「鉄分」と「ビタミンC」を同時に摂取するとどうなるかご存じですか?管理栄養士が解説!

鉄分とビタミンCの関係性とは?メディカルドック監修医が効果・おすすめの食べ合わせ・注意点などを解説します。

監修管理栄養士:
佐藤 直美(管理栄養士)

病院・老健・老人ホーム・障害者施設などで給食管理・調理・栄養管理・衛生管理などに携わってきました。
2015年管理栄養士免許取得。

「鉄分」とは?

鉄分は体内に存在する必須ミネラルの一種で、私たちの体内に約3~4g存在し、健康維持に欠かせない栄養素です。主に赤血球中のヘモグロビンの材料となり、肺で取り込んだ酸素を全身へ運ぶ役割を担っています。また、筋肉に存在するミオグロビンやエネルギー代謝に関わる酵素の構成成分としても利用されています。体内の鉄の多くは血液中に存在していますが、一部は肝臓や脾臓などに貯蔵されています。しかし、体内で新たに作り出すことはできないため、毎日の食事から継続的に摂取することが大切です。鉄には肉や魚などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や豆類などに含まれる「非ヘム鉄」があります。一般的にヘム鉄の方が吸収されやすく、非ヘム鉄は吸収率が低いとされています。そのため、非ヘム鉄を摂取する際にはビタミンCを一緒に摂ることが勧められています。

鉄分の一日の摂取量

日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、成人男性(18~49歳)の鉄分の推奨量は1日7.0~7.5㎎、成人女性(18~49歳)では月経の有無によって異なり、月経がある場合は10.0~10.5㎎、月経がない場合は6.0㎎とされています。特に月経のある女性は、毎月の出血によって鉄分が失われるため、男性よりも多くの量が必要とされています。また、妊娠中は胎児の成長や母体の血液量増加に伴って必要量が増加するため、通常時よりも多くの鉄分摂取が必要となります。妊娠初期で1日あたり2.5㎎、中期・後期では8.5㎎の付加量が設定されています。さらに授乳中も母乳を通じて鉄分が利用されるため、1日あたり2.0㎎の付加量が推奨されています。

鉄分の効果とは?

鉄分の主な役割は、赤血球の中にある「ヘモグロビン」というたんぱく質の材料になることです。ヘモグロビンは、肺に取り込まれて酸素と結びつき、血液の流れに乗って全身の細胞へと酸素を運ぶ役割を担っています。鉄分は全身へ酸素を運ぶだけでなく、細胞内でエネルギーを産生する酵素の働きにも関与しています。そのため、体力や集中力の維持を支える重要な栄養素といえます。

鉄分の過不足で現れる症状とは?

鉄分は、不足しても摂り過ぎても体にサインが現れます。鉄分が不足すると、体内で十分なヘモグロビンを作れなくなり、全身の組織へ十分な酸素を届けにくくなります。これにより、強いだるさ、疲労感、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみといった症状が引き起こされます。また、爪がスプーンのように反り返る「スプーン爪」や、氷を無性に食べたくなる「氷食症」が現れることも特徴です。特に月経のある女性や、成長期の子供、激しい運動をするアスリートは不足しやすい傾向にあります。一方、通常の食事で鉄分を過剰摂取することはほとんどありません。しかし、サプリメントや鉄剤を必要以上に大量に摂取すると、体内に過剰な鉄が蓄積されます。初期症状としては吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸障害がみられ、長期的に過剰状態が続くと、肝臓や心臓などの臓器にダメージを与えるほか、皮膚の色素沈着などを引き起こす可能性があります。

「ビタミンC」とは?

ビタミンCは水に溶けやすい「水溶性ビタミン」の一種で、別名を「アスコルビン酸」とも呼びます。ビタミンCは野菜や果物に多く含まれる栄養素で、水に溶けやすく、長時間の加熱や水さらしによって失われやすい特徴があります。体内ではコラーゲンの生成に関与するほか、抗酸化作用を持つ栄養素として知られています。人は体内でビタミンCを合成することができないため、毎日の食事から摂取する必要があります。特に野菜や果物の摂取量が少ない場合には不足しやすくなるため注意が必要です。

ビタミンCの一日の摂取量

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、15歳以上の男女ともに推奨量は100㎎/日とされています。なお、ビタミンCはストレスを感じたり、喫煙することで消費されてしまうため、心当たりのある方は多めに意識して摂取することが推奨されています。ビタミンCは赤ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、いちご、みかんなどに多く含まれています。

ビタミンCの効果とは?

