【闘病】8歳で突然の1型糖尿病。「泣くのは今日まで」絶望した母を救った娘の言葉
「泣くのは今日までにしよう」。診断当日、8歳のしーちゃんが発した一言に、母のあーちゃんは救われました。2022年6月17日、しーちゃんは1型糖尿病と診断されました。1型糖尿病は、膵臓からインスリンがほとんど分泌されなくなり、生命を維持するために毎日のインスリン投与が必要となる病気です。診断から4年。現在12歳・中学1年生となったしーちゃんは、「1型糖尿病は私の一部」と笑顔で語ります。日々の生活の中で母娘が積み重ねてきた工夫や気づき、同じ病気と向き合う子どもたちに伝えたいメッセージとは。しーちゃんとあーちゃんが共に歩んできた4年間を振り返りながら、お話を伺いました。
体験者プロフィール:
しーちゃん(現12歳・中学1年生)
体験者プロフィール:
あーちゃん(しーちゃんの母)
2022年6月17日、しーちゃんが8歳で1型糖尿病と診断。発症直後からInstagramで日常の様子や血糖値データを包み隠さず発信し、フォロワーは1,500人以上に。日本IDDMネットワークが新規診断患者家族に届ける「希望のバッグ」同封冊子に体験談を寄稿するほか、しーちゃん自ら制作したキャラクター「インスリンちゃん」を通じた1型糖尿病の啓発活動にも取り組む。
https://www.instagram.com/shi_chan1010_mam
「泣くのは今日までにしよう」--8歳の娘が見せてくれた、しなやかな強さ
編集部
1型糖尿病と診断された当時、どのように感じられましたか?また、しーちゃんさんにはどのようなことを話しましたか?
あーちゃんさん
4年前の6月17日に診断されたのですが、4年も経つと当たり前の日常になってしまって、今回の取材をきっかけに入院当時の日記を読み返しました。入院3日目の日記に「やらなくてはいけないことが増えるけど、やめなくてはいけないことは何一つない」と書いてあり、これがしーちゃんへのメッセージだったと記憶しています。日本IDDMネットワークの「希望のバッグ」同封冊子への寄稿でも同じような言葉を書いています。診断されたその日、主治医の先生が「1型糖尿病の子たちは何も悪くない。パフェだって2個でも3個でも食べていいんだよ」と言ってくださいましたが、しーちゃんが冷静に「でも私、パフェ好きじゃないから、2個もいらないです」と返して、その一言で空気が和んで、私はとても救われました。
編集部
しーちゃんさんに「泣くのは今日までにしよう」と言われた時、お母さんとしてどのように受け止めましたか?
あーちゃんさん
本当に驚きました。8歳で突然のことなのに、そんな言葉が出てくるなんて。素直に「偉いな、かっこいいな、強いな」と思いました。「私ももう泣かないから、ママも泣かないでね」と言われましたが、私はもともと泣き虫で約束はまったく守れませんでした。しーちゃんは本当に泣かずにいましたが、入院中のお絵かきの片隅に「ママに会いたい」とこっそり書いてあるのを見つけて、明るく前向きに頑張っていながら内側に寂しさを抱えていたんだとわかりました。そのしなやかな強さが誇らしかったです。
編集部
当時、発症してから大変だったことや、今もよく覚えていることはありますか?
しーちゃんさん
あまり覚えていないのが正直なところです。覚えていることといえば、最初の1年半はペン型の注射を使っていました。針をお腹に刺すので危ないしみんなの目も気になるので、給食の前は先生の教卓の裏で打っていたことです。今思うと、あの頃は結構大変でした。
「やることが増えるだけ」--リブレ・インスリンポンプが変えた、子どもらしい毎日
編集部
毎日の血糖管理はどのような流れで行っていますか?
しーちゃんさん
朝起きたらリブレ(持続血糖測定器)で血糖値(測定しているのは皮下の間質液のグルコース濃度)をチェックして、朝ごはんの前にインスリンポンプを操作してインスリンを注入します。ポンプはクリップで洋服に引っかけていて、ポチポチ操作するだけで入れられます。食事の前は必ず注入し、あとは2時間に1回ほど血糖値をチェックして低ければ補食(低血糖対策に少量食べること)、高ければ補正するのが理想ですが、忘れることも多いです。リブレは2週間に1度、ポンプのセンサーは3日に1度交換します。体育などの運動前は血糖値を確認して、自分で判断してポンプを外したり補食したりしています。
編集部
インスリンポンプに切り替えたきっかけを教えてください。
しーちゃんさん
ペン型注射は痛いし嫌で、「打ちたくないから食べるのをやめようかな」という気持ちになってきていました。長い間ポンプに変えたいと思っていました。
あーちゃんさん
夜中の補正が大変だったり、食事のたびに打つことがしーちゃんの負担になっているのが見えていて、こちらから先生にお願いして切り替えました。ポンプに変えてからは場所を選ばず人目も気にせず、安全・簡単に打てるようになりました。ポンプのおかげでしーちゃんの生活の質は大きく上がりました。医学の進歩、医療機器や技術の進化に本当に感謝しています。
編集部
リブレ2を使って特に助かったと感じる場面はどんな時ですか?
