家の固定電話には詐欺電話に注意呼びかけるシール貼っていたけれど…ニセ警察詐欺、考える間を与えない手口とは
金沢市の女性(86)が、警察官をかたる詐欺で約55万円をだまし取られた。
家族が近くにおり、詐欺被害防止を訴えるチラシを見ていたのにあっけなく被害に遭った。「とっさのことで頭が回らなかった」。取材を進めていくと、考える間も与えない手口の巧妙さが見えてきた。(城戸口瑞花)

◇
3月上旬のある日。午後4時半頃、電話が鳴った。「石川県警察本部です。あなたのキャッシュカードと通帳が悪用されているため使用できません。全て警察本部で預かるので他の者が取りに行きます」。電話口の男はそう告げた。
女性は次女と2人暮らし。この日は関東で暮らす長女が仕事で金沢に来ており、実家に帰省する日だった。長女が帰ってくるのを楽しみにしており、いつも以上に夕飯の支度に力をいれて忙しくしていた。
女性宅の固定電話は電話番号が表示されない。親戚など知人から電話が多かったため、この日も電話が鳴ると、反射的に受話器を取った。“警察”からの電話は初めてで「どきどきして怖かった」。警察本部と言われて信じてしまい、「悪用されて危ないのであれば預けよう」。すぐにそう考え、受取人を待つことした。
◇
電話を終えてから約5分後、自宅のインターホンが鳴った。玄関のドアを開け、そこにいたのは帽子、長袖、長ズボン、靴も全て黒色の中肉中背の男。「警察本部の警察官です」と言ったが、名前は名乗らなかった。女性がキャッシュカード2枚と通帳2冊を差し出すと、「新しいカードなどを持ってきます」と言い残し、急ぐようにその場を離れた。
それから5時間ほど経過した午後10時頃。家族で夕飯を食べ終わっても、誰もカードを持ってこなかった。怪しいと初めて感じた。警察官であるはずなのに、男の服装が全身真っ黒であったことも不審に思えてきた。
「自分でなんとかしなければ」。そんな責任感から同居している次女に相談することなく110番した。やはりだまされていた。
◇
口座から引き出されたのは計55万1000円。暗証番号は忘れた時のために、通帳に書き留めていた。現金自動預け払い機(ATM)では1日の引き出しの限度額が50万円であったこと、同日中に詐欺被害に気づいてキャッシュカード、通帳を利用停止にしたため、さらなる被害を防ぐことはできた。
被害に遭ってから、女性は自宅に防犯カメラを取り付け、固定電話の契約は解除したという。携帯電話には詐欺電話対策のアプリを入れた。
「後から落ち着いて考えたら怪しい、詐欺だとわかる」。町内の回覧板でも注意喚起があったが、「いきなりのことで余裕がなかった」と振り返る。
「自分のことは自分でせなと思っていた。けれど大事なことは相談しないと」。今後は二度と詐欺に遭わないよう、相談することを心がけているという。
約30分の犯行 受け取り役待機か
「今回の詐欺は、典型的な預貯金詐欺といわれる手口だ」と話すのは、石川県警組織犯罪対策課匿名・流動型犯罪グループ対策室の田中辰之室長だ。女性に電話をかけてきたのは偽の警察官だったが、親族を装って電話をかけてくることもある。口座が犯罪に利用されているとうたってカードや通帳をだまし取るのが手口だという。
女性宅に電話がかかってきてから現金が引き出されるまでの時間は約30分。長く同じ場所に住んでいる場合は、卒業アルバムなどから氏名、住所、電話番号がまとまって流出している場合もあるといい、「犯人が女性宅に電話をかけた際には、キャッシュカードの受け取り役が付近で準備していた可能性がある」と分析する。
「国際電話や非通知の番号、知らない番号には出ないということが一番の対策だ」と強調する。万が一、いつもの癖で電話に出てしまっても、「電話口で言われたことだけで判断せず、一度電話を切って着信履歴から電話番号を調べたり、家族に相談したりするのが防犯につながる」と警鐘を鳴らす。

