トルコ・アンカラで開催されたNATO首脳会議(2026年7月8日、写真:Marin Ludovic/Pool/ABACA/共同通信イメージズ)


 トランプ米政権が進める、NATO(北大西洋条約機構)への軍事的関与の縮小、いわゆる「NATO離れ」の動きが具体化している。

 ただ、米軍が担ってきた任務を欧州など他のNATO加盟国へ移管する過程では、戦力や役割の引き継ぎが間に合わず、一時的な“軍事的空白”が生じる恐れがある。こうした空白が、ウクライナ戦争の長期化に直面するロシアのプーチン大統領に、「NATOの抑止力が弱まった」という誤ったシグナルを送る危険性も指摘されている。

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装備数ではロシアを圧倒、“脱米NATO”の意外な実力

 トランプ政権は現在、欧州の安全保障について、通常戦力による防衛は欧州が主体となり、アメリカは欧州だけでは代替しにくい能力を中心に支援するという「NATO 3.0」を推進している。

 その一環として、アメリカはNATOの有事対応に割り当てる米軍の航空・海上戦力を見直す計画だ。6月12日付のニューヨーク・タイムズなどによれば、その内容は次の通りだ。

・戦闘機(F-15/F-16):150機→100機
・哨戒機:26機→15機
・空中給油機:8機→0機
・爆撃機隊:2個→1個
・空母:1隻をNATO任務から別方面へ再配備
・巡航ミサイル搭載攻撃型原子力潜水艦:1隻を別方面へ再配備

 かなり大規模な削減である。一方、NATO欧州連合軍最高司令官を務めるグリンケウィッチ米空軍大将は7月初め、ロイターに対し、

「欧州の同盟国は、米軍の縮小によってNATOの戦力計画に生じた空白の大部分を、数週間のうちに埋めた。現時点で同等の能力を代替できない一部の分野についても、同様の効果を得られる別の手段を検討している」

 と説明した。欧州側による穴埋めが進んでいることを強調した形だが、米軍が担ってきた役割を、兵員や装備の数量だけで代替できるのかという懸念は残る。

 実は、アメリカを除くNATO加盟国の主要戦力を、兵員・装備の数量で比較すると、ロシアの戦力を上回っている。

 英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の『ミリタリー・バランス(2026年版)』によれば、2025年時点で、アメリカを除くNATO加盟国の主要戦力は、正規兵力約217万人、予備役・準軍事組織約212万人、戦車約7050両、戦闘機・攻撃機約2460機に上る。

 対するロシアは、正規兵力約126万人、予備役・準軍事組織約207万人、戦車約3700両(このほか保管分約2100両)、戦闘機・攻撃機約1290機である。

“脱米NATO”は、すべての項目でロシアを上回っており、現役の戦車と戦闘機・攻撃機の数では、およそ2倍の開きがある。

 ちなみにアメリカは、正規兵力約134万人、予備役約81万人、戦車約2650両(このほか保管分約1500両)、戦闘機・攻撃機約2600機を保有しており、改めてその戦力の巨大さに驚かされる。

装備数だけでは測れない、米軍BCTが担う欧州防衛

 ロシアと対峙する欧州の主戦場は欧州平原であり、陸軍と空軍が戦力の主軸となる。

 前出の『ミリタリー・バランス』によれば、陸海空軍・海兵隊を合わせた在欧米軍は現在約8.6万人で、ドイツに約3.8万人、イタリアに約1.2万人、ポーランドに約1万人、イギリスに約1万人などが配置されている。

 米陸軍の地上戦闘部隊の中核を担うのが、「旅団戦闘団」(Brigade Combat Team=BCT、兵力4000〜4700人)である。

 BCTには、戦車を多数装備した重武装の「機甲旅団戦闘団」(ABCT)、空挺部隊などの精鋭歩兵を中心とし、ヘリコプターや輸送機による緊急展開を得意とする「歩兵旅団戦闘団」(IBCT)、両者の中間に位置し、ストライカー装輪装甲車で編成された「ストライカー旅団戦闘団」(SBCT)の3種類がある。

