脳科学者の茂木健一郎が、YouTubeチャンネル「茂木健一郎の脳の教養チャンネル」にて、「エージェントAIの環境に対する適応としての『ハートビート』」と題した動画を公開した。動画では、AIエージェント技術において注目を集めている「ハートビート」の概念と、システムにおける「ゆらぎ」がもたらす適応性の重要性について解説している。

茂木はまず、心臓の脈動が持つ性質について触れ、「若くて健康な心臓ほどゆらぎがある」と説明した。病気や加齢によって心臓が衰えると、このゆらぎは失われていくという。さらに、人間の日常的な行動も一定のリズムではなく自律的に揺らいでおり、AI同士の規則的な通信の中に人間が介入するとゆらぎが生じることから、これを「人間のフィンガープリント」と表現した。

続いて、この「ハートビート」のメタファーを人工知能に応用する意義について言及。人間の仕事のサイクルや突然のひらめきは、無意識の中で作られるゆらぎが表に出たものであり、クリエイティビティやロバストネス(頑健性)に関係していると指摘する。物理学の「揺動散逸定理」を例に挙げ、システムが普段から揺らいでいることで、外部からの刺激に対して素早く適応できると解説。AIエージェントが自動化を行う際にも、単に一定のリズムで処理するのではなく、「揺らいでいるからこそロバストに、いろんな状況にフレキシブルに対応できる」と語った。

最後に、AIを人間のようにロバストな状態に近づけるためには、ハートビートの設計が大きな問題になると提起した。内部の自律的なダイナミクスから生じるボトムアップのリズムと、環境を認識してフィードバックされるトップダウンのプロセスが有機的に絡み合う「認知的ハートビート」を人工的に作り出せるかどうかが、今後のAIと人間の関係を考える上で重要になると結論付けた。

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