ビタミンCには健康維持に欠かせないさまざまな働きがあります。ビタミンCは抗酸化作用を持ち、体内で発生する活性酸素から細胞を守る働きがあります。健康維持に役立つほか、コラーゲンの生成を助けるため、皮膚や血管、骨などの健康維持に欠かせない栄養素です。また、肌のハリや弾力を保つ働きにも関与することから、美容面でも注目されています。さらに、鉄分の吸収を助ける働きがあり、特に植物性食品に含まれる非ヘム鉄の利用効率を高めることが期待されています。

ビタミンCの過不足で現れる症状とは?

水溶性ビタミンであるビタミンCは、比較的安全な栄養素ですが、過不足による影響は存在します。ビタミンCが著しく不足すると、コラーゲンがうまく作られなくなり、血管がもろくなります。その結果、歯茎や皮膚から出血しやすくなる、傷が治りにくくなる、関節が傷むといった症状(壊血病)が現れます。そこまで重症化しなくても、初期の不足状態では、疲労感、イライラ、肌荒れ、体調を崩しやすくなることがあります。一方で、水溶性ビタミンであるため、一度に大量に摂取しても、吸収しきれなかった余分な量は尿として体外に排出されるため、深刻な毒性は低いとされています。しかし、サプリメントなどで1日に数千㎎といった極端な量を摂取した場合には、下痢、吐き気、腹痛などの症状を引き起こすことがあります。

鉄分とビタミンCを一緒に摂るとどんな効果がある?

鉄分とビタミンCは相性の良い栄養素として知られています。鉄には動物性食品に多いヘム鉄と、植物性食品に多い非ヘム鉄がありますが、野菜や豆類などに含まれる非ヘム鉄は体内への吸収率が低いという特徴があります。ビタミンCには非ヘム鉄を吸収しやすい形に変える働きがあるため、一緒に摂取することで鉄の利用効率向上が期待できます。例えば、ほうれん草や小松菜などの鉄を含む野菜に、レモンやブロッコリー、パプリカなどのビタミンCを含む食品を組み合わせることで、効率的な栄養補給につながります。

鉄分サプリとビタミンCサプリも一緒に摂ると良い?

鉄分サプリメントとビタミンCサプリメントは、一般的には一緒に摂取して問題ないとされています。ビタミンCには鉄の吸収をサポートする働きがあるため、市販の鉄サプリメントの中にはビタミンCが配合されている製品もあります。ただし、サプリメントはあくまでも不足分を補う目的で利用し、基本はバランスの良い食事から栄養を摂取することが大切です。また、鉄分の過剰摂取につながらないよう、用法・用量を守って使用しましょう。なお、鉄サプリメントは空腹時の方が吸収率は高いとされていますが、人によっては胃の不快感や吐き気が起こることがあります。その場合は食後に摂取するなど、体調に合わせて調整しましょう。貧血症状がある場合は自己判断でサプリメントを使用するのではなく、医療機関を受診して原因を確認することが大切です。

鉄分とビタミンCのオススメの食べ合わせは?

牛赤身肉とブロッコリー

牛赤身肉(100g)には約2.5~3.0mgの鉄分、ブロッコリー(100g)には生で約140mg、ゆでた場合で約55mgのビタミンCが含まれています。牛赤身肉に含まれるヘム鉄はもともと吸収されやすい鉄ですが、ブロッコリーを組み合わせることで、食事全体に含まれる非ヘム鉄の吸収をサポートすることが期待できます。牛肉のヘム鉄も吸収率が高いですが、ブロッコリーのビタミンCを合わせることで、食事全体の鉄分(他の付け合わせなどの非ヘム鉄)の吸収もまとめて底上げができることが期待できます。

あさりとパプリカ

あさり(可食部100g)には約2.2㎎の鉄分、パプリカ(½個・75g)には約120㎎のビタミンCが含まれています。あさりなどの貝類も鉄分が豊富に含まれています。パプリカのビタミンCは組織がしっかりしているため、調理による損失が少なく、効率的に栄養を補給できます。

小松菜とキウイフルーツ

小松菜(100g)には約2.8㎎の鉄分、キウイフルーツ(1個・100g)には約70㎎のビタミンCが含まれています。植物性食品中心の食生活を送る方でも取り入れやすく、サラダやスムージーとして手軽に摂取できます。

鉄分とビタミンCを摂取する際の注意点は?