 一部では、アメリカのNATOへの関与縮小によって、欧州の兵力が不足する可能性も指摘されている。ウクライナ戦争のような長期戦に突入した場合、多数の死傷者が発生し、動員可能な兵力も次第に枯渇する。その現実を考えれば、こうした懸念には一定の根拠がある。

 前述した通り、数量だけを比較すれば欧州側が優位に立つ。だが、より深刻なのは、即応性と実戦能力に優れた米陸軍BCTが縮小された場合、その穴を欧州側が直ちに埋められるのかという問題である。

 BCTは「諸兵科連合部隊」と呼ばれる自己完結型の高い部隊である。

 重装備のABCTを例に取ると、「戦車部隊(M1戦車)」「機械化歩兵部隊(M2歩兵戦闘車に乗車)」「砲兵部隊(M109自走砲)」「工兵部隊」「偵察部隊」「防空部隊」などに加え、補給、整備、修理、医療といった相当規模の兵站・後方支援機能も自前で備えている。数週間にわたる作戦を遂行できる、自己完結型の“ミニ師団”ともいえる存在だ。

ABCTとして欧州防衛に従事する米陸軍第1騎兵師団所属の兵士とM-2歩兵戦闘車(アメリカ欧州軍サイトより)


 アメリカはこれまで、欧州に常駐部隊とローテーション部隊を合わせて4個のBCTを割り当ててきた。しかし、2026年5月1日、米国防総省はドイツに配置する米軍約5000人を今後6〜12カ月で削減すると発表した。そして、翌5月2日にトランプ氏は「5000人よりさらに多く減らすだろう」とさらなる削減の可能性にも言及した。

 イランへの攻撃にドイツが批判的だったことへの「報復」との見方が広がる中、これと連動する形で、5月16日にはヘグセス米国防長官が、予定していたABCT1個のポーランド派遣を急きょ中止すると発表した。

ドイツからポーランドに向かうアメリカ陸軍のストライカー装甲車の部隊(写真:米陸軍サイトより)


 その後、トランプ氏は5月22日、ポーランドへ「追加の5000人」を送ると表明。さらに7月7日には、ポーランド国防相が、中断されていたローテーションは再開され、数週間以内に部隊が補充されると説明したが、在欧米軍のBCTはすべてが常駐しているわけではない。

 ただ、トランプ氏が表明した「追加の5000人」と従来のBCT体制との関係や、今後の部隊配置の全体像は必ずしも明確ではない。少なくとも、ポーランドへのABCTの交代は再開される見通しとなったが、相次ぐ方針変更によって、在欧米軍の将来的な規模や配置を巡る不透明感はなお残っている。

ポーランド北部で実施されたNATO軍事訓練に参加する米軍部隊(2026年5月7日、写真:ゲッティ=共同通信社)


欧州が代替できない米軍の“頭脳”「C4ISR+AI」

 だが、BCT派遣を中止すると言い出したかと思いきや、すぐさま撤回というトランプ政権の一貫性を欠く発信に対し、欧州側、特にロシアの脅威を身近に感じているバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やポーランドが安全保障上の不安を強め、米軍の関与に不信感を抱いたとしても不思議ではない。

 仮にロシア軍が侵攻してきた際、国境地帯で即応し、迎撃することを期待される在欧米陸軍のBCTが4個から3個に減ったとすれば、欧州にとっても大きな痛手である。

 兵員や戦車、装甲車、大砲などの増強には、ある程度の時間や手間、コストがかかる。とはいえ、欧州にとってそれ自体は必ずしも解決困難な問題ではない。それよりも深刻なのは、これまでアメリカへの依存度が特に高かった任務を、欧州がどのように代替するかという問題である。

 中でも、他国の追随を許さないアメリカの“お家芸”ともいうべき「C4ISR+AI」「兵站」「長距離攻撃」「防空」の4分野は、深刻な課題となるだろう。これまで欧州のNATO加盟国やカナダは、こうした分野でアメリカに大きく依存してきた。

