選手を、チームメイトで後輩のシン・ダウン選手がかばったことが、火に油を注いでしまった。

中央日報日本語版(2月15日付)によると、シン選手が書いた手紙を、大韓体育会はツイッターに掲載。「ホソク先輩はノ・ジンギュ先輩のケガで突然オリンピックに出場することになりました。十分に準備できていない状況でも、リレーのメダルをとるために、私たちの兵役免除のために苦労されました」と訴え、「決勝に進出できず最も悔しいのは私たちなのに、なぜ皆さんが悪口を言うのでしょうか。どうか叱咤はやめてください」と伝えた。

この「兵役免除のために」が、よくなかった。オリンピックへの参加目的が「兵役免除」ではないかとの憶測が広がり、「怒り」の矛先がシン選手にも向けられた。

これに対してシン選手は2月16日、自らのフェイスブックで「ぼくの本当の意図を理解してもらえず、兵役免除という言葉にばかり反応しているようで残念だ」としたうえで、「兵役免除を目的に運動しようとは1回も考えたことはない」と、訴えている。

ショートトラックは「お家芸」のはずなのに…

こうした「怒り」の背景には、「お家芸」のはずのショートトラックが、今回のソチ五輪ではふがいない結果に終わっていることがある、とみられる。韓国勢のショートトラックの成績は2014年2月16日まで、銀1銅1。前回のバンクーバー大会が男女あわせて金2銀4銅2と、韓国の14のメダルのうち8個をたたき出したのだから、いかにもさみしい。

しかも、2月13日のショートトラック男子1500メートルでは、韓国からロシアに国籍を変更して出場したビクトル・アン選手が銅メダルを獲得。アン選手は2006年のトリノ五輪で、安賢洙(アン・ヒョンス)として韓国に3個の金メダルをもたらした選手で、中国メディアの騰訊体育によると、韓国の一部メディアと国民はアン選手を「裏切り者」と批判したと報じた。

さらには13日の女子ショートトラック500メートルの決勝戦で、英国のアリス・クリスティ選手がイタリアの選手と接触し転倒。先頭を滑っていた韓国のパク・スンヒ選手が巻き込まれ、銅メダルに終わったことについて、クリスティ選手が競技後、自身のフェィスブックでパク選手に謝罪したところ、怒りが収まらない韓国人ネットユーザーから、「パク・スンヒの4年にわたる努力を破壊した」「韓国国民は永遠にお前を許さない」などといった罵詈雑言が寄せられたという。

ふがいない状態が続く「お家芸」への鬱憤が、選手らにぶつけられているのかもしれない。