あーちゃんさん
データが私のスマートフォンにリアルタイムで飛んでくるので、離れていても血糖値が常に分かります。特に助かったのは移動教室や2泊3日の移動教室の時です。普段と違う活動量でコントロールが難しく、低血糖(70mg/dL以下)になっても本人が気づかないことがありましたが、遠くから数値を見て先生に電話できたので安全に乗り越えられました。中学校ではスマートフォン禁止の校則で私はモニタリングすることができなくなってしまいましたが、帰宅後にデータを確認しながら信頼して見守っています。
「1型糖尿病は私の一部」--インスタで繋がる仲間たちへ、12歳から届けるエール
編集部
発症2周年に「1型糖尿病は私の一部。なくてはならないもの」と話してくれましたが、しーちゃんさん自身の気持ちを教えてください。
しーちゃんさん
今では「1型糖尿病という個性がなくなったら私は何をすればいいんだろう」と思うくらいになっています。中学入学の自己紹介で1型糖尿病のことを伝えようとしたのですが、他に言いたいことがありすぎて時間が足りなくなってしまいました。1型糖尿病であることは、それくらい当たり前のことで、今の私には欠かせない個性になっています。糖尿病というと2型糖尿病(体質に加えて肥満、運動不足、食生活などさまざまな要因が重なり、血糖値が高い状態が続くタイプの糖尿病)と混同されることが多かったので、正しく知ってもらいたいと考え「インスリンちゃん」というキャラクターも作りました。
編集部
Instagramで同じ境遇のご家族から届くメッセージで、心に残っているものはありますか?
あーちゃんさん
特に小さなお子さんのご両親からのメッセージが嬉しく思います。「しーちゃんの動画を見て子どもが自分でポンプ交換できるようになりました」や、「家族全員が笑顔に勇気をもらっています」など、たくさんのメッセージをいただいています。しーちゃんよりも小さな子が泣きながら交換している姿を見ることもあり、しーちゃんのニコニコしている動画をきっかけに、頑張ってみようかなと思ってくれる子が増えたら、という思いで発信を続けています。
編集部
今まさに発症して不安でいっぱいの親御さんへメッセージをお願いします。
あーちゃんさん
私も最初は毎日泣いていました。一生治らない、毎日インスリンを打たなくてはいけないという現実に本当に絶望していました。しかし、4年経つと、こんな風に笑って話せるようになりました。多くの親御さんに伝えたいことは「やることが増えるだけで、本当に大丈夫だよ」ということです。夢も諦める必要はないし、1型糖尿病のおかげで出会えた素敵な仲間もいます。捉え方次第で、人生が豊かになることもあるので安心してほしいと思います。
編集部
最後に、同じ1型糖尿病で頑張っているお友達や子どもたちへ、しーちゃんさんから伝えたいことは?
しーちゃんさん
なんとかなるから大丈夫、と一番に伝えたいです。基本的に何も不安に思うことはありません。また、これは私だけかもしれないですが、1型糖尿病は日常生活の中で意外と得することもあります。もし糖尿病関連で学校を休む時に嫌いな授業があったら、ちょうどよく休めるくらいに考えると良いと思います。捉え方次第で、こんなに気楽に過ごすことができると伝えたいです。
編集後記
1型糖尿病は、膵臓でインスリンをつくるβ細胞が免疫の働きによって壊され、毎日のインスリン投与が必要となる病気です。2型糖尿病とは発症の仕組みや治療法が異なりますが、社会では十分に理解されていない面もあります。突然の診断に、本人や家族が大きな不安を抱くのは自然なことです。一方、しーちゃんさんとあーちゃんさんの4年間からは、医療機器を活用し、周囲の支援を受けながら、学校生活や日々の楽しみを諦めずに過ごせることが伝わってきました。「やることが増えるだけで、やめなくてはいけないことは何一つない」という言葉は、診断直後の子どもや家族にとって大きな希望になるはずです。しーちゃんさん、あーちゃんさんの体験談が、読者の皆様にとって、病気と前向きに向き合うための一助となりましたら幸いです。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