「C4ISR」とは、「指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察」を意味する。軍隊の五感や神経をつかさどる領域であり、現代戦ではこの能力の優劣が勝敗を大きく左右する。

 これに近年進化が著しいAIを融合し、軍全体の意思決定サイクルであるOODAループ、すなわち観察(Observe)、情勢判断・適応(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)を高速で回していく。

 具体的には、軍事衛星やレーダー基地、戦闘機、戦車、軍艦、偵察部隊など、あらゆる軍事アイテムが逐次収集・伝達する膨大な情報をAIなどを活用して迅速に解析する。

 そして、その結果を衛星や戦闘機、軍艦、戦車、兵士に即座にフィードバックしながら、数百、数千に上る攻撃目標に優先順位を付け、どの部隊がどの兵器を用いて攻撃するのが最適かを割り出す。兵站面でも、故障の予測、消耗部品の在庫管理、輸送機の配置などを支援する。

 さらに、サイバー防御や電子戦を一つのネットワーク上で統合的に運用することを目指している。電子戦には、効果的なジャミング、すなわち妨害電波の発信に加え、敵の妨害電波の回避や発信源の解析なども含まれる。

 さらに、アメリカが他国を圧倒しているのが、これまでの実戦経験を通じて蓄積した膨大なデータである。こうしたデータは、AIによる解析や意思決定支援の精度を高める重要な基盤となる。

 アメリカが圧倒的に先行するAIを活用した統合運用能力を利用することで、NATOはロシアとの戦闘をより効率的に進め、味方の死傷者を最小限に抑えることも可能になる。

戦車はあっても運べない、欧州防衛に残る兵站の弱点

 こうした兵站・輸送能力の重要性が、最も鮮明に表れるのがバルト三国の防衛である。

 仮にロシア軍が侵攻する場合、バルト三国とポーランドを陸路で結ぶ「スバウキ回廊」を真っ先に遮断し、バルト三国の孤立を狙う可能性が高い。スバウキ回廊は、バルト海に面するロシアの飛び地・カリーニングラードと、ロシアの同盟国ベラルーシに挟まれた隘路である。

スバウキ回廊(地図:共同通信社)


 こうした事態に備え、バルト三国の対ロシア国境付近には、複数のNATO加盟国軍で編成される多国籍の戦闘部隊FLF(前方陸上部隊、兵力1000〜1500人)が複数配置されている。

 加えて、FLFを支援するため、2025年5月からドイツ陸軍の第45機甲旅団(5000人規模)が常駐を開始した。第2次世界大戦後、ドイツが外国に旅団規模の戦闘部隊を恒久駐留させるのは初めてである。

 ロシア軍が侵攻してきた場合、まずこれらの部隊が防戦し、時間を稼ぐ。その間に後方から強力な増援部隊を次々と投入し、ロシア軍を撃退する。これが、NATOの描く基本的な防衛シナリオである。

 だが、NATOの戦車戦力の主軸を担うアメリカ製M1戦車やドイツ製レオパルト2は、重量60トンを超える“スーパーヘビー級”である。これを空輸できる大型戦略輸送機を、アメリカは空軍のC-5(最大積載重量約127トン)36機、C-17(同約77トン)146機の計182機に加え、州兵空軍のC-17 50機、予備役のC-5 16機、C-17 26機の総計274機も保有している(『ミリタリー・バランス(2026年版)』、以下も同資料より)。

ポーランドに展開する米陸軍のM1A2戦車(写真:米陸軍サイトより)


 C-5なら60トン級戦車を2両、C-17なら1両を搭載し、空路でバルト三国へピストン輸送できる。しかしアメリカを除くNATO加盟国で大型戦略輸送機を保有するのは、イギリスのC-17が8機、カナダの同型機が5機、それとは別に、複数国が共同運用するNATOの戦略空輸能力(SAC)が同型機を3機の計16機に過ぎない。アメリカの19分の1にも満たない規模である。

重量60トン超のM1A2戦車が搭載の順番を待つ米空軍のC-5戦略輸送機(写真:米空軍サイトより)


