2000年前の噴火で炭化した巻物、AI駆使し「展開」

(CNN)約2000年前の火山の噴火で焼け焦げ、広げようとすると崩れてしまう状態になった古代の巻物数百巻のうちの1巻について、研究チームがこのほど人工知能(AI)の助けを借りて仮想的にこれを展開し、一部を解読することに成功した。
巻物を開かずに解読を目指すコンペ「ベスビオ火山チャレンジ」によると、「PHerc. 1667」と名付けられた当該の巻物は、古代ローマの都市ヘルクラネウムで発見された数百点の巻物の一つ。ヘルクラネウムは西暦79年にベスビオ山が噴火した際、火山の噴出物に埋もれた。
これらの巻物は、かつてユリウス・カエサルの義父が所有していたとされる別荘にあったもので、18世紀にイタリアの農民が発見した。そのコレクションは古典古代から現存する唯一の大規模な図書館として知られている。
巻物は激しい燃焼により炭化しており、極めて壊れやすい状態にある。これまで何年にもわたり、研究者たちはさまざまな方法で巻物を開こうとしてきたが、その過程で損傷・破壊されることが少なくなかった。
「ベスビオ火山チャレンジ」は、米ケンタッキー大学のコンピューター科学教授ブレント・シールズ氏と、起業家のナット・フリードマン氏およびダニエル・グロス氏が2023年に立ち上げた。この取り組みは世界中の研究者に対して、巻物の内容の解明に挑むよう促すことを目的とする。その際巻物を仮想的に展開し、これを解読する作業が必要になる。
仮想的な展開は、それぞれの巻物をCTスキャンすることから始まる。
研究者たちは、スキャン画像内の湾曲した層に沿って解析を進めた後、巻物を仮想的に平らに展開し、高度なAIを用いて内容を調査する。AIはページ上のインクを識別するよう訓練されている。
この取り組みには近年、多くの進展がみられたが、25日にイタリア・ナポリで開催された会議で発表された今回の成果について、関係者は「歴史的なブレークスルー」だと語っている。
具体的には今回初めて、1本の巻物を完全に展開することに成功。長さ1.5メートル近い領域に20列にわたって記された本文の存在を明らかにした。
フェデリコ2世ナポリ大学のパピルス古文書学助教を務めるフェデリカ・ニコラルディ氏は、巻物の文字を解読するための機械学習モデルの開発と本文の解釈を行うパピルス学者チームを率いてきた。
ニコラルディ氏がプレスリリースで明らかにしたところによると、これまでは一部の文字しか判読できていなかった巻物を仮想的に展開することで、複数の列にまたがる一貫した記述を追えるようになったという。
「巻物の筆跡や内部の言及から、この史料は紀元前2世紀、あるいは紀元前3世紀後半のものと考えられる。つまり、このコレクションの中でも最も古い巻物の一つということになる」(ニコラルディ氏)
ニコラルディ氏によればPHerc. 1667は、かつて完全な巻物だったものの一部。当該の巻物の中で現存する部分はPHerc. 1667のみだという。高さは約8センチで、一般的な巻物の半分にも満たず、直径は約2センチとなっている。記録によると、発見当時はほぼ完全な状態だったが、その後何年にもわたって展開を試みるうちに損傷し、小さくなっていったという。
研究者らによると、当該の文章が語っているのは倫理や芸術、人間の行動に関する哲学的な議論であり、おそらくストア派の思想がそこに反映されているとみられる。
具体的にはストア派の概念である「ホルメー(horme)」、すなわち「衝動」についての議論が含まれている。その中で氏名不詳の著者は、行動を適切に制御できなければ、有害な情念に陥ったり、本来の目標から逸脱したりする可能性があると警告しているようだ。
新たに解読された文章には、次の一節が含まれている。
「我々は今後何かを探究していくが、もし何らかの形で我々自身および我々固有の本性から離れてしまうのであれば、その対象を理解することはできないだろう」
研究チームはまた別の巻物「PHerc. 139」についても、焼け焦げた層の内部で新たな発見があったと発表した。
そこでは「ピロデモス『神々について』第8巻」という文字を読み取ることに成功。これにより、『神々について』が哲学者ピロデモスによる少なくとも全8巻のシリーズであったことが初めて明らかになった。これまで存在が知られていたのはシリーズの第1巻だけだった。
これらの新発見は、「ベスビオ火山チャレンジ」がもたらした最新の成果となる。
昨年5月には、「PHerc. 172」と名付けられた巻物が、やはりピロデモスの著した「悪徳について」という書物であることが解明されていた。
