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英国政府は、地域コミュニティーの象徴ともいえるパブの税負担を軽減するため、事業用不動産に課される固定資産税(ビジネスレート)の20%引き下げを打ち出しました。日本では食料品の消費税減税が議論されていますが、英国は「地域を支える事業」を対象に減税を行おうとしています。英国の固定資産税制度を紹介しながら、日本との違いや今回の政策の狙いを考えます。

英国政府、パブの固定資産税を20%引き下げ

7月24日午前のNHK海外ニュースで、英国政府がパブに課される固定資産税を20%引き下げる方針を打ち出したことが報じられました。

英国では2026年7月にスターマー首相が辞任し、バーナム首相が就任しました。近年では、2022年にわずか約1か月半で退任したトラス首相が大きな話題となりました。サッチャー首相のような長期政権を除けば、英国では首相交代が比較的頻繁に行われています。

今回の減税の詳しい背景は明らかではありませんが、新政権が地域経済への支援姿勢を示す政策である可能性があります。国民生活への配慮を打ち出すという点では、日本で議論されている食料品の消費税減税とも共通する側面があるといえるでしょう。

英国の「固定資産税」は日本とどう違うのか

英国では国税として所得税、法人税、キャピタルゲイン税、付加価値税(VAT)などが課されています。

一方、不動産に関する税には大きく二つの制度があります。

一つは、居住用不動産に課されるカウンシルタックス(Council Tax)です。これはHMRCの資産評価局(VOA)が評価した住宅について、その占有者に課税される地方税です。住宅は評価額によってA〜Hに区分され、それぞれ税額が決められています。

もう一つが、店舗や事務所などの事業用不動産に課されるビジネスレート(Business Rates)です。今回のパブに対する減税は、このビジネスレートの軽減措置を指すものと考えられます。

居住用のカウンシルタックスの仕組み

カウンシルタックスは住宅に対する税金であり、所得ではなく住宅そのものに課税されます。

税額は成人2人が居住していることを前提として設定されているため、単身世帯や成人1人と未成年者のみの世帯では25%の割引が適用されます。

また、フルタイムの学生、学生看護師、実習生、親族以外を介護するケアワーカー、病院や介護施設の入院・入所者、外交官、一部の障害者などについては、一定の条件の下で課税対象から除外されます。

事業用不動産は「ビジネスレート」が課税

事業用不動産には、居住用とは別制度であるビジネスレートが課されます。

イングランドとウェールズでは資産評価局(VOA)が市場賃料などを基に評価額を算定し、その評価額に基づいて税額が決定されます。スコットランドや北アイルランドでは、それぞれ異なる評価機関が同様の役割を担っています。

徴収された税収は地方自治体の財源となり、地域行政を支える重要な税収となっています。

地域を守る減税という発想

英国ではパブは単なる飲食店ではありません。地域住民が交流するコミュニティーの拠点として重要な役割を担っています。

今回の減税は、パブ経営者の負担を軽減するだけでなく、地域コミュニティーそのものを維持することを目的とした政策と考えられます。

日本では消費税減税が議論されていますが、英国は地域に不可欠な事業を対象に税負担を軽減するというアプローチを採っています。減税の対象を広く国民全体にするのか、それとも地域経済を支える業種に絞るのか──今回の英国の政策は、日本の税制を考える上でも参考になる事例といえるでしょう。

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員