C-17大型戦略輸送機で空輸される米陸軍のストライカー装輪装甲車(写真:米陸軍サイトより)


 同様に、味方の戦闘機が戦場上空の制空権、すなわち航空優勢を確保するためにも、大型空中給油機は欠かせない。空中給油機は、戦闘機や攻撃機、輸送機などの航続距離や滞空時間を大幅に延ばす。現代戦における必須の装備である。

 アメリカは空軍がKC-135、KC-46を計226機保有する以外に、州兵空軍171機、予備役71機(いずれもKC-135とKC-46)が控え、総計468機という陣容を誇るが、“脱米NATO”では、イギリス、フランス、イタリア、カナダ、スペイン、トルコ、NATO共同所有分が、A310、A330 MRTT、KC-135を計44機保有するにとどまる。アメリカの10分の1以下の規模である。

 大型戦略輸送機と空中給油機は、兵站能力を象徴する存在である。その戦力差は、部隊を遠方へ迅速かつ継続的に展開する能力の差に直結する。

KC-135空中給油機から燃料補給を受ける米空軍のB-52戦略爆撃機と、護衛するフィンランド空軍のFA-18戦闘機(写真:米国防総省サイトより)


 また、上空から遠方の敵機を探知し、味方戦闘機を指揮したり、地上の対空ミサイル部隊や艦艇に情報伝達したりする“空飛ぶレーダー”の空中早期警戒管制機(AEW&C)も、現代戦には欠かせない。航空機の背中に大型の円盤状レーダーを搭載した米製E-2やE-3が代表例である。

 アメリカは同機種を計97機保有しているのに対し、“脱米NATO”は、イギリス、フランス、イタリア、ポーランド、トルコ、スウェーデンの保有機と、NATOが共同運用する機体を合わせても34機に過ぎない。

 長距離攻撃能力を象徴する戦略爆撃機についても、アメリカはB-52、B-1、B-2を計138機(予備役含む)保有しているが、他のNATO加盟国で戦略爆撃機を装備する国はない。

護衛役の英空軍のタイフーン戦闘機と編隊を組む米空軍のB-1戦略爆撃機(写真:米空軍サイトより)


 防空分野でも、スタンダードSM-3やパトリオットPAC-3など、特に弾道ミサイル防衛の領域では、米製兵器が圧倒的な存在感を示している。

 このほか、2025年10月に米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)が公表した報告書『How Europe Can Defend Itself with Less America(アメリカへの依存を減らしながら、欧州はいかに自らを防衛できるか)』は、C4ISRに欠かせない軍事衛星や航空ISR能力についても、アメリカと欧州の間には大きな格差があると指摘している。

 また、C4ISRに従事する無人機の2025年の保有数は、アメリカの1227機に対し、欧州・カナダ側(トルコ除く)は445機と大きな差がある。

 こうした軍事能力のすべてを、アメリカを除くNATO加盟国が代替しようとすれば、莫大なコストに加え、長い年月を要する。

欧州防衛の最大のリスク、米軍縮小が生む「移行ギャップ」

 欧州がアメリカの担ってきた軍事的役割を肩代わりするにしても、その移行は一朝一夕には進まない。軍事的な空白、すなわち「移行ギャップ」を生じさせないためには、米側から欧州側へ、時間をかけて段階的に任務や能力を移していく必要がある。

 だが、懸念されるのは、予測の難しいトランプ氏の判断によって、こうした段階的な移行が突然中断される可能性だ。欧州側の受け入れ態勢が整わないうちに、アメリカがNATOへの軍事的支援を大幅に縮小すれば、短期間では埋め切れない空白が生じかねない。

 実際、2024年の米大統領選挙期間中、トランプ氏は「国防費の負担が不十分な同盟国は守らない」「むしろロシアが好き勝手に振る舞うよう促す」と発言している。

 ロイターによれば、2026年3月27日にマイアミで開かれた投資フォーラムで、トランプ氏は「われわれは常に彼らのためにいるつもりだった。しかし、彼らの行動を踏まえれば、もうそうする必要はないのではないか」と断言し、物議を醸した。