鉄分とビタミンCを意識して摂取していても、飲み物や食品との組み合わせによっては鉄分の吸収効率に影響を与えることがあります。効率よく鉄分を補給するためには、吸収を妨げる要因についても知っておくことが大切です。

タンニン(緑茶・コーヒー・紅茶)との飲み合わせ

緑茶やコーヒー、紅茶に含まれるタンニンは鉄分の吸収に影響を与える可能性があります。ただし、通常の食生活で過度に心配する必要はないと考えられています。鉄欠乏性貧血がある方や鉄剤を服用している方は、食事や服薬の前後1~2時間程度あけると良いでしょう。

加工食品に含まれるリン酸塩に注意

リン酸塩は、インスタント食品やスナック菓子、練り製品などに使用されることの多い食品添加物です。過剰摂取が続くと、カルシウムや鉄などのミネラルの利用効率に影響する可能性があるため、加工食品に偏らない食生活を心がけましょう。

ビタミンCはこまめな摂取が基本

ビタミンCは、一度にたくさん摂っても体が吸収できる量には限界があり、余剰分は数時間で尿として排出されてしまいます。そのため、朝食などにまとめて摂るのではなく、朝・昼・晩の3食に分けて、こまめに食事から取り入れることが効率的な摂取のコツです。

「鉄分とビタミンC」についてよくある質問

ここまで鉄分とビタミンCなどを紹介しました。ここでは「鉄分とビタミンC」についてよくある質問に、メディカルドック監修管理栄養士がお答えします。

鉄分とビタミンCを同時に摂取するとどんな効果がありますか?

佐藤 直美(管理栄養士)

ビタミンCを同時に摂取することで鉄分が吸収されやすい形へと変化し、鉄分の吸収率向上が期待できます。特に野菜や豆類に含まれる非ヘム鉄でその効果が大きいとされています。
特に植物性食品(野菜や豆類)に含まれる「非ヘム鉄」は、そのままでは体に吸収されにくい性質を持っています。しかし、ビタミンCを同時に摂取することで、鉄分が吸収されやすい形へと変化し、鉄分の吸収率の向上が期待できます。特に野菜や豆類に含まれる非ヘム鉄でその効果が大きいとされています。効率よく鉄分を補給するためには、この2つを組み合わせて摂取することが推奨されています。

鉄分とビタミンCでオススメの食べ合わせはありますか?

佐藤 直美(管理栄養士)

ビタミンCを多く含む野菜や果物を組み合わせる方法がおすすめです。「ほうれん草や小松菜にレモン汁をかける」「かつおやまぐろの刺身にレモンを添える」「食後にいちごやキウイフルーツを摂る」などが取り入れやすい組み合わせです。
鉄分とビタミンCの食べ合わせとしておすすめなのは、ビタミンCを多く含む野菜や果物を組み合わせる方法です。日常に取り入れやすい具体的な組み合わせとしては、「ほうれん草や小松菜のパスタや炒め物に、レモン汁をかける」、「かつおやまぐろの刺身にレモンを添える」、「食後にいちごやキウイフルーツを組み合わせる」などがあります。少しの工夫で、鉄分とビタミンCを効率よく摂取できます。

鉄剤とビタミンCを一緒に飲むとどうなりますか?

佐藤 直美(管理栄養士)

一般的には一緒に摂取して問題ないとされています。ただし鉄剤の種類によっては服用方法が指定されている場合があるため、医師や薬剤師の指示に従いましょう。
鉄剤とビタミンCは一般的に一緒に摂取して問題ないとされています。ビタミンCには鉄の吸収を助ける働きがあるため、医療機関で処方される鉄剤や市販の鉄サプリメントと併用されることもあります。ただし、鉄剤の種類によっては服用方法が指定されている場合があるため、医師や薬剤師の指示に従いましょう。

編集部まとめ

鉄分とビタミンCは相性の良い栄養素です。ビタミンCは鉄の吸収をサポートする働きがあり、特に植物性食品に含まれる非ヘム鉄を摂取する際に役立ちます。鉄分を効率よく補給したい方は、鉄を含む食品だけでなく、ビタミンCを含む野菜や果物も意識して組み合わせることが大切です。特に月経のある女性や妊娠中の方、成長期の子供は鉄不足になりやすいため、日頃からバランスの良い食事を心がけましょう。

「鉄分」と関連する病気

「鉄分」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

鉄欠乏性貧血

神経系の病気

むずむず脚症候群

婦人科の病気

過多月経

消化器系の病気

胃潰瘍

代謝性疾患の病気

鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)

「鉄分」と関連する症状

「鉄分」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

強い疲労感

めまい立ちくらみ動悸

息切れ

倦怠感

スプーン状爪

氷食症

参考文献

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書|厚生労働省

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年|文部科学省

健康食品の安全性・有効性情報|国立健康・栄養研究所