お金はかかるし乗り降りし辛いし……ぶっちゃけネガもけっこう出てくる! それでもクロカン四駆の車高を上げる「リフトアップ」が人気なワケ

この記事をまとめると
■リフトアップはボディの最低地上高や対地障害角を改善して悪路での走破性を高める
■リジッドアクスル車では大径タイヤとの組み合わせが走破性向上の鍵となる
■公道で合法的に楽しむには保安基準への適合や直前直左視界の確保など多くの注意点がある
見た目だけじゃない本格カスタム
ジムニーやランクルといったハードコアなクロカン4WDにおいて、リフトアップといって車高を上げるカスタマイズは定番となっている。スポーツカー好きからすると、「車高は下げてこそカッコよい」と思うかもしれないが、リフトアップはクロカン4WDの性能アップに直結する機能的なモディファイである。
最大のメリットは、ボディと地面の距離を稼げること。クロカン4WDのディメンションにおいてアプローチアングルやデパーチャーアングルといった対地障害角を示す専門用語が使われがちだが、これらは急な傾斜や段差においてボディと地面のクリアランスが確保できるかの指標。リフトアップによって車体をもち上げると、物理的にボディと路面が離れるために、悪路で干渉しづらくなり、すなわち走破性アップに直結する。

ただし、通常のリフトアップでは、クロカン4WDのある重要な部品については、まったく路面とのクリアランスが増えていない。それはデファレンシャルケース、マニア的にいえば「デフ玉」である。
ジムニーやランクル70といった古典的なクロカン4WDのサスペンション形式は、前後リジッドアクスルとなっている。トランスミッションから伸びたプロペラシャフトが前後のアクスルにつながり、前後タイヤを駆動するというメカニズムだ。
その構造を考えればわかるように、いくらサスペンションを伸ばしてリフトアップしたところで、デフ玉の位置は1mmも動いていない。対地障害角は増えても、デフ玉の位置が変わらないのだから、最低地上高はさほど変わらないといえるのである。

だからこそ、リフトアップをするのであれば、大径タイヤへの交換がセットメニューになる。サスペンションを変えてリフトアップすると、ホイールの取り付け部分(ハブ)とフェンダーまでの距離が伸びる。つまり、標準装備されているものより、ひとまわり程度は大きなタイヤを装着する余裕が生まれるのだ。
タイヤが大径になれば、そのぶんだけ路面とデフ玉の距離は増える。結果として、ボディもデフ玉も干渉しづらい最強のパッケージを実現できるのだ。このようにオフロード(公道外)におけるリフトアップの狙いは走破性アップと明確であり、クロカン4WDのパフォーマンスを高めるという点ではメリットしかないように思える。

しかし、リフトアップしたクロカン4WDにナンバーをつけて公道を走るには気を付けないといけない点が多数ある。まず日常的に直面するであろう課題は、乗降性の悪化だ。
路面とのクリアランスが大きいということは、乗降するたびにその高さを体感することになる。よじ登るように乗り込み、ジャンプするように降りる……これを毎日繰り返すのはオーナーであれば我慢できても、同乗者には不評となるだろう。
クロカン4WDにはサイドステップを備えているケースもあるが、せっかくリフトアップしようというオーナーであれば、路面と干渉してしまうようなパーツの装着は本末転倒。乗降性の悪化についてはヤセ我慢するほかない。
コストや手間はかかるが合法で公道も走れる
さらに公道を走るという点で課題になるのは車高を上げる幅にある。結論からいえば、現在の保安基準において40mmを超えるリフトアップをするには構造変更を伴う『公認車検』が必要となる。
もともとリフトアップというカスタマイズはジープの故郷であるアメリカで生まれた文化。そのためリフトアップ量についてはインチ単位(約2.54cm)で示すことが多いが、日本の保安基準を考えると、公認車検を通さないのであれば1.5インチアップが限界だったりする。

しかも、これはサスペンションだけで計測する数値ではなく、車両全体の話。前述したようにリフトアップと大径タイヤを組み合わせると、公認車検が必要な全高になってしまいがちだ。しかしながら公認車検を取ったとしても、日常使いにネガが生まれることはある。
立体駐車場などには「全高2.1mまで」と書かれていることが多い。しかし、リフトアップ&大径タイヤ、さらにルーフキャリアまでセットすると、軽々とその基準を超えてしまうことがある。そうなると、駐車場を探すストレスも受け入れる必要が出てくる。
さらに公道を走る上で重要となるのは、道路運送車両法で定められた「直前直左視界」の基準である。これは、公認車検を通すかどうかにかかわらず、クロカン4WDを合法的にリフトアップするには絶対に守るべき基準だ。これは、いわゆるサイドアンダーミラーの基準といえるもので、車両の前方と左方の決められたエリアに設置された目標物(高さ1m、直径30cm)を運転席から確認できなければならないとなっている。

リフトアップは遠くの視界はよくなるかもしれないが、こうした車体近くの死角は増えがちだ。そのため「直前直左視界」の基準を満たすために、カメラやミラーの追加が必要になることは珍しくない。当然ながら、保安基準を満たした性能を実現するには、アマチュアでは対応が難しい。
結果として、リフトアップに長けたプロショップなどに相談、依頼することになる。当然だが、サスペンションやタイヤ以外のモディファイコストがかかってくる。また、タイヤについても大径にしすぎると表示速度がズレるため、スピードメーターの調整が必要になる。これもアマチュアが対応するのは難しい。
このようにリフトアップを合法的に楽しむには、安くないコストがかかることが多い。また、日常的には乗降性の悪化という我慢すべき要素も出てくる。それでもクロカン4WDのもつ悪路走破性を圧倒的に上げるというメリットはかえがたいものがある。本格派のクロカン4WDになるほどリフトアップをモディファイとして選ぶオーナーが多いのも納得だ。