 こうした発言を踏まえれば、トランプ氏が、同盟国との対立や不満を理由にNATOへの関与を突如縮小し、欧州がなおアメリカに大きく依存する「C4ISR+AI」や「兵站」の分野で、支援や協力を制限する可能性も否定できない。

 実際、2025年3月には、ウクライナ戦争を巡る和平交渉でゼレンスキー大統領との対立を深めたトランプ氏が、ウクライナへの軍事支援を一時停止する強硬措置に踏み切った。安全保障上の支援が、政治的な判断によって突如見直され得ることを示した“前例”といえる。

 同様の事態がNATOで起きれば、アメリカが担う「C4ISR+AI」や「兵站」の支援が途絶え、欧州の防衛力が一時的に大きく低下する恐れがある。プーチン氏がその状況を「千載一遇の好機」と受け止め、バルト三国への軍事的圧力を強める、あるいは侵攻に踏み切る可能性も排除できない。

 こうした軍事的な空白がロシアに誤ったシグナルを送り、欧州の安全保障を支える軍事バランスを崩しかねない。アメリカが担ってきた防衛任務を欧州へ移していく過程で生じる、この「移行ギャップ」こそが最大のリスクなのである。

ポーランドでロシア侵攻軍の迎撃を想定した演習を行う米陸軍第2騎兵連隊の兵士とストライカー装輪装甲車(写真:米陸軍サイトより)


NATO首脳会議で結束、それでも消えない米欧分断の火種

 7月7日、8日の両日、トルコ・アンカラで開催されたNATO首脳会議では、トランプ氏がNATOへの関与縮小や離脱を示唆するのではないかとの懸念もあった。

 しかし、トランプ氏は一転してNATOの結束を高く評価した。首脳宣言でも、加盟国1カ国への攻撃を全加盟国への攻撃とみなす北大西洋条約第5条について、強固な関与が改めて確認された。ひとまずアメリカをNATOにつなぎ止めることには成功したといえるだろう。

 ただし、アンカラで確認された結束が、あらゆる国際問題における米欧の足並みの一致を意味するわけではない。

 再び緊張が高まるホルムズ海峡を巡っては、イラン側が海峡の閉鎖継続を主張する一方、アメリカはイランへの軍事攻撃を再開した。米国とイランの停戦は大きく揺らぎ、海峡の航行を巡る対立も再び激しさを増している。

2026年7月8日、トルコ・アンカラで開かれたNATO首脳会議終了後に記者会見するトランプ米大統領(写真:共同通信社)


 こうした中、トランプ氏は7月13日、アメリカがホルムズ海峡の安全を確保する対価として、同海峡を通航する船舶の積み荷の価値に対し、20%相当の費用を徴収する構想を打ち出した。

 ところが翌14日、トランプ氏は早くも同構想を撤回した。中東各国の首脳と「非常に生産的な協議」を行ったとして、通航料の代わりに湾岸諸国との貿易・投資協定を進める考えを表明。「ホルムズ海峡では誰も通航料を徴収できるようにすべきではない」とも語った。

 通航料を巡る懸念はいったん後退したものの、アメリカによるイラン港湾の封鎖や、イランとの軍事的対立は続いている。また、通航料構想がわずか1日で撤回されたことは、トランプ政権の外交・安全保障政策が短期間で大きく変わり得ることを改めて浮き彫りにした。

 今後、情勢がさらに悪化し、アメリカがNATO加盟国に軍事的な協力を求めれば、支援の範囲や関与のあり方を巡って、米欧間の温度差が再び表面化する可能性がある。

 その対立が、トランプ氏によるNATOへの関与縮小や在欧米軍の追加削減を促せば、欧州がアメリカの軍事的役割を引き継ぐ過程で生じる「移行ギャップ」は、さらに拡大しかねない。

 アンカラ首脳会議で示された結束だけをもって、NATOを巡る不安が解消されたとみるのは早計である。

筆者:深川 孝行