肉厚で身が軟らかい浜名湖うなぎ「でしこ」のかば焼き(23日、浜松市中央区で)

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 ウナギ養殖でかつて生産量日本一を誇りながら、安い中国産や国内の他産地との競争で後れを取る浜名湖(静岡県)周辺の生産者が、ブランド化戦略で復権を図っている。

 雌雄同体のシラスウナギをオスより美味なメスになるよう育てた「でしこ」を生産し、今月、「浜名湖うなぎ」として地域の特産品を保護する農林水産省の「地理的表示(GI)」登録も実現。26日の「土用の丑(うし)」を前に勢いづく。(浜松支局 狩山晴帆)

 浜名湖養魚漁業協同組合によると、浜名湖で養殖に成功したのは1900年(明治33年)。シラスウナギが大量に取れた上に、養殖に適した水も豊富だったため戦後盛んになり、最盛期には国内生産量の7割を占めた。

 しかし、70年代後半からシラスウナギの不漁のほか、安価な中国産の輸入増加などで衰退した。都道府県別生産量は83年に愛知に抜かれて首位から陥落し、現在は4位。養鰻(ようまん)業者は約400軒から27軒に減り、2025年の生産量1827トンはトップの鹿児島の4分の1程度にとどまる。

 この苦境をはね返そうと、組合が選んだのは「浜名湖うなぎ」のブランド化だ。ミネラル成分豊富な地下水で育つ「浜名湖うなぎ」は「身の軟らかさ、脂の質、うま味のバランスの良さ」で定評があったが、もっとおいしいウナギを生産しようと、22年からウナギのメス化に取り組んだ。

 雌雄同体のシラスウナギは養殖の過程で大半がオスになるが、希少なメスの方が肉厚で身が軟らかく、より美味とされる。女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンを取り入れた餌でメス化させる手法が愛知県で開発されており、組合ではそれを採用。24年から「でしこ」の出荷を始めた。

 今は約20軒の養鰻業者がでしこを生産し、組合が県内外に販路を持つ。ウナギが小さい時と出荷直前の計2回、メス化の確認検査を実施し、焼いて食べる食味検査を行って「おいしさ」も担保しているという。

 ウナギでは初のケースとなった「GI登録」もブランド化を後押しする。組合が定める手法で育てるなど条件を満たしたウナギだけが「浜名湖うなぎ」を名乗ることが可能で、名称が知的財産として保護されるとともに、消費者にPRする材料になる。

 浜名湖うなぎは、JR東海道線舞阪駅近くの浜名湖養魚漁業協同組合売店(浜松市中央区)などで購入できる。売店では21日、通常のウナギを約150グラム2300円(税込み)、でしこを約180グラム3000円(同)で販売していた。地元の女性(76)は東京の孫が遊びに来るたびに買い求めるといい、「身が厚くておいしいから、孫もやっぱり『ウナギは浜名湖だよね』と喜ぶ」と笑顔を見せる。

 外山昭広組合長(79)は「物価高で電気代やエサ代などの経費が上がって厳しいが、GI登録を糧に、多くの人においしいウナギを届けたい」と話している。

 ◆でしこ=「伝統を守り」「進化を続け」「幸福を届ける」の頭文字が名前の由来。「でしこ」と認められるには〈1〉浜名湖養魚漁業協同組合の組合員が養殖〈2〉稚魚から出荷まで浜名湖エリアで育てる〈3〉組合が認定する専用の餌を使用〈4〉出荷までに2回の品質検査合格――などが必要。