【専門医が教える】「のぞかれた」「触られた」「動画をとられた」…発達障害のある子を「性被害」から守るために打つべき「最初の布石」
大人にとってすら恐ろしい「性被害」。万が一、子どもが受けてしまったら、その影響は計り知れない。特性のかたよりから、ターゲットになりやすい発達障害の子を、この恐るべき犯罪から守るために、親は何ができるのか。発達障害の臨床に長年携わる医師2人が総力を挙げてつくった著書『発達障害を抱える子どもの「できる!」を増やす作戦事典』から、まずふまえたい“基本”をお届けする。
各種資料からわかる現状
街中やネット上には、性に関する情報が氾濫しています。しかし性犯罪の防止のためや性被害を避けるための具体的な情報が、必要な人に十分に行きわたっているとは、まだ言いがたいと思います。
残念ながら、子どもも性暴力の被害者となり得るのがわが国の社会の実情です。本章では大切な子どもの「心」と「体」を守るためにできることを提案していきますが、それに先立ち、まずは子どもの性被害の現状とにかかる基礎知識をまとめておきます。
この本で対象としているのは幼児、小学生です。その年代の子どもに対する性的な行為は、すべて「性暴力」と判断して差し支えないでしょう。性暴力は、個人の人格を踏みにじる重大な人権侵害であり犯罪です。
現在は、すべての都道府県に「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」が設置されています。内閣府の調査によると、2022年度に寄せられた相談の件数は、前年度比7.4%増の約6万3000件でした。子どもや若者が被害者になるケースが増えていることも報告されています。
この調査では16歳から24歳までを対象にアンケートやヒアリングが行われましたが、対象者の4割近くが、最初に「身体接触を伴う性暴力被害」に遭った年齢を「中学生以下」と答えたそうです。
また、加害者のうち全体の約6割は、被害者の顔見知りか、それ以上に近しい関係にある人物だったとのことです(内閣府男女共同参画局「こども・若者の性被害に関する状況等について(令和5年6月13日)」)。
加害者は成人男性とは限りません。中学生・高校生が年下の子どもに、あるいは小学生が、同じ小学生や幼児に対し加害に及ぶ場合もあることはよく知られています。女児だけでなく、男児も被害にあう可能性があることを忘れてはいけません。具体的には、次のような被害が起こることがあるようです。
• 着替え、トイレ、入浴をのぞかれた
• 抱きつかれた、キスされた
• 服を脱がされた
• 体を触られた
• 下着姿や裸の写真・動画を撮られた
• 写真を送るように要求された
子どもに対する性暴力は、季節に関係なく起こり得るものです。
最初から身体接触をともなう被害もありますが、甘言で手なずけてから加害に及ぶ「グルーミング」のほか、インターネット(SNSやチャットアプリなど)を通じて接触してきた大人が加害者となることもあり、手口が巧妙化しています。
幼児の場合は、されたことをすぐには性被害だと理解できず、そのまま成長し、後に性被害を受けたと分かり、深く傷つく子が少なくありません。
被害時の年齢が低いほど、癒やしがたい心の傷(トラウマ)が長期にわたって残り、健全な発達や社会生活を妨げます。ですから性被害に遭うことは、何としても避けたいところです。
性別とマナーの基礎的理解から
社会生活を営むためには、まず性別の理解とそれにともなうマナーを知っておかなければなりません。なるべく早く、できれば3 歳になったら少しずつ、子どもに次のことを教えるようにしてください。
• 自分は「男の子」か「女の子」か
• 家族の誰が「男性」で誰が「女性」か
• お母さんがトイレを使うとき、男の子は中へついていかない
• お父さんがトイレを使うとき、女の子は中へついていかない
• 水着で隠れる部分は、他人に見せたり触れさせたりしない
近年では、性別を問わず左下のイラストの色をつけた部分をプライベートゾーンとする考え方もあります。その部分まできちんと隠れる水着を着用するのもよいと思います。
以上はごく初歩的な知識ですが、性別を理解しておくことは性被害の回避につながる大切なステップでもあります。
なお、幼児や小学1 年生など、まだ幼い子どもにお手洗いのマナーを教える場合、はじめのうちは「もうお兄ちゃん(お姉ちゃん)だから、お外で待てるよね」など、わかりやすい表現でやさしく誘導してあげてください。
また、たとえば幼児が体調を崩した場合など、急を要するときは異性の親が一緒にトイレに入って世話をしても構わないと思います。臨機応変に対応しましょう。
【後編を読む】6歳以降はリスクが「13倍」⁉ 就学後に激増する性被害から発達障害がある子を守るために親ができること

